シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

随想/論文集

忘れられない一枚の写真

崩れ落ちる兵士

その昔、映画の一スタッフだった(に過ぎなかった)私には、どうしても忘れられない一枚の写真があります。

ロバート・キャパ 「崩れ落ちる兵士」1936年 報道写真としては最高のピューリッツアー賞を受賞。
私にはこの一枚の写真が動きを伴って見えるのです…それは銃弾の飛び交う戦場の真っ只中での出来事。
一人の兵士が突撃して来る…突如、弾丸が彼の身体を貫く…一瞬停止した彼は、ゆっくりスローモーションみたいに崩れ折れる。
絵や写真(情景)を動かしたい!…と言う私の強い思いは、物語への憧れとなり、脚本家先生の所に押し掛ける事になりました。。
映画監督でも無く、演出家でも無い私が絵や写真を動かすには、文章と言う表現方法を用いるしか無いと思ったからです。
しかし文章を学んだ事の無い私が、一枚の絵や写真から時の流れを組み立てるのは容易な事では無く、案の定挫折してしまいました。
それから長い時を経て、ボキャブラリーに乏しい文章表現ながら、今一度、若き日に抱いた思いに挑戦している昨今です。

最近ある女性ブロガーが、ブログで小説の書き方を講義してくれているので、ありがたく読ませていただいています。
なるほど、文章だけで時の流れを作ると言う作業は、はなはだ難しいものだとつくづく実感しております。
もし映画だったら、多少書き辛いシーンでも、演出やカメラワークによって相応のインパクトを与える事が出来ます。

例えば上の「ベスの恋の物語」を映像化すれば、私の下手な文章よりも遥かに情景豊かなものになるだろうと思います。

<冒頭のシーン:カメラ=ベス目線>
画面暗闇…バン!バン!タタタタン!…遠くから銃声とドイツ語とロシア語の入り混じった怒鳴り声が聞こえて来る。
その音が段々近づいて来て、瞼がゆっくり開く構図…まだ画面はぼんやりとしている。
ドガ~ン!…手榴弾の炸裂音…天井や床がグルグル乱れる…ドン!と何かにぶつかってカメラは停止する。

「何が起ったんだろう?」「これから何が始まるんだろう?」と言う観客の期待感を誘う映像になるのは間違いありません。

<ラストシーン:カメラ=ソ連兵目線>
ザクッ!ザクッ!と雪を踏みしめる音…カメラは一旦停止して俯瞰…十字架の下にある黒い塊(ベスの死骸)を映す。
「しょうがねぇ野良犬だなぁ~、こんな所でくたばりやがって…」
ソ連兵の手がグッと伸びて来て、硬直したベスの脚を掴む。

<そこでカメラは切り替わり、ソ連兵の背後からゆっくりとパンする>
死んだベスを引き摺って行くソ連兵…雪の表面に引き摺られた跡がす~っと続いて行く。

<カメラ=ゴミ焼却炉の鉄扉にズームイン>
ゴミ焼却炉の鉄扉が開けられ、ドサッ!とベスの遺体が投げ込まれる。
バタン!と鉄の扉が閉じられて、ボッ!と焼却炉が点火される…(窓から見て)炎に巻かれて行くベスの遺体が映る。

<カメラ=焼却炉の扉から次第にズームアウト>
やがて画面に焼却炉の全景が映る…煙突から立ち昇る煙…空からハラハラと粉雪が舞い落ちて来る。
そして、哀しいE.Dテーマ曲と共に、画面には字幕が流れて行く。

「軍用ドーベルマン犬「ベス」(牝)。生後2年と4カ月…人間で言えば、まだ少女の余りにも短い生涯だった」

次いで、画面にはキャスト・スタッフのテロップが流れて行く。多分、観客はすぐには席を立たないでしょう。
言い知れぬ喪失感に打ちひしがれ、人の世の不条理を感じて、呆然としたまま暗い劇場の椅子に座っている事でしょう
ハンカチを目に当てている女性もいるかも知れません…やがて幕が下りて、劇場はライトアップされ、観客ははっと我に還るのです。

映画なら、こんなシーンの流れをカメラワーク一つで作り出す事が出来ますが、文章だとこうは行かない所が辛いのです。
上の様なシーンを、何とか文章に変換しようとするのですが、なぜかイメージが減衰してしまって上手く行きません。
是が非でもそのシーンを描きたい!と意地になって書くと、切り絵みたいなメチャメチャな文章にしかなりません。
でも、そんな私の支離滅裂な素人文をいつも読んでいただいている皆様には、大変深く感謝しております。
どうでしょうか…ちゃんと文章になっていますか?時間が飛び散ってバラバラになってはいませんか?
一枚の写真や絵の中に時の流れを読み取り、文章に替える…と言う悪戦苦闘はどうやら死ぬまで続きそうです。

瞬間は永遠を写したものであり、時間は瞬間の中に存在する…と言う一念でやってます。

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~ Comment ~


いつもsado joさんの文章は言葉もたくさんご存じだし
難しい言葉もたくさんあって
凄く頭の良い方だなと感じています^^

これだけの文なんてなかなか書けないです。
一般人は(;-0-)

1枚の絵・誰かの一言・出かけた先で見たもの・・・
そんな1つのきっかけでその後の人生が
大きく変わることってありますよね。

最後の映像シーンを文章で描かれているのは
すごく頭に浮かびましたよ!!文章でなんて驚きました。

映画などの脚本もこういう風に書かれているのかな♪(@^-^@)
#667[2014/09/05 08:22]  yume-mi  URL 

Re: y様 COありがとうございます^^

いぇいぇ、文章に関してはまったくの素人です。自信はありません(笑)

> 1枚の絵・誰かの一言・出かけた先で見たもの・・・
> そんな1つのきっかけでその後の人生が大きく変わることってありますよね。

料理を食べて「美味い!」と思う。
その料理の中には素材の誕生~出荷~加工~調理と言う歴史が流れてる訳ですよね。
それが「美味い!」と言う一瞬に凝縮される。
瞬間は時の流れであり、時の流れは瞬間に見える!と言うのが私の哲学です。

> 映画などの脚本もこういう風に書かれているのかな♪(@^-^@

物書きがカメラアングルまで指示したら、監督さんに「お前は監督か?」と皮肉を言われますよ(笑)
映画は特殊なスキルを持つ者同士の総合分業芸術です。相手を信頼して任せるしかないですね。
#668[2014/09/05 09:06]  sado jo  URL 

私も完全な独学でライトノベルを書いているんですが
ジャンル的にどうしてもアニメチックになってしまうというか
セリフ多くて全体的なムーブが足りていないのが悩みどころ。
だったらマンガを描けと言われても漫画家は妥協した私ですorz
ある程度状況は想像できてるんですがそれが伝わっているのかどうか。
お互い頑張りましょう。
「独学」が最初「毒学」に変換されたのは内緒(笑)。
#669[2014/09/05 10:05]  西條すみれ  URL 

Re: s様 COありがとうございます^^

おっしゃる通り「毒」にでもなってればいいんですけどね^^
薬でも無く、毒でも無く、意味不な文章になってた。と言うのが一番恐い。

「愛情の反対は憎しみでは無い。無関心でいる事だ」
ってのは、アニメ「PSYCHO-PASS」の人格破綻者・槙島聖護のセリフだったかな?
いやァ、自分も良く似てます…なにせ、最悪の文章破綻者ですからね~><
平気で文章の首斬ったり、バラバラ殺文してるPSYCHO-PASSです(笑)
#670[2014/09/05 11:43]  sado jo  URL 

小説を書くには、映画を見ろ!
そういうアドバイスをしている作家さんがいます。
映像がイメージできれば、それを文章に移すことで、動きのある文章になるはずだ、ということなのでしょう。
映画のスタッフだったということは、得してますよ。きっと。
#671[2014/09/05 19:01]  しのぶもじずり  URL  [Edit]

Re: s様 COありがとうございます^^

ありがとうございます^^先輩のアドバイスとして素直に受け取らせていただきます。
でも、文の基礎の無い私には、それこそが頭の痛いおおごとになるんですよね。
映像は浮かぶんですが、文章の方が浮かばない。いざ文にすると、支離滅裂…(泣)
やり直し、また考えてはやり直し…の繰り返しです。
#672[2014/09/05 20:34]  sado jo  URL 

文章に関しては、そうは見えないかもしれませんが、自分も小説を書き始めたときは、それなりに苦悩がありました(汗)

浮かんだ映像を文章にすることの難しさを

どうしても書きすぎてしまうんですよね(汗)
初期のころの小説がまさにそれでした

時々読み返すと、書きすぎてさっぱりイミフ状態です(汗)

最近の小説はだいぶマシになったと勝手に思ってます

佐渡さんの作品は、静か動で言ったら動だと思います
自分とは真逆なところがあるので、それが面白いと思いながら、いつも読んでいます
#673[2014/09/05 23:08]  blackout  URL 

Re: blackoutさん COありがとうございます^^

> 浮かんだ映像を文章にすることの難しさを
> どうしても書きすぎてしまうんですよね(汗)
> 初期のころの小説がまさにそれでした

それよく分かります…文章と映像って水と油ですからね~

> 佐渡さんの作品は、静か動で言ったら動だと思います
> 自分とは真逆なところがあるので、それが面白いと思いながら、いつも読んでいます

ありがとうございます^^
動かさなきゃ…って意識が強いので自然とそうなってしまうのかも知れません。
もっと内省的な描写を増やす様、心掛けた方がよさそうですね(笑)
#674[2014/09/06 00:47]  sado jo  URL 














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