シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(16)

ナパーム弾

 ~焦土作戦~
 葛城がバーディヤの攻略に際して取った戦法は、一見無慈悲にさえ見えるナパーム弾による無差別爆撃だった。
 しかも、イスラム教徒にとって日中の飲食が禁じられるラマダン(断食)の行が終りかける夕方を狙って開始された。
 人々の疲労感が極限に達した頃を見計らったかのように、やっと水と食事に有り付けるはずの希望を挫くものだった。
 ラマダンと言う相手の弱点を突いた攻撃は、狡猾な狼のように見える…ザイードが葛城に感じ取った戦慄は的中した。
 だが葛城は、狼のように獲物を殺して食う事を目的としているのではなく、戦いに勝利する事を目的としていた。

 そもそも、戦闘の目的は敵を殺す事ではない。敵を撹乱し、足を引っ張り、行動不能に陥れて勝利を得る事である。
 もし、隣にいた仲間の兵士が撃たれて死んだら、彼はどうするだろうか?一旦その場を退き、体勢を立て直そうとする。
 だが、仲間が負傷した場合はどうするだろうか?何とか彼を助けようとする。つまり、彼は戦闘行為ができなくなるのだ。
「敵の戦力はすぐに半分以下になる」と、作戦会議で葛城が言ったのはまさにその事だった。
 案の定、バーディヤの敵兵は、負傷した仲間や住民の救助、街の消火活動に追われて戦闘どころではなくなった。
 最小限の犠牲で敵の足を引っ張り、多数を殺さずに最大の勝利を得る。それが葛城の取った無差別爆撃の真意だった。

 およそ将と言うものは、今日の千人の犠牲を恐れて、明日以降に1万人、いや、10万人の犠牲を出してはならない。

 故事にも ~兵は疾きを尊び 久しきを尊ばず(孫子)~ と、ある。

 その心は、戦は速やかに決着を付ける事が肝要で、だらだらと長引かせるべきではないと言う意味である。
 なぜなら、人の生きる目的は戦争をする事にあるのではない。生活を営み、種を継ぐ事にこそあるからだ。

 故に ~兵は不詳の器にして 君子の器に非ず(老子)~ と、言う。

 戦争は人の正常な生活を妨げ、人の本来の目的に反する行為である。ならば、戦争は速やかに終結させなければならない。
 一度、戦争が始まれば、そこは獣の論理が支配する世界となる。その論理に従って行動するのが軍人なのである。
 政治と戦争は背反する次元にあり、決してそれを混同してはならない。戦争を避けるのが国を治める者の努めなのだ。
 ところが、昨今の政治家の多くに、戦争を外交手段の一種のように考えているかの如き傾向が見られる。
 用いる必要もないのに軍隊を用い、緊急の必要に迫られているのに、軍隊をだらだらと用いて戦争を長引かせている。
 人自らが心から従うのは、力ではなく道理(正道)である。よって、道理によって国を治める君主の世は長く続く。
 その道理を力で破壊する者に対しては、速やかに兵を遣してこれを排除し、民の生活の安全を守るのが名君だと言える。
 兵は動乱が生じた際、これを平常の状態に戻すために使うのが正しい使い方で、野心や覇権のために使うべきではない。
 兵を用いる者は、この鉄則を忘れてはならない。でないと、我が身もろとも国を滅ぼしてしまう事になるからだ。
 愚者と共に滅ぼされる民にとってこれほど迷惑な事はない。その者は後世に悪人として長く語り継がれる事になる。

~続く~

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~ Comment ~


敵の戦力はすぐに半分以下になる、気になった戦法が明らかになり、溜飲が下がりました。
優れた策士ですね。
#1754[2015/04/01 20:04]  マウントエレファント  URL  [Edit]

「敵の戦力はすぐに半分以下になる」といったのはこの事だったんですね。
確かに負傷者の救助や消化で他に手が回らないでしょうし、
これでは戦闘するどころの話ではありませんもんねΣ(・ω・ノ)ノ
これが葛城の作戦だったんですね~。
#1756[2015/04/01 20:38]  ツバサ  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 敵の戦力はすぐに半分以下になる、気になった戦法が明らかになり、溜飲が下がりました。
> 優れた策士ですね。

敵を1発で殺すのと、怪我をさせるのとどちらが敵の戦力を弱らせるか?
実は、怪我人を増やして敵に手間を掛けさせ、軍の士気を削ぐ後者の方なんですね^^
わざと小口径の弾を使い、弱い爆弾が広範囲に散る様に仕込む…これは米軍の戦略です。
ロシア軍が介入したウクライナ紛争と、米軍が介入したイラク紛争を比較して、交戦地域の広さに比べ、米軍が出した死者が圧倒的に少ないのが解ります。
第一次大戦~ベトナム戦争を通じて、米軍の長い実戦経験から編み出された戦術です。
#1757[2015/04/01 20:46]  sado jo  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 「敵の戦力はすぐに半分以下になる」といったのはこの事だったんですね。
> 確かに負傷者の救助や消化で他に手が回らないでしょうし、
> これでは戦闘するどころの話ではありませんもんねΣ(・ω・ノ)ノ

近代戦で、核兵器の様な非人道的な殲滅戦を避けて、敵に勝つ方法が二つあります。
1)怪我人をどんどん増やして、運搬や治療に手間を取らせ、敵軍を機能不全に貶める。
2)エネルギーを含む敵の兵站線と、ライフラインを破壊して敵軍(国)を行動不能にする。
(1)は直接的な戦闘で効果的です (2)は敵国家や都市、軍事拠点に対して効果的です。
燃料無し、食料無し、医薬品無し、怪我人多し、これでは戦争出来ませんものね(笑)
#1758[2015/04/01 21:08]  sado jo  URL 














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