シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼地球年代記 ~カルマ~」
地球年代記 ~カルマ~ 小説本編

地球年代記 ~カルマ~ 第4話「ホモ・サピエンス」 (2)

氷河期2

 洞窟に帰ると、先に帰って来ていたドマが、死んだ仲間の肉をさばいていた。
 何やら、狩りの最中にサーベルタイガーに襲われて、崖から転落死したと言う話だった。
 俺が持って帰って来た女の死体は、あんまり色が白くてみんなが気味悪がったが、肉にすれば同じだと言ってやった。
 誰もやろうとしないので、俺が石斧を持って来て、取りあえず女の手や足や胴体をバラす事にした。
 ところが、俺が石斧を振り下ろそうとした時、死んでいるはずの女の手がピクリと動いた。
 びっくりした俺が石斧を振り下ろすのを止めると、女はうっすらと目を開けた。
 そうして俺を見て、安心したようにまた眠ってしまった。
 俺が不思議に思って、女の鼻に手を当てると、微かに息をしていた。
「生きてるっ!この女は生きてるぞ!」
 俺が思わずそう言うと、みんなは余計に気味悪がってしまったらしく、数歩下がって遠巻きに俺の方を見た。
「生きてる人間を食う訳にゃいかんなァ~」しばらくして、年老いたジキがそう言った。
「だけど、今更どうする?」俺はリーダーのバルガに聞いた。
「お前さんが拾って来たんだから、お前さんが面倒を見るより仕方無かろう。オズ」
 俺をじ~っと見つめるみんなの視線が「うん…うん…」と言っていた。
「生きてるにしたって、誰も白い女の面倒を見る者は無かろう…去年女房を亡くしたお前さんならちょうどいい」
「…ったてなァ~」さすがに俺も困ってしまった。死体ならともかく、生きて動き回る白い女なんて…
 だが、バルガはもう決めてしまったようだ。仕方無く、俺は白い肌の女を自分の寝場所まで運んだ。

 しばらくすると女は目を覚まして、周囲をキョロキョロ見回した。
「何処から来た?何と言う名前だ?」
 俺は、白い女に肉汁の入ったキノコのスープを与えながら尋ねた。
 しかし、何度聞いても言葉が通じないのか?俺を見てただニッコリ微笑むだけなのだ。
 その理由が分かったのは翌日になってからだった。言葉が通じないんじゃ無い。女はまったく口が利けないのだった。
 それで女が倒れていた訳も納得できた。きっと不具のせいで仲間に苛められたか何かで、追い出されてさまよったのだろう。
 厄介な女を押し付けられちまった…俺は今更ながらに、死体だと思って女を拾った事を後悔した。
 まァ、それでも女は若かったし、俺も男盛りだった。白い肌に抵抗はあったが、夜の相手にはまずまずだった。
 それともう一つ、白い女はとても料理が上手かった。何だかんだで、いつの間にか俺の妻と言う事になっちまった。
 最初は白い肌が気持ち悪いらしくて、洞窟の女たちも遠巻きに避けていたが、その内に段々慣れて来たようだ。
 妻が料理を始めると興味深そうに寄って来て、あれこれ覗いたり、味見したりするようになった。
 どうやら妻は色んな事を知っているらしく、口は利けなかったが、地面に図を書いたり、身振り手振りで女達に色々教えていた。
 洞窟の女たちは妻のお陰で、虫やキノコや雑草も、混ぜ合わせ方によっては色んな味が出せる事を覚えた。
 妻は石器の作り方もよく知っていて、洞窟の女たちと鍋やら何やら、色んな料理用具や調度品をこしらえた。
 火を焚く時に煙たくないようにする方法を図で示して、男たちに天井の岩に穴を開けさせたりもした。
 お陰で洞窟の中は少しばかり煙たく無くなって、目が楽になったし、僅かだがこもっていた湿気も減った。
 こんなのを文化と言うんだろうか?…どうも妻は、俺たちより程度の高い人々と一緒に暮していたらしい。

~続く~

にほんブログ村 小説ブログへ

 
関連記事
スポンサーサイト
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼地球年代記 ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼地球年代記 ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←地球年代記 ~カルマ~ 第4話「ホモ・サピエンス」 (3)    →地球年代記 ~カルマ~ 第4話 「ホモ・サピエンス」 (1)
*Edit TB(0) | CO(8)

~ Comment ~


文化を文化と理解できるだけの頭はちゃんとあるんだね(´・ω・`)
肉だと思って食べようとしてたから怖かったけど。
どこでも順応しやすいのが人間の特技!
弱い生き物だから、自分を活かす知恵には尊敬を払う。
まさに思わぬ拾い物(´・ω・`)
#718[2014/09/15 00:32]  しまうさぎ  URL  [Edit]

Re: しまうさぎ様 COありがとうございます^^

> 文化を文化と理解できるだけの頭はちゃんとあるんだね(´・ω・`)
> 肉だと思って食べようとしてたから怖かったけど。

だから、ホモ・サピエンス(語源は賢い猿)なんでしょうね(笑)

> どこでも順応しやすいのが人間の特技!
> 弱い生き物だから、自分を活かす知恵には尊敬を払う。
> まさに思わぬ拾い物(´・ω・`)

北極から熱帯まで、どんな地域でも知恵を使って生きられるのが人間ですね^^
逆に、戦場に順応すると野蛮人に戻る。戦時中は実際人食いもあったそうです。
#721[2014/09/15 00:57]  sado jo  URL 

色白は七難隠すとか言いますが
その当時は気味悪がられたのですか?

ぎりぎりで生きていることが伝えられて良かった^^
言葉がなくても、
ちゃんとコミュニィケーションもとれて、
なんだかこの場所が明るくみなの笑顔や知恵が増えているのですね。

わたしなんて話せても上手く伝わらないことが多々あります(;^0^)

#722[2014/09/15 03:00]  yume-mi  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 色白は七難隠すとか言いますが
> その当時は気味悪がられたのですか?

日本の伝統的な言葉を良くご存知ですね~^^
白人が生まれたのは、突然変異とか、氷河期の保護色とか言われてます。
猿の一種だった人間は元来有色…人類は全員黒人を祖先に持つんですね~

> ぎりぎりで生きていることが伝えられて良かった^^
> 言葉がなくても、ちゃんとコミュニィケーションもとれて、
> なんだかこの場所が明るくみなの笑顔や知恵が増えているのですね。

言葉を発しない。と言う事がこの先のストーリーに重要な意味を帯びて来ます。
喋れないのか?わざとなのか?その訳は?…乞う、ご期待下さい ♪
#723[2014/09/15 12:01]  sado jo  URL 

面白いです。

現代人から見ると、別の価値観、別の行動規範を持っている人たちの考えがすんなり入ってきます。

続き楽しみにしております。
#724[2014/09/15 15:53]  椿  URL 

女の正体が気になりますね。
どうして口が聞けないのか。
なぜ、そんなにいろんなことを知っているのか。
白い肌というのも、文明人ぽいですね。
#725[2014/09/15 16:25]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: 椿様 COありがとうございます^^

> 面白いです。
> 現代人から見ると、別の価値観、別の行動規範を持っている人たちの考えがすんなり入ってきます。
> 続き楽しみにしております。

そうですね…現代では異常な事が当たり前だった様ですね。
今日は敬老の日ですが、歳を取って働けなくなると自ら山林に入って死んだり、姥捨てなんて風習もあったりしたんですね。
逆に子供や若い娘を生贄に捧げる風習もありました。
人間がみんなで生きて行く為に、どんな試行錯誤をして社会を作ったのか?
私も、古代人の考え方は大変興味深く思います^^
#726[2014/09/15 17:33]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 女の正体が気になりますね。
> どうして口が聞けないのか。
> なぜ、そんなにいろんなことを知っているのか。
> 白い肌というのも、文明人ぽいですね。

話は別になりますが…
実は北アメリカには高度な文明都市の痕跡が結構あるそうですが、いつ頃からか放棄されていた。
入植した白人はインディアンを見て、野蛮人だと思い込み、都市遺跡の方は全部壊してしまった。
別の人々が住んでたのか?それともインディアンに凄く地域格差があったのか?謎のままです。
日本にもユダヤ人伝説が数多くありますが、私は航海技術に長けたカナン人を疑っています。
カナン人はユダヤと同じ文化を持ち、日本に文化を齎した中国の華南人にも通じますからね~^^
#727[2014/09/15 17:56]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←地球年代記 ~カルマ~ 第4話「ホモ・サピエンス」 (3)    →地球年代記 ~カルマ~ 第4話 「ホモ・サピエンス」 (1)