シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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時のない世界の少女

時のない世界の少女 (6)

時のない05

 話が終って一息付くと、サヤは冷蔵庫の中から食べ物と飲み物を取り出して来て、テーブルの上に並べた。
 ハンバーガーとメロンパン、お菓子の袋が二つ、それとお茶のペットボトルと紙パックの牛乳。
「もうこれだけしかないか~…明日は食料の調達に行かなくっちゃァ」
 サヤはそう言ってため息を付くと、牛乳とハンバーガーを僕に差し出した。
「食べなさいよ。お腹空いてんでしょ」
「いいよ。残り少ないのに取っちゃァ悪いから…」
「痩せ我慢しない。明日調達すればいいんだから…その代わり手伝ってよ」
「あァ、いいけど…それじゃ遠慮なくいただきま~す」
 僕は紙パックの牛乳を備え付けのグラスに注いで、グッと一息に飲んだ。
 乾いていた喉を通って行く冷えた液体が何とも言えず心地良かった。
 でも、もう一杯飲もうと思って、何気なくパックに目をやった僕は、慌てて牛乳を吐き出しそうになった。
「うっ!うぅぅ~…トイレどこ?」口を押さえながら僕は言った。
「何よ?どうしたの?気分でも悪くなった?」サヤは不思議そうな顔をして聞いて来た。
「だってこれ、賞味期限とっくの昔に切れてるよ」
「別に腐ってなかったでしょ…だって、時間が止まってるんだから」
「でも、冷蔵庫は動いてないんでしょ?」
「動いてなくても時間が止まった時のまんま冷えてるの!冷えた物は冷えたまま、熱い物は熱いまんま」
「あっ!そうか~、温度も何もかも変化しないんだ。動かないんだ」
「そう…だからテレビも見れないし、電話も使えない。車や人が止まってるの見たでしょ」
「そうか~、動いてるのは僕たちと、あの回収業者とか言うおじさんたちだけか…でも、他の人は止まってるのに何で動けるんだろう」
「それが分かったら苦労しないわよ」
「まァ、そりゃそうだけど…」

 僕はそれ以上考えない事にした。ただでさえ頭がおかしくなりそうなのに、余計に変になってしまうからだ。
 サヤが賞味期限の切れたメロンパンを平気で食べるのを見て、僕も安心してハンバーガーを食べた。
 食べ終わると、何だかホッとした気分になった。そうして同時にドッと疲れが出て、足が痛いのを思い出した。
 サヤも疲れているらしく、テーブルの片付けもそこそこにベッドの端に座った。
「あたし疲れたからもう寝る。出て行ってよ」
「出て行ってって…って、どこに?」
「向かいの部屋が使えるから、そこで寝るといい。いい事、ちゃんと内から鍵をかけるのよ」
「うん、分かった」
「お風呂に入ってもいいけど、シャンプーは使わない事。痛めた足は冷蔵庫の氷で冷やすといい」
「あァ、ありがとう」
「そいじゃァ、おやすみ」
 僕が部屋から出ると、ガチャリとドアの鍵が掛かる音がした。

~続く~

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~ Comment ~


時が止まれば、
食べ物の存在も?止まるのですね。
冷たいものも冷たいまま止まるって便利ですね^^


だけどなぜ、シャンプーは使ったらだめなのかとそこばかり
気になりました(笑)
#887[2014/10/15 02:44]  yume-mi  URL 

こんにちは^^

うちの母や妹は買っても忘れてるのかずっと放置してて
そのまま賞味期限を切らしてしまうことが多いんですよorz
なぜ忘れるのかわからないし、百歩譲ってそこまではいいとしても
賞味期限が過ぎたものすら平気で食べるんです(笑)。
彼女らにとっては便利な世界ですね。私はそうでなくとも賞味期限切れNGですが。
#888[2014/10/15 10:06]  西條すみれ  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 時が止まれば、食べ物の存在も?止まるのですね。
> 冷たいものも冷たいまま止まるって便利ですね^^

その代わり、お茶やコーヒーが熱いままだから飲めませんよ(笑)

> だけどなぜ、シャンプーは使ったらだめなのかとそこばかり
> 気になりました(笑)

化学反応も停止しています。それを無理矢理やるとどう言う事になるか?
後で、面白いシーンも出て来ます^^
#889[2014/10/15 13:48]  sado jo  URL 

Re: すみれ様 COありがとうございます^^

> 賞味期限が過ぎたものすら平気で食べるんです(笑)。
> 彼女らにとっては便利な世界ですね。私はそうでなくとも賞味期限切れNGですが。

ご一家を「時のない世界」に召還して差し上げましょうか?
電気、ガス、スマホ、自動車など、文明の利器が一切使えない世界で良ければ…
しかも、常に得体の知れない集団に狙われる事になりますが…
ある意味「進撃の巨人」より恐い世界かも…人類を守る壁もありませんので(笑)
#890[2014/10/15 13:59]  sado jo  URL 

時が止まった世界で汁物はどうなるのか……
逆さまにしても液体としてこぼれ落ちないし、止まっているものはひとつの塊になってしまうのか…
熱いラーメン、でも硬い! とかになるんだろうか。
それとも、動ける人間が触ると普通に食べられるようになるんだろうか。
#895[2014/10/15 22:58]  しまうさぎ  URL  [Edit]

Re: しまうさぎ様 COありがとうございます^^

> 時が止まった世界で汁物はどうなるのか……
> 逆さまにしても液体としてこぼれ落ちないし、止まっているものはひとつの塊になってしまうのか…
> 熱いラーメン、でも硬い! とかになるんだろうか。
> それとも、動ける人間が触ると普通に食べられるようになるんだろうか。

う~ん…体に触れた物は動くし、熱も伝わる設定になってます^^
(そうしなきゃ、物語にならないから…笑)でも、焼き物や煮炊きは出来ません。
後でオデンが出てきますが、かなり熱いです!ラーメンもまず食べられませんね。
人体外部での化学反応や熱交換は起りません。ただ一つの例外を除いて…
それが物語の鍵になるので、今は言えませんが…
#896[2014/10/16 02:03]  sado jo  URL 

なるほど、時間が止まっているから賞味期限も関係ない。
なぜ自分たちだけが動けるのかその謎は、解けるのでしょうか。
#898[2014/10/17 05:08]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> なるほど、時間が止まっているから賞味期限も関係ない。
> なぜ自分たちだけが動けるのかその謎は、解けるのでしょうか。

ええ…但し体の中では新陳代謝が起こるから、不老不死と言う訳には行きません(笑)
謎は、多分最後のどんでん返しで明かす事になるでしょうね^^
#900[2014/10/17 14:03]  sado jo  URL 














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