シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「ニッポン」不思議な国の成立ち

(6)海を渡った日本の姫神

光子

リヒャルト・ニコラウス・栄次郎・クーデンホーフ=カレルギー伯爵(1894~1972)
ヨーロッパ連合(EU)の産みの親と言われる彼の母親は、その名が示す様に日本人であった。
そしてその母は、世界で尤も名前の知られる日本女性である「クーデンホーフ=カレルギー・光子伯爵夫人」である。
世界では偉大な女性として知られる彼女を、日本人は「あぁ、香水の名前になった人」(笑)位の認識しか無いのは残念である。

夫のハインリヒ・クーデンホーフ=カレルギー伯爵は、開国間もない日本に赴任したオーストリア・ハンガリー帝国の大使であった。
今は中立国であるオーストリアは、当時は、東ヨーロッパ・ハプスブルグ家の大帝国であり、ウィーンは世界一華やかな都と言われた。
二人の出会いは、伯爵が東京見物の際に落馬して、それを光子が介抱したのが切っ掛けだと言われるが、真偽の程は定かでは無い。
ともかく、彼女が現地雇いのメイドとして、オーストリア・ハンガリー大使館に女中奉公していたのは確かである。
大使館には本国から来たメイドも居ただろう。しかし、彼女のひと際献身的な働きぶりは、伯爵の目に留まり彼の心を動かした。
だが、こと結婚となると容易な事では無かった。当時の国際結婚は、体のいい現地妻に過ぎず、外人娼婦扱いだったからだ。
伯爵は何度も光子の実家に足を運び、父親は、ようやく光子を勘当扱いにする事で、結婚の承諾を得た。
光子を真剣に愛していた伯爵にとって、前途多難の船出だった。リヒャルトは、父伯爵の赴任先の東京で第二子として産まれた。
大使の任期を終えて離日する際に、伯爵と共に皇居に挨拶に行った光子に、時の皇后はこう言葉を掛けて激励した。
「異国にいても日本女性の誇りを忘れないで下さい」 そして、彼女は生涯それを守り通した。

海を渡ってからも散々だった。妙ちくりんな東洋の女として、名門貴族の一族からは白い目で見られ、馬鹿にされた。
その為、伯爵は「光子を馬鹿にする者には決闘を申し込む」とさえ宣言した程だった。
光子は、風習の違う異国での生活に苦しみながらも、語学や作法などを猛勉強し、やがて伯爵と共に社交界に顔を出す様になる。
そこでも背が低く、地味で目立たない服装の光子は、派手に着飾った貴婦人達の中で、ひと際奇異な存在に映った。
当時のヨーロッパ社交界では「自分はイイ女を連れている」とばかり同伴した女を着飾らせて、目立たせるのが男達の慣習だった。
ところが、光子はまったく逆だった。自分は後ろに控え、常に夫を立て、夫の世話をし、夫が立ち回りやすいように気を配った。
最初は「ちんちくりんな女だ。伯爵はあんな女の何処がいいんだろう?」と思って光子を見ていた男達の目が、次第に変り始めた。
「あんなに懸命に男に尽くしてくれる女が欲しい~」(笑)
さて、女子のみなさん。洋の東西を問わず、男と言うヤツが、いかに自分に都合のいい動物であるかお解りいただけただろうか?
美人が良い。スタイルのいい女が良い。と言いながら、大人しく、慎ましく、献身的で、扱いやすい女が好きらしいのだ(大笑)
しかし、一生連れ添う妻となれば、顔やスタイルより、やはり気立ての良い、良く尽くしてくれる女を選びたい…と筆者も思う(笑)
男にとって都合のいい話であるが、光子のお陰で「日本女性と結婚したら幸せになれる」と言う伝説が生まれたのは本当らしい。

何処かのコメントのお返事にも書かせて頂いたが、筆者の祖母は、結構迷言を残した人であった。その祖母曰く…

幼い時は少女。
成長すると女。
嫁いだなら妻。
子供を産んだら母。
年老いたら姑。
女は一生の間に、何回も脱皮する。
でもね…男はいつまで経ってもただの男。


だ、そうです…この歳になって、つくづく祖母の遺言を噛みしめてます。

彼女は、伯爵との間に七人の子を儲けた。そして、家庭では良妻賢母として家事をこなし、自分が産んだ子供達を熱心に教育した。
日本人の異常なまでの教育への拘りは、いったい何だろう?と思う時がある。外国では、子供を幼い時から働かせるのが普通である。
だが日本人は、自分がどんなに貧しくとも子供にこう言う「お前は働かなくてもいいから、学校へ行って勉強をしなさい」
カレルギー伯爵は、父伯爵から貴族の誇りを、母光子から日本人の勤勉さと礼儀。何よりも大切な和の精神を学んで育った。
後年、カレルギー伯爵は述べている「母はとても厳しくて、とてもやさしい人だった」と…
カレルギー伯爵が青年期を迎えた当時、ヨーロッパでは大国主義が蔓延り、各国は植民地奪い合いの真っ最中だった。
そうしてオーストリアも、ヨーロッパ各国が入り乱れて戦い合う「第一次世界大戦」の真っ只中に投げ込まれる。
だが、第一次世界大戦に敗れたオーストリアは領土を失い、父伯爵を亡くしたカレルギー家も、財産を失ってしまう。
カレルギー伯爵にとっては辛い青年期だっただろう。しかし、光子は気丈夫に明るく振舞い、失意の子供や人々を励ました。
二度とこんな悲惨な戦争があってはならない。ヨーロッパは一つにならなければならない…とカレルギー伯爵は思った。
それが、母光子から教わった日本の和の精神に基づく「パン・ヨーロッパ構想」であった。
だか、敗戦の屈辱からようやく立ち直ったドイツを指導する「アドルフ・ヒットラー」は彼の構想を逆手に取った。
「そうだ!ヨーロッパはドイツの元に一つに成らなければならない」
どんなに素晴らしい理想であっても、解釈によっては悪の道具と化してしまう。
息子の理想に反して、ひたひたと押し寄せて来るハーケンクロイツの響きが聞こえる中、ついに光子は病に倒れる。
そして、クーデンホーフ=カレルギー伯爵家に嫁いでから、一度も日本に帰ること無く、67才で異国の土となったのである。

第二次世界大戦は終ったが、ヨーロッパは二つに分断されてしまい、カレルギー伯爵の構想は、遠い夢の如くに思われた。
だが、東西冷戦に疲れ、経済的にも疲弊した西ヨーロッパの人々に「パン・ヨーロッパ構想」は、次第に注目される様になった。
「取りあえず、西側諸国だけでも一つになろう」1965年~1973年に掛けて、彼の理想の半分ながら、ヨーロッパ連合は結成された。
そして、ソビエト連邦の崩壊によって、東西冷戦が終結した今日、東ヨーロッパの国々も次々にEUに加盟して来ている。
母と子の平和の願いは、光子の死後73年にして、ようやく叶いつつあるのである。
海を渡ってヨーロッパの歴史を変えた日本の姫神・クーデンホーフ=カレルギー・光子伯爵夫人。
日本人は…日本女性は、その名を忘れてはならないと思う。

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当時の国際結婚・・大変だったでしょうね。
今でも世の中は、同じ日本人同士でも
育った環境が違うだけで 意見が違ってくるのに。

何となく日本人女性は3歩下がってのイメージがありました。
今は前へ前へと言うイメージもありますがヾ(・_・;)

sado joさんのお祖母様のいわれたお言葉は
さすが経験されたお言葉ですね。
確かに男性はいつまでも変わらないと
嘆く?友人がたくさんいますw
#469[2014/07/15 10:23]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: y様 COありがとうございます^^

> 何となく日本人女性は3歩下がってのイメージがありました。
> 今は前へ前へと言うイメージもありますがヾ(・_・;)

女子が自分の意見を堂々と述べるのは、決して悪い事では無いと思います。
大和撫子は絶滅しますが、替りに新種が繁栄すれば、それでいいです^^

> sado joさんのお祖母様のいわれたお言葉は
> さすが経験されたお言葉ですね。
> 確かに男性はいつまでも変わらないと
> 嘆く?友人がたくさんいますw

この歳になって、周りの男達を見ても、つくづく思います。
男はいつまで経っても子供だな~…って(笑)
#470[2014/07/15 15:00]  sado jo  URL 

そうですね
自分も魔法少年ですしw

男は崇高を求め、女は美と幸福を求める

この違いが、男がいつまでも子供って揶揄される原因かもしれませんね(汗)
#471[2014/07/15 22:02]  blackout  URL 

Re: COありがとうございます^^

> 男は崇高を求め、女は美と幸福を求める
> この違いが、男がいつまでも子供って揶揄される原因かもしれませんね(汗)

祖母に教わった脱皮の話で、ふと思いましたが、
女は年輪を積み重ねて大きくなり、枝を茂らした木の様なもの
男はそれに7日間しがみ付く蝉の様なもの、私は木から落ちた8日目の蝉。
後は、よろしくお願いしま~す(笑)
#473[2014/07/16 00:22]  sado jo  URL 

こんばんは
女は年代により変化していくなと思いました。
#475[2014/07/16 00:54]  ネリム  URL  [Edit]

Re: n様 COありがとうございます^^

> 女は年代により変化していくなと思いました。

女は年代と言うより、人生の節目、節目で状況に合わせて精神を進化させて行く。
生まれもって、生きる為の知恵を備えているんでしょう。だから長生きできる(笑)
#476[2014/07/16 01:36]  sado jo  URL 














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