シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼ビーストハンター」
ビーストハンター 小説本編

ビーストハンター 第1話 狩猟免許と言う名の殺人許可証 (10)

ブタ小屋

「体売る事もできないし、それに見つかったら再犯は殺処分だろ…ゴミ拾いや掃除婦やりながら細々と食ってるよ」
「そうかぁ…そりゃぁ気の毒なこった。今時は犯罪やったら人生終りだもんな」
「まぁ、女子のブタ小屋の話だから、男子のブタ小屋までは知らないがね」
「う~ん、何かあるんかな~…いや、実はさっき沙羅さんと音羽さんの話をしててな」
「あんたっ!沙羅ちゃんに父親さんの話をしたんかい?幾ら何でもそりゃぁ惨すぎるだろう」
「スマン…つい口が滑っちまってな」
「あたいにとっちゃぁ、あの子は命の恩人だよ…泣かせたりしたら承知しないからね」
「あぁ、そうだったよな…危うくビーストとして始末されるところを沙羅さんに救われたんだってな」
「そうだよ…ダチが支払いを渋る男に暴行されてたから、あたいが棒っ切れで男の頭を殴ったんだ。そしたらそいつ死んじまいやがった。捕まって殺処分されるのを覚悟してたら、通り掛かって見てた沙羅ちゃんが正当防衛の証言をしてくれたのさ」
「それが縁で『男気がある』って沙羅さんに見込まれてイェーガーになったんだよな」
「あぁ、あんないい子はいないよ。あの子に命を助けてもらったお陰で、娼婦稼業から足を洗えたんだからね…あたしゃ、大好きだよ。抱きしめたいくらい好きさ」
「おぃおぃ、ウズメねえさんはそっちのケもあるんかい?お盛んなこった」
「女が女を好きになって何が悪いんだい!男だろうが女だろうが、好きな人は好きなのがあたしの性分さ」
「だよな…けど、音羽さんがビーストとして公安に射殺されたのも、ブタ小屋絡みの事件を捜査してる最中だったしな。何だか妙だ」
「ブタ小屋に首突っ込むのはやめときな。あそこは公安局の管轄だろ…あたいら警備員風情にゃぁ手は出せないよ」
「でも何か匂うんだよな~、ブタ小屋…まぁ、そりゃぁブタ小屋だから元々臭いには決まってるんだが」
「詮索してもどうにもならないよ…余計な事に首突っ込んだらロクな事になりゃぁしないよ」
「あぁ、そうだな…ありがとう。邪魔したな」
「あんたも女っ気が無いから余計な事を考えるんだよ。何ならあたしのダチを紹介してやろうか?」
「よせやい!姉さんの昔の同業者紹介されたら俺までビーストになっちまわぁ」
「それもそうだね…狩人の方が狩られる獲物になってたんじゃぁサマんなんないわよね」
 そう笑ってウズメは部屋を出て行くツクモを見送った。

 ツクモが階下に下りてみると、事務所には沙羅以外の人影はなかった。
「話はすんだの?」沙羅がそう尋ねて来た。
「あぁ…他の奴らはもう帰ったのか?」
「えぇ、報告書は明日みんなが揃ってから書くって」
「まぁ、吉野のヤツも報告書はゆっくりでいいって言ってたしな…そいじゃぁ俺も帰るわ」
「お疲れ様。気を付けて…一人で淋しいからってあんまりお酒飲んじゃだめよ」
「ありがとう…じゃ、お先に」
 父親のいない沙羅はいつもツクモの身体を気遣ってくれる。娘を亡くしたツクモもそんな沙羅を娘のように思っていた。
 音羽警備の事務所を出たツクモは、駐車場から車を出して雨にけむる街を家路に着いた。
 辺りはとっぷりと日も暮れて、ヘッドライトに照らされた町並みがどんよりと濁って浮かんでいた。

第1話「狩猟免許と言う名の殺人許可証」(完)

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~ Comment ~


こんばんは。
一章完ですね。先につながる、いろいろなキーワードが出てきたようですが。
どんな展開になっていくか、楽しみです。
今、このお話の続きがとても気になっております。

死は大切ですね。愛も大切ですが、愛だけで死の影がない物語はやはり軽いものになりがちですね。
両方が描けている作品がやっぱり最強ですかねえ。

ともかく、2章も、死についての考察も、楽しみにさせていただきます!
#1108[2014/12/05 01:24]  椿  URL 

Re: 椿様 COありがとうございます^^

ありがとうございます^^
第二話「東京租界に死す」も、タイトル通り、死の影が付いてまわるお話になっています。
その中で、新たなキャストが登場します。その人物が、暗く荒んだ人々に希望を与えるでしょう。
それは、誰もが人として持ち得るもので、勿論、椿さんもすでに持っていらっしゃいますよ。
つい忘れがちになる「そこにある小さな幸せ」は、人としてとても大切なものだと思います^^

「生と死」の間に介在するのが「愛」と言うものならば、愛はどちらにも傾く相対的な存在です。
文学は生と、死と、愛の物語の組み合わせで彩られている。と言っても過言ではないですね。
#1109[2014/12/05 01:54]  sado jo  URL 

こんばんは~

死は避けては通れない、そしてそれがいつ訪れるかも
誰にもわからない。
見えないカウントダウンが始まって
みんな、進んでいますものね。

ここ2週間内で友達が2人も入院続きで
驚いています。こんなことが実際あるの。と思ったので。

死は・・・考えたくないとは言えないし
もっとも身近なのかもしれないですね。

死とは何か。お言葉を楽しみにしております。
#1110[2014/12/05 01:55]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

人は産まれた瞬間から「死」に向かって歩み始めます。
あの不公平な神が、これだけは幾らお金を積んでもダメで、万人平等に作られた様です。
そして、おっしゃる通り、いつ「死」が訪れるのか?を隠してしまわれてます。
それだけに、生きている一日、一日は、人にとってとても貴重なものなんですね^^

重大な事ですので、じっくり考察してから載せます。少しばかりお時間を下さい^^
#1111[2014/12/05 02:18]  sado jo  URL 

こんにちは^^

そっちのケのある子に抱きしめられたことがある西條すみれです。
死、確かに一般的にはあまりいいイメージはないんですが
たまに前世の記憶を持つある意味時間が悠久な例外が現れるとはいえ
死があるからこそ限られた時間の中でどう過ごすか、相手にどう接するか
相手が死んでしまってから気付かされるなど「死」から学ぶことは多くあります。
そういう意味では「死」というテーマは好きですね。好きって言い方も変かな。
どこかの宗教では死神こそ絶対的な神と崇めているところもあるくらいだし。
#1112[2014/12/05 10:15]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様 COありがとうございます^^

「死」をテーマにすると、確実に地雷を踏んで、読者から嫌われますね(苦笑)
それでも、あえて「生と死」を描きたい自分は何なのだろうと思います。
産まれる時は選べないが、死は選べるのを良い事に、年間80万人の人が自殺してます。
日本は3万人で、世界ワースト第4位。交通事故の死者よりも遥かに多い数字です。
人間やめたい人が多いのはなぜでしょうか?日本はそんなに生き難い国なのかな?
#1113[2014/12/05 13:30]  sado jo  URL 

死の影…

自分がsado joさんの綴る物語が好きな理由はそこですね

ええ、雑感を読んで気付きました(汗)

そういえば、自分の小説も、ここ最近のものは死の影というか匂いというか、その手のものを感じさせるのが多いですね

初期は虚無感押しでしたが

1つのきっかけは、やはり3年前のあの地震ですかね
亡くなった方も大勢いる中で、なぜ自分は生き残ったのか?

これがファクターだと感じてます
#1114[2014/12/05 20:55]  blackout  URL 

死だけな平等で、誰にも、いやどんな動植物にも訪れるもの。
死ねばすべてが無に帰する。
名誉も金もすべて…。
そう思うと、何を手に入れても虚しいような気がしてきますね。
それでも生の意味を探る、そのテーマは書くに値すると思います。
#1115[2014/12/05 21:28]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: blackout様 COありがとうございます^^

ありがとうございます^^
blackoutさんも震災の体験者でしたか…自分も地震で家族を失いました。
一度「死」を目の当たりにすると、人にはず~っと死の影が付いてまわります。
経験した人で無いと分からない部分もあるでしょうが、自然と作品に現れますね^^
でも、「死」を忌み嫌う人が多いので、読者には避けて通られてしまいます(泣)
「死」って何なんだろう…それを描こうとすると、妙に力が入ってしまいます(笑)
#1116[2014/12/05 21:32]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

ありがとうございます^^
「死を思う」と言う事は「生を見つめる」事に繋がると思います。
自分はなぜ生きているのか?何の為に生きているのか?そこが出発点だと思います。
どんなに忌み嫌って逃げても、やがて否応無しに誰にもが「死」は訪れます。
(地震で)目の前で色んな人が死ぬのを見て、逃げてるだけではダメだ!と思いましたね。
尤も、映画カメラをペンに替えて描く様になったら、読者さんが怖がって逃げちゃいました(笑)
#1117[2014/12/05 21:49]  sado jo  URL 

第一話の完結お疲れ様でした~(*´ω`*)
次は第二話ですね!「東京租界に死す」
東京で何やら一波乱ありそうな題名ですが楽しみにしてますね~。

「生と死」は生まれてしまったからには、
一緒付いて回るものですもんね。
最終的に行き着くのは死ですし、それについて考えてみるのはいいですね^^
#1118[2014/12/06 23:35]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

第二話「東京租界に死す」 前半部はほぼ固まってますので、早い内に掲載します。
出来れば年内に完結して、来年から第三話に入りたいと思いますが、無理かな?(笑)

いつもブログを拝見してますが「死」について深く考える事は大事だと思います。
人は、元々死んでる(何も無い)状態から産まれ、再び「死」に還るのですからね^^
#1119[2014/12/07 01:39]  sado jo  URL 

悲惨が待ってても罪がなくならないのは…なぜなんでしょう
そう考えさせられて止みません
#5439[2017/01/31 19:08]  rainshot  URL 

Re: rainshot様COありがとうございます^^

> 悲惨が待ってても罪がなくならないのは…なぜなんでしょう
> そう考えさせられて止みません

人はおかしなもので、自分だけは捕まらないとか、自分だけは死なないとか、
誰でも己を特別扱いする傾向があるんですね…時にそれが災いの元になったりします。
DNAに元々備わっているんでしょう…でも、結婚相手を探すのには必要なんですね(笑)
#5441[2017/01/31 19:26]  sado jo  URL 














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