シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼ビーストハンター」
ビーストハンター 小説本編

ビーストハンター 第1話 狩猟免許と言う名の殺人許可証 (8)

羊飼い

「お~ぃ、ウズメねえさん…いるかい?」
「いるよ。今シャワーを浴びて上がったところさね」
「ちょっくら邪魔していいかな?まさか裸じゃぁねぇだろうな?」
「何言ってんだい。あたいが裸になる時は、客から金取る時だよ…で、何か用かい?」
「ちょっと聞きたい事があってな」
「まぁ、入んなよ」
「そいじゃぁ、お邪魔させてもらうよ」ツクモはドアを開けて中に入った。

 小奇麗に飾られた部屋の中では、バスローブを身にまとったウズメがベッドに座っていた。
 花の飾られたテーブルの横には、身体を綺麗にしてもらったシャルクのルージュが寝そべっている。
 すっかりくつろいだ様子の大きなチベタンマスチフは、眠そうに顎を絨毯の中に埋めていた。
「おぉ、ルージュちゃん…いい子にしてるな」
 ツクモはルージュに近寄ると、しゃがみ込んで頭を撫でてやろうとした。
「ウゥ~…ガルルル」そのとたんに頭をもたげたルージュが唸り声を上げた。
「触るんじゃないよっ!喰い付かれるよ」ウズメが注意を促した。
「えらくご機嫌が悪いな~」ツクモはあわてて手を引いた。
「こっちおいで…ルージュ」
 ウズメは手招きしてルージュを呼ぶと、頭を撫でてから自分の横に座らせた。
「この子は大の男嫌いでね。男が触ろうとすると唸り出すのさ」
「へぇ~…そりゃまた、どうして?」ツクモは尋ねた。
「二年前にチベットとインドの国境付近で、人民解放軍の分隊が全滅した事件があってね」
「そんなニュースは聞いた事ねぇぞ」
「当たり前だろ…そんな都合の悪いニュースを中国政府が流す訳ないじゃん」
「何でおめぇさん、そんな事知ってんだ?」
「話しゃぁ長くなるがね。ある羊飼いがチベット国境の崖道を娘と二人で牧羊犬と羊の群れを連れて歩いてたのさ…そこへ人民解放軍の兵隊たちがジープに乗ってやってきた」
「それで?」
「地元じゃぁ、車は羊が通り終わるまで待つのが習わしだ…ところが人民解放軍のヤツらは、俺たちの方が偉いと言わんばかりにそのまま向かってきた。あわててジープを止めようとした羊飼いは、ヤツらに撥ねられて死んじまった」
「ひどいヤツらだな~」
「その時、躍り出たルージュがジープを運転しているヤツの腕に噛み付いたのさ…後ろに乗っていた兵隊がさんざん銃床で殴り付けたが、それでもこの子は噛み付いたまま離れなかったんだ」
「ほう~、すごい根性だな…で、どうなった?」

~続く~

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<背景あれこれ>
「ビーストハンター」は現代社会の諸問題が、何ら解決されずに未来に持ち越された世界を想定して描いています。
そこでは、依然、人種・民族・国家間の抗争が繰り返され、温暖化による気候変動や、沿岸経済都市の水没が起きています。
世界の経済は大きく後退し、治安が悪化した中で。各国は自国を守る為に保守化し、右寄りの政策を取っています。
国連は、この混迷した世界を何とかする為の努力をしますが、各国の思惑が入り乱れてどうにもならない状況に陥ってます。
現代社会が積み残した負の遺産を引き摺りながら、それでも未来の人々は、そんな世界で生きて行かなければなりません。
一介の素人小説が未来まで残るとは思えませんが、未来の人々がこの小説を読んだらどんな思いがするだろう。
「スマンな、君達にこんな世界しか残してやれなかった。今の不甲斐ない大人達を悪く思わんでくれ」
そう未来の子供達に詫びたい気持ちで書いています。
 
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~ Comment ~


このまま行くと未来は
明るくない。ですものね。
数年前までもう少しましだった気がするのに、
最近特に酷い。
そんな中にいる自分もわからないまま、どっぷり浸かっているのかもと思うと
怖いですが。

ちいさいころ、男の人が怖くていつも泣いていたと母が言います(>。<;)
続く・・・気になりますヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*
#1092[2014/12/01 02:05]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> このまま行くと未来は 明るくない。ですものね。
> 数年前までもう少しましだった気がするのに、最近特に酷い。

今、病んでいる社会の諸問題が解決出来なければ、未来は確実に暗いでしょうね。
みんな、自分が生きてる間くらいは…と思ってるんでしょうが、大丈夫かな~?

> ちいさいころ、男の人が怖くていつも泣いていたと母が言います(>。<;)

気持ちはよく分かりますよ^^男の本性は野獣みたいなモンですからね。
祖母曰く「男はサーカスの猛獣。女はそれを操る猛獣使い」…とね(笑)
#1093[2014/12/01 02:35]  sado jo  URL 

こんにちは^^

最近は赤ちゃんや幼い子供を見るたびにかわいそうだと憐れむ目で見てしまいます。
なんでこんなときに子供を産むんだ、ちゃんと産んだ後のことを考えてるのか
親として子供の将来に責任を持つ覚悟はあるのかなど
本来明るい気持ちで見るはずの子供に対しここまでいろいろ考えて見てしまうのは
正直自分でも異常だと思ってます。
だから単に未経験ではなく誰かと付き合って子孫を残そうという考えを諦めるようになり
「人が人を好きになる。もっとそういう本能的な部分を刺激すれば」
と、少子化に対して考えているバカなコメンテーターに憤りを隠せない私です。
女性社会というより社会全体ですね。前にあった「女性は産む機械」発言も然り
なぜ政治家はそれがわからない無能な集団なのか(笑)。
#1094[2014/12/01 10:24]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様 COありがとうございます^^

現代社会を体に例えると、酒と、煙草と、過食で、重度の成人病を患ってる状態。
健康を取り戻すには、徐々では無く、一斉に禁酒・禁煙・素食をやるしか方法が無い。
しかし、それをやると経済の大混乱を招き、既得権益を失う人々が大勢出て来てしまう。
さて、このまま医者に死を宣告されるのを待つか?世界のシステムをひっくり返すか?
二択の内どちらかを選択するしか無い。人類の先行きは険しいねぇ(笑…事では無い)
#1095[2014/12/01 13:50]  sado jo  URL 

傍若無人な人民解放軍に噛みつく勇ましいワンちゃん。
ただでは済まなかったはずでしょうが、なぜ助かったのか興味津々です。
#1096[2014/12/01 19:46]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 傍若無人な人民解放軍に噛みつく勇ましいワンちゃん。
> ただでは済まなかったはずでしょうが、なぜ助かったのか興味津々です。

なぜ助かったか?は次回の小説で発表します^^

強い者が、弱い者を苛めたのが20世紀~21世紀初頭の最悪の歴史でした。
ドイツ人がユダヤ人を苛め、今度はユダヤ人がパレスチナ人を苛める。
さて、孔子は「仁徳(慈しみ・寛容)」こそが国を治める要。と説いたはずです。
中国人が国を安んじたければ「己の欲せざる事を、人に為す無かれ」ですね。
今頃になって、孔子の教えを日本人に教えられる様では心もと無いなァ~(笑)
#1097[2014/12/01 20:40]  sado jo  URL 

確か先進7カ国の中で、日本は1番子育てがしにくい環境、というのを見かけた気がします

でも、その通りだと言わざるを得ないですね

特に朝の電車内ではそう思わざるを得ないです

乳飲み子を抱えて、どこかの託児女に預けるかのような母親の姿と、その子供が泣き出した時の周りの冷ややかな反応
おそらく母親もフルタイムで仕事をしないといけないような境遇

どれだけ婚活とか恋活とか街コンとかで煽ったところで、根本的な解決にはならないと思うわけです

社会構造自体を変えないことにはどうにもならない気がしますが、問題が多そうで、どこから手をつけたらいいのやらって感じですね
#1098[2014/12/01 22:40]  blackout  URL 

Re: blackout様 COありがとうございます^^

昔の人は「二人口は食えるが、一人口は食えない」と言ったそうです。
つまり家族を持てば生活が楽になり、一人暮らしは生活するのが苦しいと言う意味です。
所が今はまったく逆になってます。家族を持って苦労するより、一人で気楽に生きる。
そんな考え方が、主流になりつつあります。コレ自体が社会が病んでる証拠ですね。
おっしゃる通り、先進国の方が社会の崩壊が進んでるし、ダメになるのが早いでしょう。

所で、米国の銃騒ぎ。アレ何とかならんかなァ…まるで小説の世界を地で行ってますね。
小説家と言う職業を、リアルすぎる現実で奪わないでもらいたい(笑)
#1099[2014/12/02 00:36]  sado jo  URL 

バスローブ姿で現れたらドキドキしそうです(*ノωノ)
それはともかく、車は羊が通り終えるまで待つのが習わしなのに、
それを無視して行こうとするなんて酷い話ですね。
どこにでも自分勝手にやりたいようにしようとする人間はいますしね。
続き楽しみにしてますね~。
#1100[2014/12/02 21:12]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> バスローブ姿で現れたらドキドキしそうです(*ノωノ)

いやァ、元娼婦のウズメ姉さんのバスローブ姿…さぞ色っぽいでしょうねぇ(笑)

> それはともかく、車は羊が通り終えるまで待つのが習わしなのに、
> それを無視して行こうとするなんて酷い話ですね。

まァ、中国では漢人(純正中国人)は威張ってますからね~
中国は世界第一と言う「中華思想」は古代から一向に変らない様です。
何が第一なのか?日本人には、正直理解し難い部分もあるんですが?(笑)
確かに、千年ほど前までは日本をリードする文化国家だった事は間違いないです。
#1101[2014/12/02 22:16]  sado jo  URL 

チベタんマスタをすぐさまググりました私…

大きい犬ですねぇ
こんなのに噛まれたら…
でもきっと、彼は強くなくても噛み付いたんでしょうね
#5397[2017/01/24 09:27]  rainshot  URL 

Re: rainshot様COありがとうございます^^

> チベタんマスタをすぐさまググりました私…
> 大きい犬ですねぇ

チベタンマスチフは、チベットの高地原産の大型牧羊犬です。
好戦的で気性が荒いので、狼などの野獣から羊の群れを守るのに最適だとか。
日本で闘犬に使われる土佐犬は、このチベタンマスチフの改良型にあたります。
飼い馴らすのは大変だそうですが、主人にはとっても忠実な犬だそうですよ。
怪力で大食いな犬だけに、餌代がハンパないでしょうけどね(笑)
#5399[2017/01/24 16:00]  sado jo  URL 














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