シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

随想/論文集

顔の無いアメリカ人 ~ホンネで語る民族紛争とアメリカ(3)~

自由の女神

多くのアメリカ人は、民族抗争の本質を理解出来ていません。マジョリティから、マイノリティに転落する恐怖が無いからです。
ウクライナのロシア人は、ある日多数派から少数派に転落しました。だからクリミアの様にロシアへ帰属する闘争をしています。
世界の他の地域で起きている民族紛争も、多かれ少なかれ、国や地域の中で多数派になりたいが為の闘争に他なりません。
「何でこいつらは争ってるんだろう?どの民族も平等にすれば済む事ではないか」アメリカ人ならあっさりとそう言うでしょう。
それが出来れば、ロシアを取り巻く諸問題も、中国内外の問題も一挙に解決し、両国はアメリカと肩を並べる国家になれます。
しかし、それを行なおうとすれば、指導者は支持するマジョリティ集団に引きずり下ろされ、政権は瓦解してしまうでしょう。
考えてみて下さい。日本人が自らの権益を捨てて、在日韓国人や中国人を平等に扱おうとする指導者を支持すると思いますか?
かくして、個人個人はアメリカ型グローバリズムに惹かれながら、一方で集団的ナショナリズムの方がそれを許さないのです。
それが、世界の民族国家に住まうマジョリティ集団の人々の、何ともじっれたい矛盾した心理であります。

こうして考えて見ると、世界中で頻発する煩わしい民族間の諸問題を解決する、最もベターな方法が見えて来ると思います。
それは…つべこべ言わずに、あっさりとアメリカに飲まれてしまう事です。そうすればほとんどの問題は解決出来ます。
マイノリティにとってはありがたい話です。多数派民族の差別から解放され、肩身の狭い思いをして暮らす事も無くなります。。
但し、マジョリティにとっては嫌かも知れません、民族の権益を手放す事になり、集団としての拠り所を失ってしまうからです。
でも、民族の権益は手放さねばなりませんが、宗教や文化(ココが最も大事な所ですが)個人の権益は捨てる必要はありません。
どころか、アメリカでは個人の権益こそが最も重要なものです。それさえ確保出来れば贅沢を言うべきでは無いと思います。
代りに、民族抗争の煩わしさから解放され、自由に経済活動なり、研究なり、宗教なり、好きな事に専念出来ます。
パクスアメリカーナの恩恵を被れるのです。民族の固執を捨てるだけで自由が手に入る。願ったり叶ったりでは無いでしょうか。

<全ての道はアメリカに通ず…が故のジレンマ>
最期に、ローマ帝国の滅亡の要因を解き明かす事によって、アメリカが抱えているジレンマを述べたいと思います。
誰も滅ぼせなかったローマ帝国は、他の国の様に戦争に敗れて滅んだのでは無く、その滅亡は意外な形で訪れました。
長い間、ヨーロッパの辺境で暮らしていたゲルマン民族が、フン族に圧迫された事によって内部抗争を始めたのです。
この民族抗争のあおりを食って押し出されたマイノリティ集団が、徐々にローマ領内に流入して来る様になりました。
いわゆる民族紛争による難民流出です…ローマは大勢のゲルマン難民を受け入れますが、やがて限界を来たしてしまいます。
後から後から、大挙して押し寄せるゲルマン難民の為、ついに堤防は決壊し、ローマは混乱の中で崩壊してしまいました。
「全ての道はローマに通ず」とさえ讃えられ、民族差別の無い、移民に寛容な豊かな大国だったローマならでわの悲劇でした。
アメリカが滅びるとすれば、この可能性が一番高いものです。元難民国家であったアメリカ自身が一番それを知っています。
仮に、世界各地で起きている民族紛争によって押し出された難民が、大挙してアメリカにやって来たと想像してみて下さい。
そこで、皮肉にも民族問題を克服したアメリカが、世界の民族紛争に関って、その拡大を防ぐハメになってしまったのです。
特に、ロシアと中国の巨大マジョリティ集団に、国内のマイノリティや周辺民族を圧迫しない様、干渉しなければなりません。
両大国の国内、或いは周辺で事が起きると、膨大な数の難民があふれ出して、ヨーロッパやアメリカに殺到してしまうからです。
ところが、ロシアと中国のマジョリティ集団は、やれ人権だ、民主主義だとうるさく押し付けて来るアメリカを嫌う訳なのです。
「やれやれ、人の気も知らないで、自分の利権だけを求める中露のマジョリティはいい気なもんだ」と、アメリカ人は思います。
マイノリティにマジョリティの論理を押し付けるロシア人と中国人に、アメリカの論理を押し付けなければならないアメリカ人の立場は、誠にもって皮肉なものだと思います。おそらく中露共、今後もアメリカの世界経営には協力しないだろうと思えます。
さらにもう一つ、予防処置として、辺境にいながらでもアメリカの恩恵を被れる様な国家を各地に作って置く必要があります。
つまり、ある程度、人権や平等の確保された安定した民主主義国を作り、そこに多くの人々を留まらせて置く必要があるのです。
その数少ない成功例が日本であったり、一部の南米諸国であったりします。実にアメリカは大変困難な事業をやっている訳です。

1853年、アジアの辺境にある民族国家だった日本はアメリカと出会い、戦争もしながら今日まで付合いを続けて来ました。
日本も、或いは中国やロシアも、マジョリティ集団が幅を利かす民族色の強い地域国家であり、到底アメリカにはなれません。
民族を超えて個人から成り立つ国家…生まれながらにしてアメリカは世界国家の要素を備えていた様に思えます。
この様な世界国家は歴史的にも稀にしか現れず、私達はもしかしたらとんでも無い歴史の立会人になっているかも知れません。
ヨーロッパ人の移民から始まったアメリカが、かってのローマの様な世界国家であったとしても、何ら不思議では無いのです。
そう思ってみると、海を征くアメリカの艦隊が、かって地中海を制覇したローマの軍船に見えて来たりもします。
もし、そうなら今後数世紀、アメリカの優位は動かないでしょう。寿命が許すならその行く末を見てみたいものです。
後に、自分達のせいでローマを潰したゲルマン人達はそれを後悔し、皇帝の代りに法皇を立ててローマの再建を図りました。
それが、現在のローマ教会を中心とするヨーロッパの基となりました。何とヨーロッパは今でもローマなのです。
従って、初期の国王達は、ローマ法皇から各地の統治を委託された知事(行政長官)の様な存在だった訳です。
果たして、アメリカは世界を纏める新時代のローマでしょうか?アメリカにロシア人や中国人の大統領は出るのでしょうか?
長い歴史から考えれば必ず出るでしょう。そして、それは或いは、プーチン氏や習氏の子孫であったりするかも知れません。

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<アメリカにとって危機的状況だった共産圏崩壊>
おかしな話ですが、1986年~1991年にかけてのソ連を中心とする共産圏崩壊は、実はアメリカにとって重大な危機でした。
まかり間違えば、崩壊した共産圏から大量の難民が、ヨーロッパやアメリカに押し寄せかねない一大事だったのです。
表向きは共産主義の消滅を歓迎しながら、裏では懸命に仇敵だった相手の国を支えていた事が外交文書からも窺えます。
アメリカが最も恐れるのは、敵国のミサイルでは無く、民族紛争などによって故国を追われた膨大な数の難民なのです。

仮に、中国周辺で何か起きた場合、もしくは中国が意図的に日本を潰す為に難民流出を企んだ場合、日本は対処出来ません。
中国は大金を使って海軍を増強せずとも、2~300万の難民を流出させれば、日本を完全にギブアップさせる事が可能です。
自衛隊は難民を排除する為に発砲出来ない。日本は難民を食べさせなきゃならない。ある意味戦争よりも恐ろしいです(笑))
 
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アメリカの大統領に中国人がなる日がくるかもしれませんね。
そうなったら中国びいきの国になるのでしょうか。
#1907[2015/05/03 19:01]  マウントエレファント  URL  [Edit]

シベリアとアラスカが陸続きだったなら、崩壊した共産圏の難民たちは、ほぼ確実にアメリカにやってきたでしょうね

同じことが日本にも言えたでしょうね

これは、ある意味神からのメッセージかもしれませんね

アメリカと日本には、国としてまだやるべきことがあるっていう
#1908[2015/05/03 20:21]  blackout  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> アメリカの大統領に中国人がなる日がくるかもしれませんね。
> そうなったら中国びいきの国になるのでしょうか。

多分、出身民族を優遇する事は、金輪際無いと思います。
スワヒリ系出身のオバマは、アフリカのテロに冷たいし、アイリッシュ系のレーガンは、アイルランド紛争に冷たかった。ゲルマン系のルーズベルトは、同じ民族と戦争すらしました。それがアメリカ大統領です。
アメリカンマジックとでも言いますか?みんなアメリカ人に同化するんですね。
ちなみに、ローマ皇帝・セウェルスは、出身民族を酷い目に遭わせました(笑)
#1909[2015/05/03 22:22]  sado jo  URL 

Re: blackout様 COありがとうございます^^

> シベリアとアラスカが陸続きだったなら、崩壊した共産圏の難民たちは、ほぼ確実にアメリカにやってきたでしょうね

あの時期、米英はロシアに相当な援助をしましたね。クリミアが買える位…多分、民間企業だったら、クリミアやるから金返せになるでしょう(笑)
ドイツなどは、東ドイツへの援助が祟って、経済が随分冷え込みましたからね~><
お陰で、西側経済は低空飛行になり、その隙に日本はバブルで大儲けしました(笑)
ただ、アメリカは有能な人材を共産圏から獲得したので、長い目で見れば得しました。
移住した共産圏の有力者達は、今欧米において、様々な分野で活躍しています。
#1910[2015/05/03 22:46]  sado jo  URL 

難民も来たら受け入れざるを得ないですが、
それが大量に際限なく来るとなると国家も危なくなりますもんね。
手を差し伸べる優しさはというのは人にとっての美徳だと思いますが、
国家自体を危険に曝す行為にも繋がりかねないというのが悲しいですね(´;ω;`)
#1911[2015/05/03 23:52]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 難民も来たら受け入れざるを得ないですが、
> それが大量に際限なく来るとなると国家も危なくなりますもんね。

昔「日本沈没」と言う映画で、国土を失った一億の日本難民が世界に押し寄せました。
仮に、その半分でも世界の秩序は崩壊し、パニック状態になる…世界は脆いものです。
もし、中国やロシアの様な大国が崩壊したら、難民を排除しようにもしようが無いです。
数億の中国難民が日本に押し寄せた場合、日本は戦争しなくても確実に破滅いたします。
なので、嫌でも政治経済が安定する様に図らねばなりません。これは韓国も同じ事です。
今ヨーロッパは、アラブとアフリカの紛争による大量の難民流入で苦しんでいる状態です。
欧米が、地域を混乱させる不穏分子を空爆する訳が良くお分かりいただけるかと思います。
#1912[2015/05/04 00:46]  sado jo  URL 

日本人は日本人に固執するところはありますからね。
まあ、言葉が喋れれば壁がなくなるのも日本ならでは風習でしょうが。
民族紛争がなくなる日があれば、戦争はなくなると思いますが。
それがなくならないから、戦うことが人間という生き物ということなんでしょう。

難民問題は難しいですよね。
冷静に考えて、人口問題から考えれば受け入れてもいいですけど。
私としては感情的には難民受け入れは嫌いです。

#1930[2015/05/08 18:30]  LandM  URL 

Re: LandM様 COありがとうございます^^

> 日本人は日本人に固執するところはありますからね。
> 民族紛争がなくなる日があれば、戦争はなくなると思いますが。
> それがなくならないから、戦うことが人間という生き物ということなんでしょう。

実は、日本で民族と言う思想が生まれたのは明治維新以降の事でした。
それは、陸続きで常に民族紛争を繰り返して来た欧州・中東の考え方の模写です。
なぜ彼らが民族を重んじるのか?…それは旧約聖書と同じ原罪思想が元になってる
と思われます。一に奴隷制。二に外敵からの安全保障。三に権力構造が原因ですね。
不思議な事に同じ陸続きでも、原罪思想の無い中国・朝鮮には民族思想が無かった。
(この件については、後ほど随筆を掲載いたします)
#1931[2015/05/08 20:41]  sado jo  URL 














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