シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

未分類

砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(22)

敬礼

 彼らはおにぎりを左手に持ってパクつきながら、右手でジョイスティックを操って、敵を撃ち殺していた。
 モニターの向こう側では、生身の人間が死んでいるのだが、彼らには人の命を奪っていると言う感覚はないようだった。
 もしやこれはゲーム?…彼らは、孫と一緒によく遊んだモンスター狩りと同じ感覚で戦争をしてるのではないだろうか?
 そうだとしたら、互いのプライドを賭けて命のやり取りをする戦争はどこへ行ってしまったのだろうか?
 かっての日本海軍の男たちは、戦いに敗れて沈んで行く敵の軍艦に向かって、挙手の礼をしながらそれを見送った。
 大空を舞うゼロ戦のパイロットたちも、自分が撃墜した敵機が落ちて行くのを見ると、敬礼を捧げたと言う。
 そこには命のやり取りをした相手に対する尊敬の念があり、死んで行く敵兵に哀悼の意を表す人間らしい感覚があった。
 ところが彼らに、そんな人間らしい感情は感じられない。どころか、戦争と言うゲームを楽しんでいるようにさえ見える。
 もはや、これは戦争とは言えないのではなかろうか?それとも、自分が戦争のあり方を変えてしまったのだろうか?
 いいや、誰がやっても近代戦は似たり寄ったりになるだろう。そんな事を考えている自分は古い軍人なのだろうか?
 戦う相手に対する思いの希薄さ…生死の感覚すらない戦争…葛城の胸中には、言いようのない喪失感が込み上げて来た。
 ふと気が付くと、戦争に勝つために彼らを採用し、そんな戦争の指揮を執っている自分自身がそこにいた。
 葛城は何とも言えない無力感に襲われた。時代と言う大きな波の中に飲み込まれて行く小さな自分を感じた。

「司令どうかされましたか?ご気分でも?」
 棒立ちになったまま無人機オペレーターを見つめている葛城を気遣って、広瀬二左が声を掛けた。
「いや何でもない…敵は寝かせずに攻め立て、こちらの隊員たちには交代で仮眠を取らせてやってくれ」
「はい、了解いたしました。お心遣いありがとうございます」
「では、しっかり頼んだよ。広瀬二左」
 そういい残して、葛城はあまぎの無人機管制室を後にした
(人類はもう戦争をするべき段階ではないのかも知れない。何だかそんな時代が訪れているような気がする)

 葛城が抱いた茫漠とした不安は、彼の思いに反して、後の未来になって現実のものとなった。
 厳しい法で管理された統制社会ができ、人は次第に社会の一部として組み込まれ、人命は軽視されるようになった。
 そうして、為政者たちは社会の害になるテロリストや犯罪者の人権を奪うために「ビースト法」を作り上げた。
 社会の治安を守るために、民間警備会社に武装をさせ、体制を脅かす者たちを有無を言わさず処分するようになった。
 思えば、この時代から暗い未来への兆しは現れていた。だが人はそれを知らなかったし、知ろうともしなかった。
 時代は大きなうねりとなって人々を飲み込んで行く。人はいつの間にかその流れの中に身を委ねているものだ。
 葛城でさえ、無人機を戦場に投入して帰趨を決するのは時代の要請だと信じ、それを疑いさえもしなかった。
 命を持たぬ冷たいマシンで、命ある人間の血を流す…それが将来、人の心に何を齎すのか?深く考えもしなかった。
 いつしか人の命は虫の羽根のように軽くなった。人々がそれに気付いた時は、もうすでに遅かったのだった。

~続く~

にほんブログ村 小説ブログへ

 


<戦闘用ライブモニターはなぜ白黒なのか?>
皆さんは、米軍の無人機や攻撃ヘリなどのモニターが、全てモノクロになっているのに気付かれているかと思います。
推測するに、今の時代ならカラー映像も可能なはずなのですが、カラーにした場合、戦闘員にどんな影響が出るのか?
当然、撃った敵の身体から血が吹き出し、ミサイルで肉片が吹き飛ぶ生々しい有様をカラーで見る事になる訳ですよね。
戦争とは言え、ショックで気分が悪くなる。誰もマトモに見たく無い…そこで、意図的に白黒にしているものと考えられます。


米軍攻撃ヘリ AH-64 アパッチのモニターで見る瞬殺映像
 
関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼地球年代記 ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(23)    →顔の無いアメリカ人 ~ホンネで語る民族紛争とアメリカ(3)~
*Edit TB(0) | CO(8)

~ Comment ~


こんにちは^^

友達が、車の免許を取りに行く話を母にしたら、
今の時代は、運転ゲームがあるから、
良かったなって言うんです(>。<;)
いや、ゲームで運転するのとは違うよって
伝えました(☍﹏⁰)。

確かに、この映像を見てみると、的を相手に合わせ
打つなんて、ゲームの感覚が、
わたしでさえしました。
動くのが生きた人なのに。。。。これがカラーなら見れないですね。
#1913[2015/05/05 06:48]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> 確かに、この映像を見てみると、的を相手に合わせ
> 打つなんて、ゲームの感覚が、わたしでさえしました。
> 動くのが生きた人なのに。。。。これがカラーなら見れないですね。

ゲーム感覚で敵が殺せる…と、言うのが近代兵器の恐ろしさです!
それに馴染んでしまうと、命の感覚が無くなる(敵はゲームのモンスターと同じ)
動画の中で、戦闘員が敵を撃ちながら「ヒャッホー♪」とはしゃいでましたね~><
帰国してから、平気で銃を乱射したり、人を殺したりするアメリカの病根になってます。
#1914[2015/05/05 12:34]  sado jo  URL 

完結おめでとうございます。
無人ゼロ戦の活躍を小気味よいと思っておりましたが、確かに無人機による相手を生きた人間と思わない殺戮は恐ろしいですね。

こうしてビーストハンターの時代につながるんですね。
人を人とは思わない気持ちは恐ろしいですね……。
#1915[2015/05/05 15:22]  椿  URL 

Re: 椿様 COありがとうございます^^

> 完結おめでとうございます。
> 無人ゼロ戦の活躍を小気味よいと思っておりましたが、確かに無人機による相手を生きた人間と思わない殺戮は恐ろしいですね。
> 人を人とは思わない気持ちは恐ろしいですね……。

いえいえ、まだ第一部が終っただけで、自衛隊はテロリストの本拠地まで攻め込みますよ。
最近のアニメは人間を甲と乙の二つに分ける作品が多いです…つまり人間の分断差別です。
世界的な民族主義(ナショナリズム)の影響を受けてる様に思いますが、疑問に思えますね?
戦争のハードルがドローンなどの無人兵器によって低く(容易に)なる時代がすぐそこまで来ています…「自分達は他の者とは違う!」と言う思想で育った子供達が、将来何をするのか?大人は深く考えていません。
21世紀の中盤頃には、20世紀に起きたのと同じ事が繰り返されると断言します(敢て予言!)
#1916[2015/05/05 16:54]  sado jo  URL 

確かにカラーだと生々しくって、罪悪感を持ってしまいますよね。
それで白黒なんですか。
それほど戦争とはむごいということですね。
#1917[2015/05/05 19:55]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 確かにカラーだと生々しくって、罪悪感を持ってしまいますよね。
> それで白黒なんですか。それほど戦争とはむごいということですね。

私は父が猟師だったので、動物の血は何度も見ましたが、さすがに震災の時に、
モロに血だらけの人を見た時はショックでした。今でも目に焼きついています。
肉が裂けて…さすがにしばらく肉が食べられませんでしたね~><
祖母は、空襲で人の死体がゴロゴロ転がってる中を、必死で逃げ回ったそうです。
戦争とは惨たらしいものですよ。人間が行なう最大の罪悪ですね。
#1918[2015/05/05 20:19]  sado jo  URL 

目の前にいる、或いは近くにいる敵を殺すから、
戦争の行為とはいえ、敵に敬意すら持てた時代もありましたが、
モニター越しに見る敵に敬意を表せるかといわれたら難しいですもんね(´・ω・`;)
殺すという目的は同じでも、手段によっては人命を奪うというよりも、
ゲームの様にただの敵キャラクターを倒していると、
認識してしまっても不思議ではないですしね。
#1919[2015/05/05 20:20]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> ゲームの様にただの敵キャラクターを倒していると、
> 認識してしまっても不思議ではないですしね。

「バーチャル感覚で戦争が行なえる」と言う事は、戦争をやりやすくしてしまいます。
もう少ししたら「諸島」や「ウクライナ」上空でドローン戦を戦う事になるかも知れない。
でも、その下では生身の人間が死ぬんですよね…戦闘員はその様子をモニターで見るだけ。
現に中東では、そんな戦争が日常化してます。戦争そのものが当たり前になる時代かな?
もう、戦争はSFアニメやゲームの領域に突入しつつあります。それでいいのかなァ~><
#1921[2015/05/05 21:50]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(23)    →顔の無いアメリカ人 ~ホンネで語る民族紛争とアメリカ(3)~