シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼地球年代記 ~カルマ~」
地球年代記 ~カルマ~ 小説本編

地球年代記 ~カルマ~ 第4話「ホモ・サピエンス」 (3)

氷河期3

 そうこうしている内に一年が経って、妻は最初の子供を産んだ。
 真っ白い肌をした男の子だったので、俺は白い雪山の名前を取って「ザガリ」と名付けた。
 喋れない女の子供だから、口が利けないのでは無いかと心配したが、赤ん坊の頃から何やら喋り出したので安心した。
 それから二年後に二人目の子供が産まれた。今度も真っ白い肌の女の子だった。
 俺は氷山の谷間に咲く花の名前を取って「クヌ」と名付けてやった。
 二人とも、洞窟の他の女たちの子供とは違う毛色の変った子だったが、ともかくも俺は家族を持った。
 俺は口の利けない妻に代わって、子供たちにあれやこれやと言葉を教えた。
 妻は妻で、何やら地面に色々と模様の様な記号を描いては、子供たちに何かを教えているようだった。
 俺と妻の子は、他の子供たちよりも利発で成長が早く、ザガリはガキの頃から俺に着いて来て狩りを覚え出した。

 だが、二人が大きくなった頃には、氷河が洞窟近くまで張り出して来て、獲物もめっきり減ってしまった。
 そんなある日の事、俺よりも背が高くなったザガリが、突然こう言い出した。
「父さん。僕はクヌと一緒に旅に出ようと思うんだ」
「旅だって?…ここを出て何処へ行こうと言うんだ。辺り一面氷だらけで、行く所なんか何処にも無いぞ」
「ここに居たって、その内氷河に飲み込まれるだけだ。ここには未来なんか無いよ」
「そんな事言ったって、お前…」
「母さんに教えてもらったんだ。南に向かって氷の山を幾つか越えて行けば、母さんの生まれた村があるって…」
「そうか。お前の母さんはその村から来たのか…で、そこはどんな所だ」
「海って大きな水溜りがあるって…そこには僕たちと同じ白い人がたくさん居て、魂の貝と一緒に暮してるって…」
「海かァ~…そんな話を、随分昔にジキ爺さんから聞いた事があるなァ~…でも、魂の貝って何だ?」
「母さんが首からぶら下げてる物だよ。とっても大切な物で、その村に行ったら僕たちももらえるらしい」
「わざわざ貝をもらいにそんな遠くまで危ない目をして行く事はないだろう」
「でもクヌも行きたいって言うんだ。母さんの産まれた村に…」
 俺は一生懸命引き止めようとしたが、子供たちは言う事を聞かなかったし、妻は全然子供たちを止めようとはしなかった。
 そうしてとうとうザガリは、妹のクヌを連れて洞窟から旅立って行ってしまった。

 息子と娘が洞窟を出て行ってまもなくしてから、妻は重い病気に罹った。
 何日も何日も高熱にうなされ続け、身体は見る見るうちに衰弱して行った。
 俺は懸命に看病したが、もうすでに手の施しようが無かった。
 少し熱が下がったある日の事、妻は首に下げていた二枚貝の蓋を開けて、それを口まで持って行った。
「ラ・ルゥゥ~…ルル・ラララァ~…ヒュゥ・ヒュララァ~」突然、妻は歌を歌い始めた。
 俺は妻が言葉を発したのを始めて聞いた。妻はオシでは無かったのだ。
 まるで命を絞り出すように聞こえる歌は長い間続いた。俺はただ黙ってその歌を聞いていた。
 ようやく歌い終えた妻は、二枚貝の蓋を閉めると、肌身離さず身に付けていた貝を初めて首からはずして、俺に差し出した。
 そうして俺を促すようにニッコリ微笑むと、洞窟の入り口に虚ろな目をやったまま事切れた。
 その瞬間、俺は今までの出来事の意味をすべて理解した。

~続く~

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こんばんは。

引き込まれてしまいました^^
何を理解したのでしょう・・・
続きが楽しみです。
#728[2014/09/16 23:41]  月夜野  URL 

Re: 月夜野様 COありがとうございます^^

> 引き込まれてしまいました^^
> 何を理解したのでしょう・・・
> 続きが楽しみです。

聾唖だと思っていた奥さんは、実は聾唖では無かった?
しかも二人の子供を産み、育てて死んでしまった。さてその先は?
…って、推理小説を書いたつもりでは無いんです(笑)
多分、タイトル通り「ホモ・サピエンス」の小説だと思います^^
#729[2014/09/17 01:02]  sado jo  URL 

お子様も白い肌なんですね?
ハーフ色にならずに
普通どちらかの色になってしまうのですか?

貝の中に入れたのは何だったのでしょう。
心?かな・・・愛?かな・・・
え・・と次回は明日更新ですか?w^^気になります~


#730[2014/09/17 02:06]  yume-mi  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> お子様も白い肌なんですね?
> ハーフ色にならずに普通どちらかの色になってしまうのですか?

奇妙な事に、異なるDNAを受け継いでも、中間?は無いんですね~
その環境下で優性な方が選択されてしまうんでしょうかね?

> 貝の中に入れたのは何だったのでしょう。
> 心?かな・・・愛?かな・・・
> え・・と次回は明日更新ですか?w^^気になります~

えぇ~、誠に申し訳ないですが、病人なのでそんなに早く書けないんですよ~
キーボードを押すのも、人の三倍はノロいので…病の呪い。~オヤジギャグ~(笑)
#731[2014/09/17 13:35]  sado jo  URL 

こんにちは。

部族社会だろう時代に、たった一人雪山で倒れていた女の人。
自分の部族が滅ぼされたのか、追い出されたのかと思っていましたが、そうではない理由があるようですね。

続きが楽しみです。
#732[2014/09/17 14:21]  椿  URL 

Re: 椿様 COありがとうございます^^

> 部族社会だろう時代に、たった一人雪山で倒れていた女の人。
> 自分の部族が滅ぼされたのか、追い出されたのかと思っていましたが、そうではない理由があるようですね。
> 続きが楽しみです。

さまよった理由は余り考えなくていいと思います^^
むしろ人(ホモ・サピエンス)が、賢い猿である理由が大事だと思います。
それはある事実を認識してしまう事かな?…ある意味、哀しくはありますけどね。
#733[2014/09/17 15:05]  sado jo  URL 

貝は録音装置?
白い肌……?
バレてはいけない違いを隠すために喋らなかった?

謎を呼びますね(^_^)
#734[2014/09/17 22:20]  小奈鳩ユウ  URL  [Edit]

Re: 小奈鳩様 COありがとうございます^^

> 貝は録音装置?
> 白い肌……?
> バレてはいけない違いを隠すために喋らなかった?
> 謎を呼びますね(^_^)

いや、今回はグラハム・ハンコック風の
「来訪者が原始人に白い肌と文明を齎した」と言SF設定では無いのです。
確かに、炭素・水素・窒素・酸素の4元素があれば、宇宙の何処でも人間を作る事は可能ですが、
その話では無く、ホモ・サピエンスの内省的なお話と言う事でご勘弁下さい(汗)
多分、誰しもが思う**と、**の**みたいなお話だと思います^^
#735[2014/09/17 22:44]  sado jo  URL 














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