シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

随想/論文集

みんな生きる権利がある ~ネパール大震災に見る多神教風土の倫理観~

ネパール地震

同じ震災被災者として、ネパール大震災で被災した方々に心よりお悔やみを申し上げます。
出産を終えたばかりの身体で、赤ん坊と次女を庇って亡くなった母親のニュース報道には涙を禁じえませんでした。
ネパールは貧しい国です。さぞや、略奪や暴動、反乱等が起きるのでは…と心配していましたが、まったくの杞憂でした。
整然と何時間も並んで、強引に割り込む人も無く、食料や支援物資を受ける人々。困った時はみんなで助け合う国民性。
他の国で災害や戦争が起きた際には、必ず起きるはずの混乱や犯罪が、ネパールではまったく起きなかったのです。
振り返れば、自身が被災した阪神大震災でも、あの東日本大震災の時も、今のネパールと同じ光景を目の当たりにしました。
日本とネパールは経済事情が大きく異なります。だけに、世界は貧しいネパール国民の倫理観や道徳観に驚いている様です。
これはなぜでしょうか?それは、日本人とネパール人の精神的風土が似通っている事にあるのでは無いかと思えます。

ご存知の様に、ネパールは「釈尊」の出生地であり、古くからシャーマニズムを基本とする多神教的風土でありました。
従って、仏教そのものの教えも、あらゆる自然神を包含し、一切の生命を排除しない多神教の考え方に基づいています。
対して、西欧や中東の一神教は、我のみを唯一神とし、他は劣るものとして下に置き、或いは排除する考え方であります。
神の似姿である人間が世界の頂点で、自然やそれに含まれる動植物は、人間に征服されるべきものであるとする教えです。
さらにその上で、人そのものさえ人種・民族の優劣を定め、奴隷として売り買いし、労役に使用した歴史すらあります。
多くの一神教徒は「何でもござれ」の多神教徒を、無信心者の如く馬鹿にしますが、実際はどちらが正しいのでしょうか?
全ての人に生きる権利を認め、整然と並ぶネパールの人々と、自らの優越性を示す為に血を流して争う欧米や中東の人々と。
アフリカ人やアジア人は、欧米の白人より劣るのですか?ユダヤ教徒やクルドのヤジディ教徒は生きる権利は無いのですか?
「我こそは唯一なり」と、一神教の上に立つキリスト教徒やイスラム教徒は、果たして正しい考え方をしているのでしょうか?
それこそが、世界に争いや混乱を招き、自然を簒奪し、破壊し、自らの暮らす環境を危うくしているのでは無いのですか?
多神教徒も自然を奪います。でも、動物を殺すのも植物を手折るのも、自分達が生きる為に必要なだけの最小限に留めます。
多神教徒も宗派争いをします。しかし、キリスト教徒やイスラム教徒の様に、相手を皆殺しにする様な争いはいたしません。
日本の多くの社寺を見れば一目瞭然ですが、そこにある曼荼羅(本尊)には、森羅万象のあらゆる象徴が描かれています。
仏や神、果ては鬼や悪魔まで善悪を超えて全てを認めているのです。それこそが世界の姿であり、真実そのものだからです。
従って、仏神教の宗派争いは、どの道を行けば早く山の頂…悟りに達するかであり、一神教の争いとは本質的に異なります。
なので、無慈悲な殲滅戦は行いません…多神教においては、我と彼は同じ命であり、等しく生きる権利を有する者なのです。

余談になりますが、明治~大戦までの日本人は西洋に傾倒し、一神教の考え方に被れた為に大失敗をした経緯があります。
また、本来多神教だったインドは、一神教を信ずる民族に征服された為、カーストと言う差別制度が生まれてしまいました。
その為、多神教の持つ寛容性が失われ、悪しきカースト制度を無くそうとしたガンジーは暗殺されるに至ってしまいました。
キリスト教やイスラム教の神は、人を殺さねばならぬほど重大でしょうか?預言者の肖像はあなたの命に拘るのでしょうか?
全ては、親代々からの悪しき刷り込みでは無いのですか?貴方は鴉や梟の様な鳥では無いのだから自分でよく考えて下さい。
日本人は正月に神社に詣で、結婚式を教会で挙げ、盆には仏前に供物を捧げ、それでも何の支障も無く平和に生きています。
人にとって最も重要な事は、生きて、食べて、人を愛し子孫を残す事…その為には、他の命との調和を保つ必要があります。
月や星の軌道が僅かにズレただけでも我々は命の危機に瀕します。宇宙も自然も微妙な調和の上に成り立っているからです。
自然の内に命の調和を大切にする日本人やネパール人は、高度な精神を持っていると言えます。誇りにしてもいいでしょう。
一神教徒は、悲劇の渦中にあっても調和を忘れない多神教の日本人やネパール人を少しは見習ってはいかがでしょうか?


ネパール地震で崩れる世界遺産「バクタプル寺院」

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<西洋の一神教思想に踊らされていた日本人を振り返る>
ネパールでもそうですが、国内外で発生する災害の救援に派遣されている日本の自衛隊が世界で高く評価されています。
思えば、明治維新~第二次大戦まで、日本人は西洋に追いつく為に、日本人の本質である本来の多神教精神を犠牲にしました。
あの悲惨を極めた時期に、隣国の人々が見たのは、本物の日本人では無く、西洋思想で捏造された偽物の日本人だったのです。
「大和魂」は西洋の民族主義のコピーであり、大日本帝国の「八紘一宇」は西洋の植民地主義の真似事にしか過ぎませんでした。
多くの命を失い、メッキが剥がれた戦後の日本人は、客観的に見ると本来の日本人の精神性に戻っている様に見受けられます。
自衛隊は本来「人を殺す」武士…だからこそ「人の命を重んじる」それは古来より日本人に宿っていた多神教の精神であります。
被災地で瓦礫を撤去して命を救う為に懸命に働き、遺体が見つかれば、命を救えなかった事を涙を流して嘆いている自衛隊員。
現地の人達と共に合掌して命を弔う自衛隊員の姿をニュースで見る度に、あァ、同じ日本人なんだな…と実感するこの頃です。
戦後70年…隣国の人々は生命を大切にし、殺生を嫌がる「本来の日本人」を信用してもいいのでは無いでしょうか?
 
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#1932[2015/05/09 08:18]     

Re: y様 COありがとうございます^^

> 震災では今もトラウマに苦しむ友達がいます。
> 家族を失い 今も立ち直れずに、止まったままの友達もいます。
> sado joさんも奥様を・・・でしたものね。

人は自分が受け切れない現実に直面すると、その部分だけ時間が止まるものですね。
先頃、発見された「戦艦武蔵」の乗員が、戦友がバタバタ死んで行く光景を見たそうです。
その時間だけが、今もそのまま止まってる…と。あァ、自分と同じなんだなと思いました。
何か自分だけが生き残った事が罪悪の様な…背負い切れない心の傷とでも言うのかな?
災害は避けられないが、戦争は人の手で避けられる。人はどんな事があっても、不幸な人を作らない努力をする使命があると実感します。人命を救助する自衛隊は立派ですよ^^
#1933[2015/05/09 14:48]  sado jo  URL 

こんにちは^^

地震大国とも言われる日本。またいつどこで大きな地震が起きるかわかりませんしね。
最近だと箱根山で火山性の地震が多発しているとか。
明日は我が身かもしれないからこそ相手のことを思いやれるというのも1つでしょう。
一方で日が経てば風化してしまう現実もありますが
こうした助け合いを見てると宗教など考え方の違いで殺し合うのはバカバカしいね。
#1934[2015/05/09 15:32]  西條すみれ  URL 

こんにちわ
ネパール人の人々を見習いたいなと思いました
#1935[2015/05/09 15:58]  ネリム  URL  [Edit]

Re: すみれ様 COありがとうございます^^

> 地震大国とも言われる日本。またいつどこで大きな地震が起きるかわかりませんしね。
> 明日は我が身かもしれないからこそ相手のことを思いやれるというのも1つでしょう。
> こうした助け合いを見てると宗教など考え方の違いで殺し合うのはバカバカしいね。

宗教はどうしてもソレで無いと生きれない訳では無い。他の宗教でも生きてる人もいる。
だが、地震等の天災や戦争は、即、人の生死を左右する…東洋人はソレをよく知っている。
だから、東洋ではガチガチの思想を嫌う多神教徒が多い。さてどっちが合理的でしょうか?
自然界の生命を大事にして、共存共栄で生きる…東洋人が昔から持っていた思想を西洋人が持っていたならば、今の様な世界にはならなかったはずです。
#1936[2015/05/09 17:04]  sado jo  URL 

Re: ネリム様 COありがとうございます^^

> ネパール人の人々を見習いたいなと思いました

貧しさから脱する事は簡単です。自然から奪い、他人から奪い、他国を滅ぼせば良い。
それが、かっての日本人がやった事であり、欧米人がここ数百年行なって来た事です。
結果はどうなったか?膨大な命が奪われ、憎しみを生み、悲劇が繰り返される今の世界。
敢て清貧に甘んじるネパールの人も、身の丈に応じて、一生懸命働く日本人も、因果の法則を宿す風土の中で育ったからだと思いますよ。大切なのは命の調和では無いかな?
#1937[2015/05/09 18:24]  sado jo  URL 

多神教だから調和を重んじ、こういう混乱の時、自分さえ良ければよいという愚かな行動に出ない。
そうかもしれませんね。
勉強になります。
#1938[2015/05/09 18:50]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 多神教だから調和を重んじ、こういう混乱の時、自分さえ良ければよいという愚かな行動に出ない。
> そうかもしれませんね。

山の神も、海の神もみんな大切…と言う多神教の倫理観は、俺の神、俺の家族、民族だけが大事。と言う一神教の思想とは一線を画します。争わず調和を保つ合理的な生き方だと思います。
奇しくも、西洋の科学者達が生態系の調査によって、それを証明してるのは面白いです。
いざと言う時でも東洋人は人間性を失わない。西洋人は一寸とした事で争い合います(笑)
#1939[2015/05/09 19:57]  sado jo  URL 

一神教はみんなで同じ神を信じる訳ですが、
そんな中に他の神を信じる人がいたら、
攻撃的になって排除したりしますもんね(><)
多様性を認めるって難しいですが、
唯一神だけ信じるというそれのみの考えに囚われるというのは、
やめていった方がいいですよね。
#1940[2015/05/09 20:39]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 唯一神だけ信じるというそれのみの考えに囚われるというのは、
> やめていった方がいいですよね。

一神論は、最初から自分の信ずるもの(神など)以外は排除すると言う不毛な思想です。
これでは対話になりません…だから欧米や中東で問答無用の殺し合いになってしまいます。
反面、多くの学者は宇宙の真理が、多神教の原理に基づいている事を証明しつつあります。
信ずるものと、実証とが背反している事を拒む人々は、過激な原理主義に走ってしまいます。
イスラム教もキリスト教も、真実を前にして、聖書やコーランの記述が意味を失った世紀。
一神教にとっての世紀末が到来しています。聖典を書き換える勇気も必要だと思いますよ。
現実には、唯一の神など宇宙には居なかったのだから…
#1941[2015/05/09 21:58]  sado jo  URL 

自然を大切にして、受け入れる・・・という考えかたは西洋文明にはないものですからね。そういうものがある国は自然災害を受け入れるという信仰があるのだと思います。日本にしても、ネパールにしても。
#1972[2015/05/15 20:48]  LandM  URL 

Re: LandM様 COありがとうございます^^

> 自然を大切にして、受け入れる・・・という考えかたは西洋文明にはないものですからね。

日本が近代国家の道を歩みだした象徴「軍艦島」の世界遺産登録に中国が反対してます。
その中国の首都「北京」は、今近代文明の自然破壊の象徴スモッグで汚染されてます(笑)
東洋文明を歴史的にリードして来た中国の矛盾…昔の日本の西洋かぶれと同じ道ですね><
自然と共存しながら生きて行く…西洋には無い東洋人の生き方を中国は捨ててしまうのか?
(富国強兵)を唱え、やたらと強くなるだけが生きる道では無いと思いますがね~(笑)
#1973[2015/05/15 21:46]  sado jo  URL 














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