シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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時のない世界の少女

時のない世界の少女 (3)

時のない03

「ぐずぐずしないで!行くわよ」彼女は、いきなり僕の腕を捉まえて強引に引っ張った。
「痛たたっ!足がっ…」
「足が痛いぐらい何よっ!奴らに捕まって消されるよりマシでしょ」
 彼女はお構いなしに、痛い足を引き摺る僕の手を引いて駆け出していた。
「こら~!まっ、待てぇ~!」庭に転がっていた男の一人が、起き上がって来てそう怒鳴った。
 彼女はそんな声に振り向きもせずに走った。僕もいつの間にか、痛い足を引き摺りながら彼女に付いて走っていた。
(僕を助けてくれたって事は味方なのかな?)今はそう思うしかなかった。

 彼女は僕の手を引きながら、街の車道の真ん中を一直線に走って逃げた。
「ちょっと待って、車に轢かれちゃうよ!」僕は車が気になって仕方がなかった。
「よく見なさい。車なんて動いてないでしょ」彼女は走りながら平然とそう言った。
「ホントだ…何で?」
 車道を走っているはずの車は、全部止まったままで人は乗っていなかった。
 歩道にも目をやったが、なぜか街の中には人影がまったくなかった。
(街の中に誰もいない…なぜだろう?)
 僕が走りながら考えていると、ビルの入り口からマネキン人形…いや、人間を担いだ作業服の男たちが出て来た。
「あっ!イレギュラーだ」男たちは、僕たちを見るなりそう叫んで追って来た。
「ちっ!見つかってしまった」
 彼女はさっ!と僕の手を引いて小さな路地に隠れた。男たちは僕たちには気付かずに走り去って行った。
「何で僕を助けてくれたの?あの人達は誰?君は…?」僕は、矢継ぎ早に彼女に尋ねた。
「あのまま放っといたらあんた回収されてたわよ。話は後…今はともかくここから逃げなきゃァ」
 薄暗い路地を通り抜けては走り、また路地の中に入って逃げて行く内に、僕は蝋人形のように固まっている人間を何人か見た。

 ようやく追っ手を巻いて、僕と彼女はとあるラブ・ホテル街にたどり着いた。
 彼女は足が痛いのと、息が切れたのとでゼイゼイ言っている僕の手を引いて、スタスタと豪華な一軒のラブ・ホテルに入った。
 そうして、まるで決めていたかのように一部屋のドアを開けると、僕を中に押し込んで入り、すぐにドアに鍵を掛けた。
 そこはゴージャスな調度品が並べられ、クィーンサイズのWベッドと、大きなソファーが置いてある高級な一室だった。
 彼女は肩に掛けていた弓と矢筒を、無造作にソファの上に放り投げると、日本刀を持ったままゴロリとベッドに横になった。
 痛い足を引き摺りながら走るのがやっとで、それまで気付かなかったが、しげしげ見るととても綺麗な女の子だった。

~続く~

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今、一瞬sado joさんのブログだと
忘れて読んでいました(@^-^@)

本当に連続ドラマのような?読んでいるのではなく
見ている気がしました^^

街は時が止まってるのでしょうが
なぜ人が乗ってない車なのかな。

ホテルで見るから綺麗に見えたのではなく
美少女だったんですね^^
#829[2014/10/04 02:30]  yume-mi  URL  [Edit]

この世界はなんなのか。
それとも、世界に何が起こったのか。
展開が楽しみです。

美少女との仲も楽しみです。
#830[2014/10/04 12:58]  椿  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 今、一瞬sado joさんのブログだと忘れて読んでいました(@^-^@)
> 本当に連続ドラマのような?読んでいるのではなく見ている気がしました^^

ありがとうございます^^映画の仕事で学んだ映像を、文字に置き換えると言う、
読むのでは無く、観る感覚…文脈を崩しても、映像を文字化したいと願ってます。

> 街は時が止まってるのでしょうが、なぜ人が乗ってない車なのかな。
> ホテルで見るから綺麗に見えたのではなく、美少女だったんですね^^

人が居ない街、人が乗って無い車、謎の美少女の正体は、後ほど明かします^^
#831[2014/10/04 13:29]  sado jo  URL 

Re: 椿様 COありがとうございます^^

> この世界はなんなのか。それとも、世界に何が起こったのか。
> 展開が楽しみです。
> 美少女との仲も楽しみです。

Big.VANが起った一瞬で宇宙が出来て、我々は今もそれを見ていると言う説があります。
宇宙に焼き付けられた世界は、動画なのでしょうか?それとも静止画なのでしょうか?
パソコン上で動いて見える動画は、実は一枚、一枚の写真の重ね合わせなのですね^^
「美少女との恋」男なら誰でも憧れますが…う~ん、若ければしてみたい(笑)
#832[2014/10/04 13:43]  sado jo  URL 

 佐渡様

 おはようございます。連載されている小説は面白い
 展開になってまいりましたね。主人公は幽体離脱して
 いるのか、はたまた、この女の子の世界が主人公の妄
 想なのか。色々考えてしまいます。拝見させて頂いて、
 映画「マトリックス」にも似ているなあと感じたりも
 しました。あのマトリックスの主人公ネオも、最初、
 自分が仮想現実の世界にいることが分からなかった
 ので、この小説の主人公も、自分の置かれた状況を未だ
 に把握できていないのかなと思いました。続きを楽しみ
 にしています。
#835[2014/10/05 07:17]  otometubaki  URL 

こんにちわ

逃げこんだ場所がラブホテル、しかも美少女とふたりっきり。
どんな展開になるのか楽しみです。
#836[2014/10/05 11:59]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: otometubaki様 COありがとうございます^^

確かにミステリーには「ここは何処?」「私はだ~れ?」って言う仕掛けがありますね^^
「マトリックス」は特に意識してませんが「二コール・キッドマン」は少し意識したかな?
名作「Another」や「白いカラス」を始め「ステップフォード・ワイフ」「記憶の棘」など…
何でも無い日常から、す~っと非日常の世界になって行く…いや、日常の中に見る非日常かな?
小品ながら「記憶の棘」は良かった…彼女は何食わぬ顔で観客を騙すのが上手い女優です(笑)

主人公(引きこもりの少年)が何を見てるのか?は続きをお楽しみ下さい^^
#837[2014/10/05 13:47]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 逃げこんだ場所がラブホテル、しかも美少女とふたりっきり。
> どんな展開になるのか楽しみです。

危ない所を助けられて、ラブホに押し込まれた!…って男子的にはワクワクしますね~^^
もしかしてこの世界に男子は一人だけ?相手は肉食女子?…何て想像もしちゃいますが、
さて、どうなりますでしょうか?
#838[2014/10/05 13:57]  sado jo  URL 














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