シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(14)

城塞

「街道を遮断しない限り、ラッカやモスルから兵員や物資の補給が可能ですので、我々も手を焼いています。頻繁に出撃して来ては、クルドの町や村を襲ってますのでね」
「バーディヤを制圧すれば、兵站線を遮断して敵に大打撃を与えると共に、クルド地域への脅威も排除できる訳ですな」
 遠征隊副官の権田陸将は、我が意を得たりと言うような顔をしてそう言った。
「その通りです。今、我々はイラク軍と共に、米国を始めとする多国籍軍の支援を得て、モスルの奪還を計画している所です」
「なるほど。それならバーディヤの攻略はより重要ですな。兵站線を遮断してモスルの敵軍を孤立させる事ができる」
 権田は事もなげに言ったが、五十嵐作戦統括参謀はそれを遮るようにスクリーンの画像を入れ替えた。
「ところが、その邪魔になるのがこの城塞です。昨日やたがらすが撮って来たものですが、ご覧下さい」
 スクリーンには、イスラム蛮国によって完全に武装化された城塞の画像が映し出されていた。
「ご覧のように城塞の窓という窓にはロケット砲や狙撃兵が配置され、塔の上には対空機関砲が並べられています。また、石造りの堅固な城壁は、現代兵器をもってしても破壊する事が困難です」
「こりゃァ、陸戦部隊はうかつに近寄れませんなァ…狙い撃ちされてしまう」御子柴陸上作戦参謀は言った。
「そこで、巡航ミサイルと無人ゼロ戦隊をもって、ある程度の脅威を排除してから、空挺部隊による奇襲を掛け、城塞と街との間にある街道を遮断して、同時にザイード将軍にバーディヤの街を制圧し、城塞を包囲していただきたいのです」
「了解いたしました」ザイードはそう答えた
「しかし、敵は7~8000の大軍ですぞ。ペシュメルガはどれくらい動員できますか?」
「援軍を合わせて最大で4000と言った所でしょうか」
「う~ん、厳しいなァ」
「心配には及ばない。敵の戦力はすぐに半分以下になるよ」
 葛城は、不敵な笑みを浮かべながら遠征隊の幹部やザイードたちを見回して言った
(なんと言う自信だろう…何事か策略でもあるのだろうか?)居並ぶ一同はみなそう思った

 作戦会議を終えた中東遠征隊の幹部たちが全員解散すると、葛城は頭を下げてザイードに謝った。
「申し訳ありません。ザイード将軍。官僚と言う人種は頭が堅いもんで、どうかお気に障ったらお許し下さい」
「いや、いや、もう慣れてますよ。シリアやイラクの役人たちはもっとひどい。何事も強引に押し付けて来ますから」
「そうですか~…クルドの方々も弱い立場にあると言うのは、さぞお辛いでしょうなァ」
「私はこれで軍の方に戻りますが、若い二人は連絡係として閣下にお預けします。まァ、人質だと思って下さい」
「人質なんてとんでもない。大切なお客人として責任をもってお預かりさせていただきますよ」
「それでは、作戦決行の日時が決まりましたら、委細はオマルを通じてご連絡下さい」
「承知いたしました。日本語の堪能な部下を残していただいて感謝します。ところで…」
「ところで…何でしょうか?」
「まもなくラマダン(断食)の月に入りますが、あなた方も当然ラマダンの行をされるのですな」
「はァ、一応、最前線にいる者以外は…」
「宗教的に大事な行事だと言う事は充分存じ上げておりますが、今回は少しお控え願えませんでしょうかな」
 そう言ってザイードを見た葛城の目は、ギラギラとした光を放っていた。
(この男は何事か考えている?何をするつもりなのか?羊のように柔和だが、目は狼そのものだ)
 ザイードは、一瞬背筋に戦慄が走るのを覚えた。

~続く~

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~ Comment ~


こんにちは^^

自信を持って伝えるって言うのは
人を惹きつけちゃいますね。
信用もしてしまいますし(;*_*)
目が狼。目って瞼で覆った黒い粒?なのに、すぐに表情が表れる個所なのが
いつも不思議でなりませんw
断食の月って言うのは、実際に断食が実行されていたのですか?
#1693[2015/03/22 07:22]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 目が狼。目って瞼で覆った黒い粒?なのに、すぐに表情が表れる個所なのが
> いつも不思議でなりませんw

「目は口ほどにものを言い」…って、目は雄弁に人の思いを語りますね^^
「目は心の窓」とも…何かで口で半分、目で半分会話する部族を見た様な気します。

> 断食の月って言うのは、実際に断食が実行されていたのですか?

イスラム教徒は日中は飲食が禁じられるので、夜に一度にバカ食いするそうですよ。
お腹を壊しそうですね(笑)それって、果たして断食になるのかなァ?
#1694[2015/03/22 12:42]  sado jo  URL 

いかにして、敵の戦力を半分以下にしてみせるか…。
策士のアイデアを楽しみにしております。
#1695[2015/03/22 15:50]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> いかにして、敵の戦力を半分以下にしてみせるか…。
> 策士のアイデアを楽しみにしております。

実は米軍は、意外と人を殺さないで勝つ軍隊なんです。
事実、米軍か介入した地域紛争では、他国が介入した場合より圧倒的に死者が少ない。
それは、第一次大戦~ベトナム戦争まで、米軍が苦い経験をした「大量虐殺」を出来るだけ回避する思想に基づいています。
ヒントになるかどうか?…その戦略の一端を次回以降でご披露いたします^^
#1696[2015/03/22 17:09]  sado jo  URL 

敵の戦力はすぐに半分以下になる、ですか?
何かの兵器を使って始末を付けるのか、
或いは寝返りさせたりする奇策があるのか、
どんな展開になるのか楽しみにしてますね(´∀`)
#1697[2015/03/22 21:11]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 何かの兵器を使って始末を付けるのか、
> 或いは寝返りさせたりする奇策があるのか、
> どんな展開になるのか楽しみにしてますね(´∀`)

一応小説の方針として、非現実は抜きにして、リアルな戦闘を描こうと思ってます。
ゼロ戦の様な運動性能の高い無人機は、現在の日本の技術で充分製作が可能ですし、
勿論その気になれば、日本は「空母打撃群」を海上戦力の中核にする事も出来ます。
なので、葛城海将は近代戦で用いうるリアルな戦法を駆使するでしょう^^
#1698[2015/03/22 22:05]  sado jo  URL 














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