シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼ビーストハンター」
ビーストハンター 小説本編

ビーストハンター 第2話 東京租界に死す (2)

ジャンク山

 彼らが外に出ると、テロリストたちが表通りを二手に分かれて逃げて行くのが見えた。
「わてはネトゲと二人組みを追うわっ…もう一人の方はソルジャーに任せたでっ!」ヒジリが言った。
「あぁ!分かった」ジョーはすぐさま返事を返した。
 放たれたカイザーとサムソンが、たちまち一方に逃げた二人組のテロリストを追い掛け始めた。
「ヒュッ!」と言うジョーの口笛よりも早く、獲物を見つけたボルテも反対側に逃げた男を追って駆け出していた。

 三日前に起きた地下鉄爆破テロの犯人を追って東京租界にたどり着いたイェーガーは、そこにテロリストのアジトを見つけた。
 普通なら警視庁の機動隊の応援を要請するところだが、彼らはそんな回りくどい真似はしない。
 騒がれて逃げられる前に、即効奇襲を掛けて殺処分する…それがイェーガーたちの流儀だった。
 余計な手間を省いてくれる彼らは、危険ではあるが警察にとってはありがたい存在なのだ。
 ただ、その荒っぽさゆえに「民間人に危害を与えてはならない」などの法的縛りは掛けられていた。

 雨の降る表通りをひたすら逃げるテロリストは、時折、振り向きざまに追って来るボルテに拳銃を放った。
 だが、そんなものが当るはずもない…相手が引き金を引く前にすばっしこいボルテは数メートル先に跳んでいた。
 ボルテは並みの猟犬ではない…猟師に母親を殺された狼の子をジョーが引き取って育てた野生の狼犬であった。
 逃げ切れないと見たテロリストは、路地の中に入り込んで手当たり次第に置いてあるドラム缶やゴミ箱を転がした。
 さすがに追跡を妨害されてボルテの足は鈍った。だが、ジョーの追跡はそう簡単に振り切れるものではない。
 東京租界で育った彼にとってここは庭のようなものだ…断然、地の利はジョーにあった。
 ジョーとボルテに追われたテロリストは、ほうほうの態で東京租界に面する海辺の空き地に逃げ込んだ。
 通称「ジャンク山」と呼ばれるここには、方々に機械や廃材などがうず高く積み上げられたゴミの山がある。
 しかし、そこまでテロリストを追詰めたジョーとボルテは、急に男の姿を見失ってしまった。
「くそっ!どこへ行きやがった?」ジョーは辺りを見回して逃げた男を探した。
 ボルテは濡れた地面に鼻をこすりつけて、テロリストの足跡の臭いを探っていた。
 すると、そこへ近くでゴミの山を漁っていた母親連れらしい女の子が、ボルテに興味を示して近寄ってきた。
 一目見て難民だと分かる幼い赤毛の少女で、多分雨の中で母親と一緒にゴミ拾いをしていたのだろう。
 少女は恐れもせずにボルテの側に寄って手を差し出した…少女を見上げるボルテの目が急に柔和になった。
 牝犬は子供にやさしい。本能からか幼い生命の世話を焼こうとする…ボルテは少女の手をペロペロと舐め始めた。
 それを見たジョーは、一瞬ふっと張り詰めていた緊張の糸が解けた。
 子供がいないのに気付いてやってきた母親が、子供の手を掴んで連れて行こうとした。
 その時だった。突如ゴミ山の上から古タイヤやコンクリートの塊がドドッ!と転がり落ちてきたのだ。
「危ないっ!避けろボルテ!」ジョーが叫んだ。

~続く~

にほんブログ村 小説ブログへ

 
関連記事
スポンサーサイト
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼クロニクル ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼クロニクル ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←ビーストハンター 第2話 東京租界に死す (3)    →ビーストハンター 第2話 東京租界に死す (1)
*Edit TB(0) | CO(8)

~ Comment ~


大型ごみが普通に空地に捨ててあるのを見て
こんな事をするってみんんが捨てれば
それこそ山になるなと思ってしまいます(>。<;)
何故捨てるのかと思います。
警察官が家に来た時も、本物かわからないから
警察に電話確認してから扉を開けましたw

え~ゴミの山から古タイヤが?!気になりますヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*

#1159[2014/12/13 01:46]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 大型ごみが普通に空地に捨ててあるのを見て
> それこそ山になるなと思ってしまいます(>。<;)
> 何故捨てるのかと思います。
> 警察官が家に来た時も、本物かわからないから
> 警察に電話確認してから扉を開けましたw

廃棄物は産業社会が産んだ…言わば糞ですが、肥しにもならないですね><
女性の一人暮らし?は、それ位用心した方がいいと思います。
最近はおかしな人間が多いですから…人を疑って生きるのは悲しいですが><

> え~ゴミの山から古タイヤが?!気になりますヾ(。>?<。)ノ゙?*

何が起ったのでしょうか?段々、面白くなって来ますよ~♪
#1160[2014/12/13 12:52]  sado jo  URL 

動きのある描写いいですね。
腕があがってきてますね。
ボルテのピンチ、どうなるのでしょう。
#1161[2014/12/13 13:20]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 動きのある描写いいですね。
> 腕があがってきてますね。
> ボルテのピンチ、どうなるのでしょう。

ありがとうございます^^
ただ、殴り書きしているだけなので、お恥ずかしい限りですが…
ボルテとジョーと、子連れの親子、絶体絶命の危機ですね~!
#1162[2014/12/13 16:06]  sado jo  URL 

>手当たり次第に置いてあるドラム缶やゴミ箱を転がした
映画とかでよくありますよね!
少しでも追っての足を遅らせるお約束ですね(笑)

ゴミ山の上から古タイヤやコンクリートの塊が!
避けられないと大怪我したり、悪ければ死んでしまいますね(><)
ちゃんと無事に避けられればいいのですが……。
#1163[2014/12/13 23:31]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> >手当たり次第に置いてあるドラム缶やゴミ箱を転がした
> 映画とかでよくありますよね!
> 少しでも追っての足を遅らせるお約束ですね(笑)

そうですね^^逃亡マニュアル:その1の常套手段ですね~(笑)

> ゴミ山の上から古タイヤやコンクリートの塊が!
> 避けられないと大怪我したり、悪ければ死んでしまいますね(><)
> ちゃんと無事に避けられればいいのですが……。

上から物を落とすのは、奇襲マニュアル:その1でしょうか?
投石器> 爆弾> 今やミサイル。人間って同じ様な戦法を使ってますね(笑)
#1164[2014/12/14 00:26]  sado jo  URL 

この鉛色の空を思い浮かばせる感じいいですね。一章の最後に死の影の話をしてらっしゃいましたが、死の影を感じらるからヒトは愛を崇高し種を残すのだなぁ、と。しかし他の動物には自分の死を考えられないようですが、それっとヒトの勝手な思い込みなんじゃないかと。
猟犬の存在がそういうの描いてきそうですね〜(勝手な憶測)
#1645[2015/03/14 22:05]  青井るい  URL 

Re: 青井様 COありがとうございます^^

ありがとうございます^^ 「ビーストハンター」は、暗く荒れた近未来を表してます。
人が考える「死の影」って、実は「数字のマジック」に怯えてるんじゃないのかな?
…と思ったりします。数(年)を数えなきゃ、別段気にもならない事なんですよね。
年老いる…と言いますが、多くの作家は70歳を過ぎてから優れた作品を書いたりしてますね^^
#1648[2015/03/15 14:07]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←ビーストハンター 第2話 東京租界に死す (3)    →ビーストハンター 第2話 東京租界に死す (1)