シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼地球年代記 ~カルマ~」
地球年代記 ~カルマ~ 小説本編

地球年代記 ~カルマ~ 第4話 「ホモ・サピエンス」 (1)

氷河期1

<オリジナル/ファンタジー/純文学>

 来る日も来る日も激しく吹きつけていた吹雪がようやく止んだ。
 長い間、食い物にあり付けずに飢えていた俺たちは、やっと洞窟から出て狩りに向かった。
 俺は三つに分かれたグループの一つを率いて、氷に覆われた南の山の尾根づたいに獲物を探す事にした。
 吹雪の間のわずかな晴れ間に、太陽の光を求めて穴倉から這い出して来る兎や穴熊、運が良けりゃァ鹿も狩れる。
 ただ、そいつらを狙っているのは俺たちだけじゃァ無い。
 サーベルタイガーにでも出くわせば、俺たちの方がヤツの獲物にされる危険性もある。
 でも、洞窟の中じゃァ女子供たちが腹を空かして待っているのだ。危険を承知でやらなきゃならない。

 俺たちは周囲を警戒しながら、慎重に山の尾根にあるゴツゴツした岩場を進んで、獲物を探し歩いた。
 ところが、新雪に覆われた大きな岩の陰を回った途端に、俺は何かにつまづいて前のめりに転げそうになった。
 振り返った俺の目に入ったのは、人間の白い足だった。
 一瞬、しめた!…と思った。何てぇ運がいいんだ。こんな所で行き倒れた人間に出くわすなんて…
 俺が死体に被っている雪を払い除けている間に、他の連中も周りに集まって来た。
 雪の中から出て来たのは、雪と同じような白い肌をした女だった。手を当てると凍り付いてすっかり冷たくなっている。
 うつ伏せに倒れていた体をひっくり返すと、金色の髪をした綺麗な女だった。
 女は首から大きな二枚貝をぶら下げていて、貝の表面には何やら訳の分からない文様が、あちこちに刻み付けられていた。
 貝と言うのは、海と言うとてつも無い大きな水溜りに生きている生き物で、この辺りからはよくその抜け殻が見つかる。
 ジキ爺さんから聞いた話では、昔、この辺りは入り江と呼ばれる海と陸の境目があったそうだ。
 その入り江と言う場所に暮す白い人たちがいたらしいが、氷河に追われて南の方に移動して行ったと言う。
 一昔前、まだ氷河がこれほど張り出して無かった頃は、俺たちの先祖との行き来もあったそうだ。
 今では遠い南の方に住んでいるとも聞いた。もしかするとそこから来たのかも知れない。
 俺たちは、さっそく行き倒れた女の両手両足を棒に括り付けて、意気揚々と洞窟に引き上げた。

 周囲を氷河に囲まれた洞窟の中には、30人ほどの人間が暮している。
 年長者のバルガをリーダーとして、次がドマ、三番目がオズ…つまり俺だ。
 男の俺たちは、狩りや力仕事をし、女子供は食える雑草や苔、薪を拾い集めてみんなで協力し合ってやっている。
 それでも生きて行くのがやっとこさで、飢えや寒さや、病気なんかで年に何人も死んで行く。
 洞窟の中は火を絶やさないようにはしているが、長い事吹雪が続く時は焚くものが絶えて、凍死者が出る場合もある。
 火を焚いている時は、焚いている時で、湿気た洞窟の中にカビが生えたり、虫が這い出して来たりして病気に罹る者もいる。
 そんな風にして死んだ者の肉はみんなで分けて食べる。洞窟の中で暮らす者にとって、死人は貴重な食料なのだ。
 俺も去年病気で死んだ女房を食った。

~続く~

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~ Comment ~


そうなんですね。
人も食べていたのですね。

そんな・・と思っても実際その立場になれば
みなそうしてしまうのだろうな。

前におなかが空いて自分の足の太ももを食べたっていうのを
漫画か何かでみました(;^-^)

奥さんをも・・ですね。
続きはどうなるのかなヘ(゚∀゚ヘ
#714[2014/09/13 02:28]  yume-mi  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 人も食べていたのですね。奥さんをも・・ですね。
> 続きはどうなるのかなヘ(゚∀゚ヘ

太平洋戦争では、食料補給が途絶えた南洋戦線では戦死者を食べたそうです。
猿の肉だ…と偽ったそうですが、そうでもしないと生きられなかったとか。
カニバリズム(食人)と言うのは、元はもっと深い意味があるそうです。
部族の酋長や英雄が死ぬと、その力を自分の中に取り込む為に食する。
愛する者が死ぬと、それを食べて自分の一部として生き続けてもらう。
「私が死んだら貴方が食べて」なんて…女性には究極の愛に思えるのかな~?

この続きは、もっと面白くなりますよ…乞う、ご期待 ♪(笑)
#715[2014/09/13 13:42]  sado jo  URL 














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