
彼らはおにぎりを左手に持ってパクつきながら、右手でジョイスティックを操って、敵を撃ち殺していた。
モニターの向こう側では、生身の人間が死んでいるのだが、彼らには人の命を奪っていると言う感覚はないようだった。
もしやこれはゲーム?…彼らは、孫と一緒によく遊んだモンスター狩りと同じ感覚で戦争をしてるのではないだろうか?
そうだとしたら、互いのプライドを賭けて命のやり取りをする戦争はどこへ行ってしまったのだろうか?
かっての日本海軍の男たちは、戦いに敗れて沈んで行く敵の軍艦に向かって、挙手の礼をしながらそれを見送った。
大空を舞うゼロ戦のパイロットたちも、自分が撃墜した敵機が落ちて行くのを見ると、敬礼を捧げたと言う。
そこには命のやり取りをした相手に対する尊敬の念があり、死んで行く敵兵に哀悼の意を表す人間らしい感覚があった。
ところが彼らに、そんな人間らしい感情は感じられない。どころか、戦争と言うゲームを楽しんでいるようにさえ見える。
もはや、これは戦争とは言えないのではなかろうか?それとも、自分が戦争のあり方を変えてしまったのだろうか?
いいや、誰がやっても近代戦は似たり寄ったりになるだろう。そんな事を考えている自分は古い軍人なのだろうか?
戦う相手に対する思いの希薄さ…生死の感覚すらない戦争…葛城の胸中には、言いようのない喪失感が込み上げて来た。
ふと気が付くと、戦争に勝つために彼らを採用し、そんな戦争の指揮を執っている自分自身がそこにいた。
葛城は何とも言えない無力感に襲われた。時代と言う大きな波の中に飲み込まれて行く小さな自分を感じた。
「司令どうかされましたか?ご気分でも?」
棒立ちになったまま無人機オペレーターを見つめている葛城を気遣って、広瀬二左が声を掛けた。
「いや何でもない…敵は寝かせずに攻め立て、こちらの隊員たちには交代で仮眠を取らせてやってくれ」
「はい、了解いたしました。お心遣いありがとうございます」
「では、しっかり頼んだよ。広瀬二左」
そういい残して、葛城はあまぎの無人機管制室を後にした
(人類はもう戦争をするべき段階ではないのかも知れない。何だかそんな時代が訪れているような気がする)
葛城が抱いた茫漠とした不安は、彼の思いに反して、後の未来になって現実のものとなった。
厳しい法で管理された統制社会ができ、人は次第に社会の一部として組み込まれ、人命は軽視されるようになった。
そうして、為政者たちは社会の害になるテロリストや犯罪者の人権を奪うために「ビースト法」を作り上げた。
社会の治安を守るために、民間警備会社に武装をさせ、体制を脅かす者たちを有無を言わさず処分するようになった。
思えば、この時代から暗い未来への兆しは現れていた。だが人はそれを知らなかったし、知ろうともしなかった。
時代は大きなうねりとなって人々を飲み込んで行く。人はいつの間にかその流れの中に身を委ねているものだ。
葛城でさえ、無人機を戦場に投入して帰趨を決するのは時代の要請だと信じ、それを疑いさえもしなかった。
命を持たぬ冷たいマシンで、命ある人間の血を流す…それが将来、人の心に何を齎すのか?深く考えもしなかった。
いつしか人の命は虫の羽根のように軽くなった。人々がそれに気付いた時は、もうすでに遅かったのだった。
~続く~

<戦闘用ライブモニターはなぜ白黒なのか?>
皆さんは、米軍の無人機や攻撃ヘリなどのモニターが、全てモノクロになっているのに気付かれているかと思います。
推測するに、今の時代ならカラー映像も可能なはずなのですが、カラーにした場合、戦闘員にどんな影響が出るのか?
当然、撃った敵の身体から血が吹き出し、ミサイルで肉片が吹き飛ぶ生々しい有様をカラーで見る事になる訳ですよね。
戦争とは言え、ショックで気分が悪くなる。誰もマトモに見たく無い…そこで、意図的に白黒にしているものと考えられます。
米軍攻撃ヘリ AH-64 アパッチのモニターで見る瞬殺映像
皆さんは、米軍の無人機や攻撃ヘリなどのモニターが、全てモノクロになっているのに気付かれているかと思います。
推測するに、今の時代ならカラー映像も可能なはずなのですが、カラーにした場合、戦闘員にどんな影響が出るのか?
当然、撃った敵の身体から血が吹き出し、ミサイルで肉片が吹き飛ぶ生々しい有様をカラーで見る事になる訳ですよね。
戦争とは言え、ショックで気分が悪くなる。誰もマトモに見たく無い…そこで、意図的に白黒にしているものと考えられます。
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