シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「ニッポン」不思議な国の成立ち

(2) 菊理媛命は何を語ったのか?

黄泉比良坂

祖母から「女は三界に家無し。幼きは親に従い。嫁いでは夫に従い。老いては子に従う」と聞かされた事がある。
どうしてどうして、実際には嫁ぎ先で産んだ子が一家の主となり、老いた自分は、その後ろで大御所として家を取仕切っていたのです。
さすがに子供は、母親が「NO!」と言えば逆らえない。日本では世界のどの国よりも、姑の地位は高かったのである。

さて、日本神話に菊理媛命(通称=キクリ姫。又はククリ姫)なる姫神が登場する。現在は白山神社の祭神となっている。
国産み神話によると、伊邪那岐・伊邪那美の夫婦神は日本の国土を作り、そこに住まうたくさんの神々(子供)達を儲ける。
だが伊邪那美は、火の神・カグツチを産んだ為、ホト(性器)が焼けて死んでしまい、伊邪那岐はただ一人取り残されてしまう。
そこで伊邪那岐は、はるばる黄泉の国まで伊邪那美に逢いに行くのだが、身体が腐って蛆が湧いた妻の姿を見て逃げ出してしまう。
穢れた姿を見られて怒った伊邪那美は、黄泉と現世との境目、黄泉比良坂まで伊邪那岐を追いかけて来る。
そこに、突如現れた菊理媛命が、二人の間に入って何やら話をし、伊邪那岐は大層納得して現世に帰って行ったと言う。

及其与妹相闘於泉平坂也、伊奘諾尊曰、始為族悲、及思哀者、是吾之怯矣。
時泉守道者白云、有言矣。曰、吾与汝已生国矣。奈何更求生乎。吾則当留此国、不可共去。
是時、菊理媛神亦有白事。伊奘諾尊聞而善之。乃散去矣。

ここで不思議に思うのは、突如現れた菊理媛命なる姫神が、日本神話の他の箇所には一切出て来ていないと言う事である。
出自も正体も不明?何を語ったのか?すら一切明かされていない謎の姫神である。いったい彼女は何者だったのだろうか?
考察を重ねた筆者は、菊理媛命こそが、縄文時代において祭祀(政事)の中心にいた姫巫女嫗では無いか…?と思うのだ。
そして、神話にある黄泉比良坂の伝承通りなら、姫巫女嫗は部族(部族間)の調停役を担っていたと考えられる。
そこで、黄泉比良坂で菊理媛命が行なったであろう調停を、今の人にも解る様に解説してみようと思う。

伊邪那美「よくも私の醜いすっぴんを見たな~!殺してやる~!」
伊邪那岐「ま、待て!伊邪那美。俺が悪かった(汗)」
菊理媛命「何事だい。お前さん達は…現世と黄泉に別れたからって、こんな所で夫婦喧嘩なんかするんじゃないよ」
伊邪那美「だって~…この人が私の穢れた姿を覗き見するんだもん」
伊邪那岐「いや、俺は別にわざと覗き見したんじゃないよ(汗)」
菊理媛命「まぁ、待ちなよ。幾らあの世とこの世に別れた旦那だからって、情を交わした男を苛めるんじゃないよ。伊邪那美」
伊邪那美「だって~…この人があんまりひどいんだもん」
菊理媛命「あんたもあんただ。死んだ女房恋しさにのこのこ黄泉まで未練がましくやって来て…後は私に任せてさっさと現世にお帰り」
伊邪那岐「はい、ありがとうございます。お陰で助かりました。お婆さん(ホッ)」
菊理媛命「さぁ、伊邪那美!私と一緒に黄泉へ帰るんだ」

そうして菊理媛神は、娘のお尻をペンペンお仕置きして、括って(縛って)黄泉に連れ帰ったのでありました。
国産みの母と言えども、大姑・姫巫女嫗には勝てません。菊理媛(聞くり姫)神はまたククリ(括り)姫神でもありました。
さて、この話から縄文の姫巫女嫗が、部族や部族間の利害や諍い事をまとめる重要な調停者であった事が伺えます。

余談になりますが、かの英雄・ジンギスカンが、弟のジョチ・カサルと口喧嘩の末、剣を抜いて殺生沙汰になったそうです。
そこへやって来た母のホエルンは、いきなりもろ肌を脱いで、乳房を露にし「お前達はこの乳を飲んで育った」と言ったそうです。
すっかり歳老いて、皺がれた母の乳房を目の当たりにした二人は、俯いたまま泣き出してしまい、喧嘩は丸く収まりました。
世界を征服した英雄さえ黙らせる、老いた母の鶴の一声!…いやぁ~、縄文の姫巫女嫗の貫禄がいかに凄かったか偲ばれます。

では、実際の姫巫女の調停はどんなものだったのか?それは、物事をうやむやにして、丸く収める事でありました。
大抵の諍い事は、些細なメンツや欲得から発生します。彼女はそれを知っていて、元の鞘に戻して収める様に取り計らったのです。
「喧嘩してる間に獲物の鹿が逃げてしまうよ」「争い事ばかりやってると、種蒔きの季節が過ぎるじゃないか」ってな具合です。
食う事が切実だった縄文時代、無益な争い事をするよりも、働く事に専念した方が合理的…見事な調停方法だと思います。
さらに、縄文時代の遺跡から、子供を埋葬した瓶棺が数多く出土する事から、産まれた子供の死亡率の高さが伺えます。
女である姫巫女も、また多くの我が子を亡くした母でありました。血族から出来るだけ死人を出さない事を心掛けたのです。
いかにも女性らしい配慮だと言えます。その為か?縄文時代の遺跡には、余り争い合った形跡が無いと言われています。
きっと、姫神の調停のお陰で、長い間平和な時代が続いたのでしょう。
西洋の歴史においては「旧約聖書」に代表される如く、女は男に従う存在とされ、力による男性中心の長老制が一般的でした。
従って、一度殺し合いが始まれば、子々孫々まで際限なく続いたであろう事は、世界の民族紛争を見れば一目瞭然です。
ちなみに英語の男(man)は、元来、戦士が由来だそうですが、日本の男は、文字通り田の力…つまり労働力を表しています。
「和をもって尊しと為す」 日本人の精神性の起源がここから始まったであろう事が伺い知れると言うものです。
しかし、何事もうやむやにすると言う姫巫女のやり方は、後の日本人の精神に大きな弊害をも齎しました。
争いを避ける余り自己主張をしない。はっきりYESとも、NOと言わずに曖昧な言い方をする。
国会で良く聞く答弁「鋭意努力いたします」 いや、出来るのか?出来んのか?はっきりしてくれないと国民は困る(笑)
これもまた、外国人には理解し難い日本人の謎であります。まぁ、日本人の曖昧さは両刃の刃でもありますね。

ともあれ、縄文時代の女性は機を織る事を生業にしていましたから、普段は姫巫女も機を織り、服や組紐などを作ったと思います。
彼女はその組紐で、結婚する男女の両手を括って生涯連れ添える様に祈り、出産の際は産婆として立会い、赤ん坊の魂が抜けない様に、
子供の身体を組紐で括り、葬式の際は、死者の身体を組紐で括って、魂が現世に迷い出さない様に呪詛を掛けたと思います。
姫巫女は、諍い合う双方の言い分を聞き、丸く収める「キクリ姫」。冠婚葬祭を取り仕切る「ククリ姫」…であったのです。
こうして見ると、何だかとても古代の出来事とは思えません。今日の日本人社会をそのまま見ているみたいですね(笑)
次回は、その姫巫女が歴史の表舞台に姿を現し、国王となった「邪馬台国の成立と没落」を書いてみたいと思います。

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~ Comment ~


日本男児にもいろいろ

確かに日本男児は自己主張が弱く、集まるとまごまごしてる様子をよく見ます。
男の友達といると自分からあれをやりたいとは言わないのでほとんど私が決めることに。

一方で自己主張……っていうんですかね。
夜の都会でたむろしたり喧嘩したりするいわゆるヤンキーもいたりしますが
あの方達は語源の通り欧米人寄りなのかな、その話でいうと。
ただ、その主張という名の非行で人に迷惑をかけないでもらいたいものです。
#428[2014/07/07 21:53]  西條すみれ  URL 

Re: s様 COありがとうございます^^

> 確かに日本男児は自己主張が弱く、集まるとまごまごしてる様子をよく見ます。
> 一方で自己主張……っていうんですかね。
> 夜の都会でたむろしたり喧嘩したりするいわゆるヤンキーもいたりしますが
> あの方達は語源の通り欧米人寄りなのかな、その話でいうと。

いや、堂々と自己主張出来ないから、たむろしてぼやいてるだけでしょう(笑)
群れるのは、そもそも草食動物で、肉食獣は群れたりはしません。
欧米人は肉食獣に近く、独立心が強くて、人と違う道を行くのが好きです。
それゆけフロンティア魂!…なのが本物の米国ヤンキー。頑張れ田中将大!(笑)
#430[2014/07/08 00:57]  sado jo  URL  [Edit]

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#431[2014/07/08 02:03]     

Re: y様 COありがとうございます^^

魏の使節が邪馬台国に来て、一番驚いたのは、
「男と女が同じテーブルで飲み食いしている」と言う事実でした。
中国ではあり得ない習慣…古代日本では男女は平等だったのです^^

どんな偉い人でも、世話になった母親と奥さんには頭が上がりません(笑)
#432[2014/07/08 13:56]  sado jo  URL  [Edit]

何かで読んだ気がしますが(汗)
読んだものの名前ぐらい覚えてとけ!って叱責されそうですが(汗)

男と女は根本的に違う生き物なので、支配は女性に、統治は男性にやらせるのが、最も合理的だとか

昔は、支配も統治も男がやってしまっていたので、それが男尊女卑に繋がったんだと思いますです
#433[2014/07/08 21:34]  blackout  URL 

Re: COありがとうございます^^

>男と女は根本的に違う生き物なので、支配は女性に、統治は男性にやらせるのが、最も合理的だとか
>昔は、支配も統治も男がやってしまっていたので、それが男尊女卑に繋がったんだと思いますです

確かに一理ある説ですね。
女は種族が繁栄する為の方向性を知っている。そして男は目の前にある生存方法を知っている。
男が率先行動し、女は、男が行き過ぎない様に監督するのが、Bestな社会であると思います。
知らずとも、古代人はそんな社会を作り上げていたのかも知れませんね^^
#434[2014/07/08 22:10]  sado jo  URL  [Edit]

神話には疎いけど納得した(´・ω・`)ガッテン
#435[2014/07/09 00:16]  つきほ  URL  [Edit]

Re: ははは…

> 神話には疎いけど納得した(´・ω・`)ガッテン

勉強してきた歴史を解り易く、かつ推理(考察?)も交えて書いてますからね^^
こんな庶民のでたらめな歴史文は、絶対に学会じゃ認められんだろうなぁ~><
でも、案外的を射てる所もあるでしょ(笑)
#436[2014/07/09 01:55]  sado jo  URL  [Edit]

母は強しですね~(´∀`)
やっぱりお母さんに怒られたら反省してしまいます(笑)
それにしても、ジンギスカンにそんなエピソードがあったとは・・・。
誰でもお母さんには弱いという事でしょうか(笑)
#438[2014/07/09 21:18]  ツバサ  URL 

Re: COありがとうございます^^

>母は強しですね~(´∀`)
>やっぱりお母さんに怒られたら反省してしまいます(笑)
>それにしても、ジンギスカンにそんなエピソードがあったとは・・・。
>誰でもお母さんには弱いという事でしょうか(笑)

少女で居る内は、可愛くて頼りなさそうに見える女子も、
母になれば強いですよ~…まるで別人!男子は勝てません(笑)
#441[2014/07/09 22:16]  sado jo  URL  [Edit]

今も昔も…

今も昔も根本は変わらない…そんな印象を受けました。
中には、嫁姑戦争で嫁が勝つところもありますが
死したら逆転する可能性の方が高い気がしますw
それにしても…そうですね。無垢な瞳の赤ちゃん(女児)が
いつかは平伏すくらい強い存在になったりするんですよね(;^^A
#454[2014/07/11 21:23]  ヘタリーナ風鈴  URL 

Re: h様 COありがとうございます^^

うちの祖母は結構迷言を残した人でした。

幼い時は少女…
成長すると女…
嫁いだら妻…
子供を産んだら母…
年老いたら姑…
女は一生の間に、何回でも脱皮する
でもね…男はいつまで経ってもただの男。


この歳になって、その意味がつくづく実感できます。
男は、生まれてから死ぬまで、女の世話になりながら生きる動物。
私も介護の女性や、看護師さんの世話になりながら死ぬんだろうな~
女を大事にしろっ!…っていつも言うのは、その事です。
因果は必ず巡る…女を粗末にした男は、老いてその報いを受けるからです^^
#456[2014/07/11 22:45]  sado jo  URL  [Edit]














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