シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第6話 【陰謀】 その5

古代シムーン大破
非運の巫女 バルザミーネとネルケの最期

 ラクリマ渓谷をさかのぼっていく内に、夜がしらじらと明けて来た。
 その日の出前の狭い谷間を、コール・ブルーメは上流に向かってひたすらに突き進んだ。
 ふいに少女たちの行く手に大きな橋が見えて来た。
 切り立った崖に打ち込まれた二本の橋脚…間違いなくラクリマ鉄橋だった。
 ディステルとファイルヒェンがふわっ!と上に上がって、爆弾を積んだシムーンに道を開けた。
 ハイデローゼとイリス、アーエルとネヴィリルのシムーンが開いた道の前に出た。 
「アーエル。ネヴィリル。両名は左の橋脚をお願いします。私たちは右を狙います」
「了解よ…あなたたちと同時に爆撃するわね」
「さぁ、行くわよっ!イリス…しっかり照準を合わせてね」
「OK、ハイデ。任せといてっ!」
 2機のシムーンが呼吸を合わせて、同時にラクリマ鉄橋の橋脚を目掛けて突っ込んでいった。
 未明の奇襲に驚いた鉄橋の警備兵が、対空機関砲に飛びついた時はもうすでに遅かった。
 ドッガァ~ン!…と爆発音が谷間に轟いた。
 ハイデローゼとイリス、アーエルとネヴィリルが放った爆弾は見事に左右の橋脚に命中した。
 たちまち橋脚は崩れ、支えを失ったラクリマ鉄橋は、グァラ!グァラ~!と言う音とともに谷底に落ちて行った。

「よしっ!やった~」
「爆撃成功っ!」
「さぁ!すぐに撤退しましょ…敵に見つからない内に」
 ハイデローゼは爆撃の成果を見届けると、ただちにコール・ブルーメに撤退の指示を出した。
 少女たちは再びシムーンの編隊を組み直すと、その場から全速力で脱出した。
 まだ油断はできなかったが、ラクリマ渓谷の中流までくると、少し谷間も開けてシムーンの飛行も楽になってきた。
 少ばかり緊張が解けて気が緩んだのか、少女たちは思い思いに自分たちが成し遂げた戦果を喜び合っていた。
(よかった~…一人も犠牲者を出さずに任務を遂行できて)ハイデローゼは、何よりもみんなが無事だった事がうれしかった。
(もう少しばかりラクリマ渓谷を下れば、方角を転じて敵地から抜けられる…このまま何事もなければ)

 だが、そんなハイデローゼの願いは、瞬く間に無残に打ち砕かれてしまった。
 突如、上空から舞い降りてきた大きな影がアーエルとネヴィリルのシムーンに襲い掛かったのだ。
 その瞬間、最後尾にいたバルザミーネとネルケのシムーンが、躍り出るように間に割って入った。
 すべてがあっ!と言う間の出来事だった。
 急降下して来た双胴のシムーンから発射された戦車砲の砲弾が、バルザミーネとネルケの古代シムーンを直撃した。
 さすがに頑丈な古代シムーンと言えども、戦車砲を食らってはひとたまりもない。
 少女たちにはとっさの事で、何が何やらまったく分からなかった。
 バルザミーネとネルケのシムーンの胴体は、一瞬にして裂け、竹とんぼのようにきりもみしながら谷底に落ちて行った。
「あぁっ!バルザミーネとネルケがぁ~!」ハイデローゼは叫んだ。
 バルザミーネとネルケのシムーンを撃った双胴のシムーンは、そのまま飛び去ってどこかに姿をくらませてしまった。

 バルザミーネとネルケのシムーンが落ちるのを見たアーエルとネヴィリル。ハイデローゼとイリスは、真っ先に後を追って降下した。
 それを見た他のコール・ブルーメの少女たちも、次々と谷底に舞い降りて来た。
 谷底に墜落したバルザミーネとネルケの古代シムーンは、戦車砲の一撃で原型を留めぬほど破壊されていた。
「バルザミーネ~ッ!ネルケ~ッ!」
 アーエルとネヴィリル。ハイデローゼとイリスは、二人の名を呼びながら破壊されたシムーンに駆け寄った。
 風防ガラスは粉々に砕けていて、サジッタ席に乗っていたネルケはすでに頭から血を流して死んでいた。
 けれどもバルザミーネはかすかに息をしていた…アーエルとネヴィリルは血に染まったバルザミーネの手を取った。
「バルザミーネ、バルザミーネッ…しっかりして!死んじゃだめ~っ!」
 バルザミーネはかすかに目を開いて、苦しい息の下から途切れ途切れに言った。
「あなたたちは、ね・ら・わ・れ・て・い・る」
 やっとそれだけ言うと、バルザミーネはガックリ!と事切れてしまった。
「バルザミーネッ!お願い。目を開けてっ!バルザミーネェ~…あぁぁ~」
 アーエルとネヴィリル。ハイデローゼとイリスは、バルザミーネとネルケの遺体に取りすがって泣いた。
「襲ってきたのはプランケとアルラウネの双胴のシムーンだったわよね」駆け付けてきたディステルが言った。
「何であいつらは突然味方を撃ったんだ。気でも狂ったのかっ!?」オルヒデも憤慨して言った。
「さぁ~…でも私横から見た。あの二人はアーエルとネヴィリルのシムーンを狙っていたわ」カメリアが言った。
「バルザミーネとネルケは、アーエルとネヴィリルをかばって撃たれたのよ」ナルテッセは確信したように言った
「何でアーエルとネヴィリルが狙われなきゃならないの?」ファイルヒェンは理由が分からなかった。
「私も分からないわ…でも、宮守様がアーエルとネヴィリルを嫌っていた事は確かだった」ハイデローゼは言った。
「それじゃぁ、宮守様が企んだ事なのか?」キルシュは疑ってそう尋ねた。
「バルザミーネは息を引き取る前に、アーエルとネヴィリルが狙われていると言っていた」ハイデローゼは事実を伝えた。
「かも知れないし…もしかしたら総督も絡んでいるかも知れない。本国から刺客を呼び寄せるなんて真似は、あの宮守にはできないはずだ」
 イリスの推理はみんなに思い当たる節があった…少女たちの胸に怒りが込み上げて来た。
「ちくしょう!…汚い手を使いやがってっ!」オルヒデが吐き捨てるように言った。
「帰ったら二人に談判してやるっ!」キルシュも怒りに火が付いた。
「やめなさいっ!何も証拠がないわ…それにあの二人は貴族だし、あなたたちの立場まで悪くなってしまうから」
 ネヴィリルはそう言って少女たちを止めた。けれども少女たちの怒りは収まらなかった。
「だったら私、貴族なんてやめてやるっ!」ディステルも怒り出した。
「そうだっ!こんな汚い事を企む貴族なんてやめてしまえっ!」普段は冷静なイリスも激昂していた。
「ディステル姉さまがやめるんなら、私もやめるっ!」童顔のファイルヒェンも怒っていた。
「あら、あんたも貴族だったの?」カメリアが聞いた。
「一応、士爵だけど…でも、そんなのもうどうでもいいよ~!」ファイルヒェンはとうとう泣き出した。
「あんまりだ~!あんまりだよぉ~!これじゃ、バルザミーネとネルケが可哀そうだァ~」ナルテッセも泣き叫んだ。
 少女たちはみんな声を上げて泣いていた。泣いて、泣いて、泣きじゃくっていた。
 都合のいいように使われて、あげくの果てに裏切られて死んだバルザミーネとネルケを悼んで…
「もう信用できないっ!国も、貴族も、大人全部がっ!」オルヒデが、少女たちの心を代弁して言った。
「アーエルとネヴィリルの暗殺を企んでるなら、また何か仕掛けて来るかも知れない」イリスが疑って言った。
「そんな事させない!絶対、私たちでアーエルとネヴィリルを守るっ!」
 ディステルは、みんなの気持ちをアーエルとネヴィリルに伝えるために言った。
「ありがとう。みんな…」アーエルとネヴィリルは、少女たちの気持ちがうれしかった。
「大事な仲間だもん。シムーン・シュヴィラだもん」ファイルヒェンの小さな手が二人をかばった。
 少女たちは堅く心に誓った、何があってもアーエルとネヴィリルを守る。と…結束した心ほど強いものはない。

~続く~

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夢の中で戦闘機が
ビルに突っ込んでビルが崩壊して
街が燃える夢を見た事を思い出しました。

それはとてもリアルでした。
学生の頃は、時々夢が現実になるので
ノートに書いていたことがありますヾ(・_・;)

最近は全くないですw
#619[2014/08/24 02:18]  yume-mi  URL  [Edit]

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#620[2014/08/24 02:59]     

Re: y様 COありがとうございます^^

> 夢の中で戦闘機がビルに突っ込んでビルが崩壊して
> 街が燃える夢を見た事を思い出しました。それはとてもリアルでした。

何処かの国の戦闘機が異常接近したり、旅客機が撃墜されたりする世の中。
核を積んだ軍用機もウロウロしてます…現実にあっても不思議ではないです(笑)

> 学生の頃は、時々夢が現実になるので
> ノートに書いていたことがありますヾ(・_・;)

夢見や予知と言うのは、一種、魂のタイムワープだと考えています。
人は前に進む時、目で先にあるモノを見ながら、体を前に進めます。
精神が先に行き、体は後から…そう思えば、超能力でも何でも無い現実ですね
ただ、精神の奴が明日を見てるのか?十年先を見てるのかが解らない?(笑)
#621[2014/08/24 11:16]  sado jo  URL 

Re: 気にする事はありませんよ^^

私もよく物忘れします…人間は忘却するからいい面もある。
仮に、痛かった事、苦しかった事をリアルに覚えていたら、大変です。
女子は出産の痛みを忘れず、二度と子供を産もうと思わなくなるでしょ。
人類は絶滅してしまいます(笑)
#623[2014/08/24 15:03]  sado jo  URL 














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