シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

死とは何か?

アニメ「プラスティック・メモリーズ」に見る死への想い

アイラ

「ギフティア」と言う心を持つアンドロイドの寿命は約九年(81920時間)。それを過ぎると人格も記憶も失われてしまいます。
人間で言うと死ぬ事になる訳です。人は自分の死の時期を知ったら、どう振舞い、どう生きればいいのでしょうか?

進学に失敗した落ちこぼれの青年「水柿ツカサ」は、親のコネを頼って、ギフティアを製造・管理する「SAI社」に入社します。
彼が配属されたのは、耐用年数期限の迫るギフティアを所有者から回収する「ターミナルサービス課」と言う窓際の部署でした。
しかもその業務は、長年一緒に暮らして来た所有者とギフティアとの「思い出を引き裂く」と言う辛い仕事に他なりませんでした。
ツカサは、第一線から外されてお茶汲みをしていた少女型ギフティアのアイラとペアを組み、一緒に業務を行なう事になります。
ところが、彼女は感情を表に表さず、事務的な口調で必要な事以外は話さず、家の中でも専用ポットの中でじっとしているのです。
仕事でのミスが多いので挫けているのか?と思ったツカサは、懸命にアイラを慰め、彼女と仲良くなろうと努力するのですが…
実は、ツカサの気遣いは、アイラにとってまったく邪魔になるものでした。

アイラがなぜ現場の第一線から外され、お茶汲みの雑用に回されたのか?なぜそれに甘んじていたのか?
第一話にヒントがあります…家族として共に長く暮らして来た所有者とギフティアの別れは、涙を誘うものがあるからです。
それはアイラ自身の身にも同様な…或いは、回収業務に携わる中で、相当に辛い出来事があったのでは無いかと思うのです?
アイラは、時折誰もいない場所で涙を流し、ぼんやりと遠くを眺めています。実はアイラの寿命は後2000時間しか無いのです。
ツカサはその事をまったく知りませんが、アイラ自身は自分の耐用年数期限が刻々と近づいているのを知っているのです。

思わず、そんなアイラの気持ちが分かってしまう自分自身は、一体何なのだろうとつくづく考えてしまいます。
「死」と言うもの自体は、さほど恐ろしいものでは無いだろうと思えます。死は誰にでもいつかは訪れることわりです。
むしろ恐ろしいのは、愛する人や、親しい人との思い出が、ある日完全に断ち切られ、永遠に消えてしまう事なのです。
自分が死に直面した時、愛する人や、親しい人と永遠に別れなければならない苦しみ…その方がよっぽど辛い様に思えます。
だからアイラは、誰も愛さず、誰との思い出も作る事無く、ただの機械として消えてゆきたいのではないのでしょうか?
天災により、突然に愛する人との永遠の別れを体験した私には、アイラの気持ちが痛いほど分かってしまうのです。

身を裂かれる様な苦しみを体験した私は、それ以降、人との深い関りを避け、出来るだけ思い出を作らない様に生きて来ました。
なので、たまたま付き合っていた女性に「あなたは誰も愛していない」と、本心を見抜かれて狼狽した事さえありました。
利己主義ではありません。自らが経験した死の別れの様な惨い苦しみは、自分よりも愛する人の方を深く傷付けてしまいます。
死ぬ時に、体の苦しみと別れの苦しみを同時に背負う自身もですが、残される側の苦しみを思うとどうしてもそれを避けたい。
多分、誰からも最初からそこにいなかったかの様に思われて、静かに消えてゆく方が、自分も周りも楽だろうと思うのです。
なのに「プラスティック・メモリーズ」に、そんな心の内をえぐり出されて、途方に暮れてしまっている自分がいます。
後2000時間しか生きられないアイラ…そんな事情も知らずに、一生懸命アイラを愛し、思い出を作ろうとするツカサ。
見ていて、とても辛い思いがして泣きたくなってしまいます。

人は自分の思いだけで人を愛してはいけません。互いに情を移せば移すほど、その別れは耐え難いものになってしまうのです。
或いは自分は弱いのかも知れません。でも、いずれ必ず来る愛する人との(永遠の)別れにはとても耐えられそうにありません。
ならば独りで生きて行くしか無いのですが、アイラの生き様を見ていると、そんな自分がとても哀しい存在にも思えて来ます。
プラスティック・メモリーズは、私だけで無く、全ての人にとって生きるとは何か?死とは何か?を問う記憶に残る作品になる事でしょう。

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<もうひとつのプラスティック・メモリーズ> 書下ろし二次小説連載開始!
その少女の寿命は、後1000時間…未来の日本を舞台にした人間の少年と、命の残り少ないアンドロイドの少女の恋。
TVアニメでお馴染み「プラスティック・メモリーズ」のもうひとつの悲しい恋物語の始まりです。

ツカサとアイラ…人間の少年と、命残り少ないアンドロイドの少女の恋は、果たして悲劇で終ったのだろうか?
 
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~ Comment ~


こんにちは^^

出会いがあれば、別れもあるとは言うけれど、
思い出ができてしまう分
それはとても辛い事になってしまい、
耐えがたい経験になりますね。

酷く落ち込んでいる時に、親友が、慰め心の支えにもなってくれましたが、
でも生きているんだから、いつか会おうと思えば会えるって思っておこう^^
って震災経験の彼女はそう言いました。

わたしはまだ、死のお別れは経験していないから、
その辛さは到底わかるものではないのですが、
お別れは、どんな事でも辛くなるから、
思い出って 作りたくないとそれ以降思いました。

sado joさんは、残されたものの辛いことをわかっていらっしゃるから、
そうして来られたのですね。
アニメってよほど学校などから学ぶよりも、何かを私たちに、教え気づかされてくれたりもしますね。

#1980[2015/05/17 07:38]  yume-mi  URL  [Edit]

こんにちは^^

そういえばある日携帯に緊急地震速報が鳴ったとき
まあ、結局それは誤報だったんですが
奈良で地震発生、それが静岡まで緊急の地震速報がくると出たとき
周りに誰もいなかったせいもあり、そのときは誤報と思わず
死を覚悟というよりは受け入れようとしました。それも無感情に。自分は死ぬんだ。以上。
私の特異な性質上の問題もあり
アニメは違うけど友達に「どこの梨花ちゃんだよ」とつっこまれました。にぱ~(笑)。
#1981[2015/05/17 12:42]  西條すみれ  URL 

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> でも生きているんだから、いつか会おうと思えば会えるって思っておこう^^
> って震災経験の彼女はそう言いました。
> sado joさんは、残されたものの辛いことをわかっていらっしゃるから、
> そうして来られたのですね。

いつか会えればいいですけどね…それが永遠の別れになる場合もあります。
どんな人生を生きたのか?…自分には余りにも哀しみ色のリアル体験が多すぎます。
ドラマやアニメを観てると、時折、人生の出来事がフッラシュバックするんですよ。
#1982[2015/05/17 13:28]  sado jo  URL 

Re: すみれ様 COありがとうございます^^

> 周りに誰もいなかったせいもあり、そのときは誤報と思わず
> 死を覚悟というよりは受け入れようとしました。それも無感情に。自分は死ぬんだ。以上。
> 私の特異な性質上の問題もあり

もの凄い縦揺れが来て、体が1メートルほど宙に投げ出された時はそう思いました。
「あっ!コレで人生終り」とね…人間は死ぬ瞬間は時間がスローモーションになる。
体中の知覚が死を認識しようとするんでしょうか?今思えば、妻もそうだったのかな。
生きてる事が分かった瞬間、冷汗が噴出して来て、震えが止まらなくなります。
#1983[2015/05/17 13:44]  sado jo  URL 

好きになるのを恐れるアイラ。
しかしだんだん心が傾いていくんでしょうね。
切ない話ですが、そこにどんなメッセージが込められているのでしょうか。
#1984[2015/05/17 15:56]  マウントエレファント  URL  [Edit]

生きていれば別れも、それが永遠の別れだとしても、
どんな形であれ、いずれは迎えてしまうものですもんね。
いつ死んでしまうのかなんて誰にも分からないものですし、
自分の意思に関係なく仮に死んでしまうと分かったら、
実際に自分はどうなるのか想像がつきません(´∀`;)
#1985[2015/05/17 17:12]  ツバサ  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 好きになるのを恐れるアイラ。
> しかしだんだん心が傾いていくんでしょうね。
> 切ない話ですが、そこにどんなメッセージが込められているのでしょうか。

別れが恐くて人を好きになれない…と言うのが自分と同じ心と言うにはショックです。
そのままだと殻に閉じこもるだけになりますが、震災より大規模な悲惨な沖縄戦で、周りの人を失った私の心の師「故 金城哲夫先生」は、それを乗り越えられて、別の道を歩まれました。
最近になって、そのお気持ちが少しだけ分かって来た様な気がいたします。
ウルトラマンはなぜ書かれたのか?なぜウルトラマンなのか?今度、随筆で書きたいです。
#1986[2015/05/17 17:17]  sado jo  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 生きていれば別れも、それが永遠の別れだとしても、
> どんな形であれ、いずれは迎えてしまうものですもんね。

「さよならだけが人生だ」…と言う井伏鱒二の名セリフがあります。
親と別れ、愛する人と別れ、親しい人や、時に産んだ子供とも別れるのが人生です。
そして、自分もやがては人と別れて世を去る。それまで幾つの「さよなら」があるか?
人生は、さよならと死の積み重ね…ならば、欲望のままに生きるか?人の絆を大切に生きるか?基本的な生き方は二つしかありませんね^^
#1987[2015/05/17 17:32]  sado jo  URL 

そうですね

自分もこのアイラの気持ちがわかってしまいますね(汗)

自分の場合は、例の東日本大震災を経験したことがきっかけではなく、いわば自分自身が、他人を愛せない・愛し方がわからないヤツだということを再確認した感じです

ナルトでいうところの、砂漠の我愛羅タイプですかね
元々の気質と身を置いていた環境によって、そうなった感じです

まだジャンプで連載していたときに、当時は10代後半〜20代前半だったと思いますが、彼の「自分だけを愛し〜」っていう思想に共感できてしまいましたからね

自分もろくに思い出と呼べるものはありません
学校行事で撮る写真に、自分はほとんど写っていません
配布されたアルバムは、全て処分してます

しかし、そんな自分の数少ない知り合いは、ナルトタイプの人間が結構います

その影響か、ここ2〜3年は、多少なりとも自分の能力を有益なことに使えるようになりました

とはいえ、まだ人を愛することはできそうにないのと、あの死や絶望、破滅的な静寂が色濃く出る小説を書くのを辞めることはできそうにないですが(汗)
#1988[2015/05/17 21:08]  blackout  URL 

Re: blackout様 COありがとうございます^^

我愛羅…母の命を奪って産まれた呪われた子。でも、母は自分の命を与えてでも産みたかったのでは無いかな?母を殺して産まれた子って、昔は結構いました。
Fateの「アーチャー」は、多数を救う為に少数を殺し続ける(それが民主主義の正義)いつしか積み上げた屍は多数になっていて、絶望に苛まれましたよね。
人は生きる為に(食べる為に)他の命を奪わなければならない…生命は、他の命の犠牲の上にしか成り立たない。命とは罪深く、この世は不条理なものですね(笑)
或いは「死」と言うものは、罪深い矛盾や、不条理を解消する為にあるのかも知れませんね^^
#1989[2015/05/17 21:51]  sado jo  URL 

こんにちわ
命や人生は何なのかを考えさせられますね
#1990[2015/05/18 12:52]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様 COありがとうございます^^

> 命や人生は何なのかを考えさせられますね

死ぬのが恐いのは、痛いからとか、苦しいからじゃ無くて、突然この世との縁が断ち切られ、誰とも会えなくなって終うからでは無いでしょうか?何だかそんな気がします。
#1991[2015/05/18 13:33]  sado jo  URL 

死は誰に対しても等しく訪れるもの。
それは人で機械でも変わらない。
・・・と分かっていても、悲しいものは悲しい。
泣きたいときは泣けばいい。
それが生きることだと思います。
#2011[2015/05/23 12:11]  LandM  URL 

Re: LandM様 COありがとうございます^^

> 死は誰に対しても等しく訪れるもの。
> それは人で機械でも変わらない。
> ・・・と分かっていても、悲しいものは悲しい。

重傷を負って暗い洞窟の中で、恋人と別れて死んで行く女が言いました。
「人は死ぬ。豊かだろうが貧しかろうが、幸せだろうが不幸だろうが、人は必ず死ぬ」
(アカデミー賞映画「イングリッシュ・ペイジェント」より)
生ある限り死は必然…数十年経てば、今ブログを見てる人は一人もいなくなります。
#2012[2015/05/23 13:26]  sado jo  URL 














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