シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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砂漠のゼロ戦 - Desert of ZERO -(24)

攻撃1

 バーディヤの街が、日本の自衛隊とクルド軍の奇襲によって陥落したと言う知らせは、ラッカのマクバディの元へ届いた。
 彼はさすがに慌てた。すぐにラッカにいるイスラム蛮国の主力軍を割いて、バーディヤの救援に向かわせようとも考えた。
 だが、すでに先日自衛隊に奪われた補給基地、ハマラの奪還のために、1800の兵をラッカから出撃させた後だった。
 将来のバクダッド攻略のためには、ハマラは是が非でも確保して置かなければならない重要な拠点だったからだ。
 ただでさえラッカは、シリア政府軍や多国籍軍などに狙われている。彼はこれ以上の兵を手放す事に不安を感じた。
 気が小さくて用心深い、さらにずば抜けて保身に長けている事が、テロリストの首謀者としての必須条件ではある。
 そうでなければ、常に多くの勢力に命を狙われ、仲間内の裏切りが日常茶飯事に起きるテロ集団のトップにはなれない。
 そんなマクバディは、迷った挙句、イラク領にあるモスルのファハド司令官にバーディヤへの救援軍を出すように命じた。
 保身…であった。実は葛城にとって、敵将マクバディが状況をどう判断するかは一つの重要な賭けでもあった。
 もしもこの時、マクバディがラッカとモスルの両方から救援軍を差し向けていれば、さすがの葛城もピンチに立たされたろう。
 城塞を囲んでいる第一空挺団とクルド軍は、東と西の両方の街道から敵の挟撃を受けて、孤立する事になってしまうからだ。
 だが、マクバディは手兵を動かす事を躊躇し、保身の道を選んだ。まさに、葛城の「敵を知り己を知る(孫氏)」読み勝ちだった。

 その一方、マクバディの命令を受けたモスルのイスラム蛮国軍司令官、ファハドもまた兵を動かす事をためらった。
 彼も、イラク軍や米国を始めとする多国籍軍のモスル奪還作戦が間近い事を知っていた。兵は温存したいところであった。
 しかし、マクバディの命令に真っ向から逆らえば、モスルの司令官を更迭され、処刑されるのは目に見えている。
 そこで、仕方なく副司令官のマリクに、守備隊の半分に近い4600の兵を預けて、バーディヤの救援に向かわせる事にした。

 マリクは多国籍軍の偵察機の目を欺くために、戦車8両を始めとするバーディヤ救援軍をモスルからバラバラに出撃させた。
(敵は日本の空挺部隊と寄せ集めのクルド軍と聞く。重火器はあるまい。兵力も装備も断然こちらの方が有利なはずだ)
 マリクは自信たっぷりに出撃した。確かに彼の考えた通りモスルの救援軍は優勢に立っていた。ただ一つを除いては…
事前に打ち合わせた通り、300両近い車両に分乗したマリクのモスル救援軍は、バーディヤの郊外40キロの地点に集結した。
(街道を一気に東に進撃し、敵の不意を突いて奇襲を掛け、城塞に立てこもっている味方と合流してバーディヤを奪還しよう)
 マリクは巧みに多国籍軍の目を欺いたつもりだった。だが、彼の行動のすべては上空にいるやたがらすに読まれていた。
(街道の周囲に敵は見当たらない。大方、城塞の攻囲戦で手が一杯なのだろう)マリクはそう思った。
 街道を突き進むモスルの救援軍は、バーディヤの東15キロまで迫った。周囲は何もない平坦な荒野が広がっていた。
 ところが、そこで前を進んでいた戦車が急に停止した(敵か?)と思ったマリクは指揮車両から身を乗り出した。
 街道の前方には、イスラム蛮国の旗を掲げた50人ほどのアラブ兵の姿があった。
「バーディヤの街から逃げて来た友軍だな。ちょうどよかった。街の様子を聞いてみよう」
 マリクはそう言って、後ろに続いて来た全軍に停止を命じると、車から降りようとした。
「ちょっとお待ち下さい。マリク将軍!何だか様子が変です」双眼鏡で前方の様子を窺っていた部下が制止した。
 ボォ~ン!その瞬間、先頭で停止していた戦車のキャタピラーが猛烈な爆音と共に吹き飛んだ。
「敵襲~っ!」部下がそう言い終わらない内に、後列の車両の間からも、次々と爆煙が立ち昇った。
「地雷だっ!下がれ~っ!」マリクは慌てて車に飛び乗ると、後ろの車両に後退するように命令した。

 それは遠隔操作地雷だった。普通の地雷と違って踏んでも何ともないが、スイッチ一つで全ての地雷が一斉に起爆する。
 すでに、敵の救援軍到着の情報を得ていた現地指揮官の宇賀多一左は、捕虜を使って街道に地雷を仕掛けさせていたのだ。
 敵の捕虜たちは、クルド兵に銃を突きつけられたまま、モスルからの援軍を出迎える格好をさせられていたのだった。

~続く~

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【新作公開予告!】 まぼろしシリーズ 第七話 「雪女」

狩りの最中に、猛吹雪に襲われた猟師の茂吉は、已む無く「魔物が住んでいる」と伝えられている祠に避難する。
そして、祠の中で美しい女が倒れているのを見た茂吉は、女を助け出し、家に連れ帰って女を介抱するのだが…
その先には、茂吉にとって思いもよらない運命が待ち受けていたのだった。

作者の作風に似合わず「ラブロマンス&ミステリー」風の作品になります。近日より連載予定!ご期待下さい^^
 
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~ Comment ~


遠隔地雷ですか。恐ろしい。
敵を自分の陣地に誘いこみ、一気にという手も有効ですね。
#2129[2015/06/22 19:47]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 遠隔地雷ですか。恐ろしい。
> 敵を自分の陣地に誘いこみ、一気にという手も有効ですね。

気が付いたら敵の罠にはまってた…と、言う戦いは結構ありますよね~
第二次大戦中、日本やドイツは米軍に暗号を解読されて、さんざん敵の罠にはまりました。
今思えば、あの頃から米国は情報戦を得意にしてたんですね~
さすが、情報戦の末にコンピューターを生み出しただけの事はあります(笑)
#2130[2015/06/22 19:59]  sado jo  URL 

なるほど~、街から逃げて来た友軍かと思いきや、
捕虜になった兵達だったんですね~。
地雷地帯に誘い込まれる形になってしまっては、
いくら戦車といえどもただでは済みませんしね(`・ω・´)
#2131[2015/06/22 20:19]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 地雷地帯に誘い込まれる形になってしまっては、
> いくら戦車といえどもただでは済みませんしね(`・ω・´)

現実的にも、自衛隊の士官ってよく訓練されてますよ。なにせ情報量が違います。
そこら辺が旧日本軍とは異なりますね。真面目によく近代作戦を研究しています。
今や、日本は極東で最も攻略し難い国でしょうね…うかつに踏み込むと、地の利を生かし、近代兵器を駆使した罠にはめられてしまいますから…(笑)
#2132[2015/06/22 20:35]  sado jo  URL 














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