
次々と天下る落下傘部隊の降下を阻止しようと、丘の上にある城塞の敵兵はやっきになって機関銃や小銃を撃った
空挺隊員ほど軍隊で危険な職業は他にはない。まず飛行機から降下する際に、落下傘が100%開く保障はない。
さらに、空中を降下している間は身を守るすべが何一つなく、撃たれ放題に敵の集中砲火を浴びる事になる。
着地の際は、ビルの三階から飛び降りるのと同様の衝撃に見舞われ、しかもそこは敵の真っ只中になるのである。
街道に舞い降りて来た命知らずの空挺隊員たちも、断続的に狙い撃って来る敵の砲火を避けるのは大変だった。
が、上空から力強い援軍が舞い降りて来た。不気味な漆黒の胴体から、一条のサーチライトが敵の城塞に放たれた。
バリ!バリ!バリ!バリ!バリッ!
地上攻撃ヘリ「かるら」の対人用兵器、全自動7.62ミリ機銃が身を乗り出して空挺隊員を撃つ敵兵に襲い掛かった。
たちまち数人の敵兵が城壁の外に転落した。かるらの恐ろしさは、すずめばちミサイルや20ミリバルカン砲ばかりではない。
機体下部に装備された全方向旋廻7.62ミリ二連装対人機銃…それは敵兵を殺すためだけに開発された日本独自のものだった。
バイタルセンサーで人の生命反応を捉えて、目標を自動的に追尾し、相手が倒れるまで撃ち続ける悪魔のような兵器である。
一度狙われたが最期、死ぬまで逃れられないかるら*=その名の謂れとなったガルーダは毒蛇を喰らう霊鳥だと言われる。
* かるら=迦楼羅天は邪気を払う無病息災の守護神として、全国の主な神社や仏閣に安置されています。
まさに日暮れのバーディヤの空に舞う飢えた10機の霊鳥の群れが、鎌首をもたげて抵抗する毒蛇を喰らい始めた。
街道に降下した宇賀多一左率いる第一空挺団は、かるらの支援の元に手薄な敵の守備隊を次々と掃討して行った。
空挺部隊が完全に街道を制圧し終えると、バーディヤの郊外に待機していたザイード将軍率いるクルド軍が進撃を開始した。
それを見て慌てたイスラム蛮国兵たちは、燃える街の消火活動もそこそこに、クルド軍を迎え撃つために街の外に出て来た。
ド!ド!ド!ド!ド!ドッ! 兵士を乗せて街から出撃したジープとトラックが、たちまち炎を噴き上げて横転した。
かるらの機体前部に装備された20ミリバルカン砲が、唸りを上げながら猛烈な銃弾の嵐を敵に浴びせかけたのだ。
それを避けながら街の周りに散開して防戦する敵に、今度は突撃して来たザイード率いるクルド軍が攻撃を開始した。
日が落ちたとは言え、ナパーム弾の攻撃を受けて燃える街の炎に照らされた周囲は、両軍が入り乱れる修羅場となった。
かるらの援護を受けて、勢いに乗るクルド軍に押されたイスラム蛮国兵は、ジリジリ後退してとうとう市街戦に突入した。
「イスラム国」と戦うクルド人 ペシュメルガの女性部隊
国を持たない民「クルド人」の女性達は、幼い頃から身を守る為に戦闘訓練をしているそうです。
しかし、市街戦となると、さすがのかるらにもちょっと厄介な問題が生じて来る。
「おいっ!ペシュメルガの連中や民間人を撃つなよ~」かるらの機長が言った。
「分かってます。分かってますって…銃を持ってる敵だけですね」射撃手はそう答えた。
かるらの射撃手は、暴れ馬を抑えるのにやっきになった。放って置けば人を見つけ次第いくらでも撃ってしまう。
電子システムを内臓し、正確な命中率を誇る現代兵器は、その反面、誤射、誤爆と言う致命的な欠陥を持っている。
機械は敵味方、民間人を識別しないので、その力を解放した途端に際限のない徹底的な殺戮を行なってしまうのだ。
アメリカ軍との共同作戦を行なった経験のあるザイードは、そんなかるらに的確な指示を出してその攻撃を補佐した。
どこに敵が潜んでいるか、どの建物を攻撃すればよいか、打ち合わせた通りに信号弾を使って合図を送った。
~続く~

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