シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼その他の小説」
もうひとつのプラスティック・メモリーズ

もうひとつのプラスティック・メモリーズ (3)

もうひとつの04

 それからのツカサとアイラには、嫌でも普通の日常生活が戻って来た。
 どうやらミチルは、あの一件を上司に報告するのはさすがに控えたらしい。
 いつものように「SAI社」の社員寮から、二人で「ターミナルサービス課」に出社する。
 いつものように、二人で耐用年数の切れるギフィティアを持ち主から回収して回る仕事をする。
 でも、アイラは自分が回収するギフィティアと同じように、やがて自分も回収される事をどう思っているんだろうか?
 そんな事を考えると、ツカサは胸が痛くなって来て、いても立ってもいられない気持ちになるのだった。

 そんなある日の休日、ツカサはアイラと二人で、いつもの遊園地のいつものベンチに腰掛けて、通り過ぎる人を眺めていた。
 あれからアイラは、ツカサに気を使っているのか?よく彼に笑い顔を見せるようになった。
 でも、ツカサには、死を間近に控えたそんな少女の笑顔が、却って痛々しく見えてしまうのだった。
 ツカサは出来るだけアイラの顔を見ないようにして話し掛ける。アイラはいつものように素っ気ない返事を返す。
 そんな味気のない会話を交わしていた二人の前に、少し背の高い人の良さそうな男が近寄って来た。

「あのぅ…すみませんが、カメラのシャッターを押してもらえないでしょうか?」
「あァ、いいですよ」ツカサは、男の差し出したカメラを笑顔で受け取った。
「ありがとうございます…じゃァ、お願いいたします。家族と一緒に撮って下さい」
 そう言って男は、小走りに待っている家族の元に行って一緒に並んだ。
 その男と、車椅子に乗った奥さんらしい女性と、二人の小さな男の子と女の子の家族写真を撮って欲しいのだろう。
「はい、チーズ」そう言ってツカサは、その家族の写真を何枚か撮ってあげた。
「ありがとうございました。お陰様で家族のいい思い出ができました」男は丁寧に礼を言った。
 男が言った「思い出」と言う言葉に、はっ!とアイラが反応した。
「いえ、どういたしまして…失礼とは思いますが、奥様はご病気か何かですか?」ツカサは男に尋ねた。
「はい、そうです。もう家内は寿命が残り少なくて…それで、子供たちが母親を忘れないように、たくさん思い出を作ってやりたいと思いまして、無理して遊園地に連れて来たんですよ」
「そうでしたかァ~…すみません、辛い事をお聞きしました」
「いえいえ、いいんです。例え後わずかな命でも、家族と一緒に幸せにすごせれば…どうも、ありがとうございました」
 そう言って男は、奥さんの車椅子を押しながら、小さな子供たちを一緒に連れて去って行った。
 ツカサとアイラは、いつの間にかそんな家族の後ろ姿を目で追い掛けていたのだった。

 アイラの寿命が尽きて回収されるまで、残り三週間と迫ったある日の事だった。
 何を思ったのか、ツカサはもらった給料を全部はたいて、高級なカメラを買って来た。
 そうして、そのカメラを首にぶら下げて出社して来た。

~続く~



にほんブログ村 小説ブログへ

 
関連記事
スポンサーサイト
 関連カテゴリ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼地球年代記 ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼シムーン第二章 ~乙女達の祈り~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼未来戦艦大和
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼ビーストハンター
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼地球年代記 ~カルマ~
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼やさしい刑事
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼幻影の艦隊
総もくじ 3kaku_s_L.png ▼その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←もうひとつのプラスティック・メモリーズ (4)    →もうひとつのプラスティック・メモリーズ (2)
*Edit TB(0) | CO(6)

~ Comment ~


こんにちは^^

その日が来ることに触れずに お互い過ごしていると
どうしても 気まずくなってしまいますね。
そんな2人の前に 
まさに残り少ない日々を送る ご家族が現れたのですね。

思い出。
後で見るには かえって辛い事かもしれないけれど、
今はそれを作る行為に
没頭してしまいたくなったのかな。
#2009[2015/05/23 07:00]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> その日が来ることに触れずに お互い過ごしていると
> どうしても 気まずくなってしまいますね。
> まさに残り少ない日々を送る ご家族が現れたのですね。

死ぬ事が分かっている人を目の前にして、何を話していいのやら…
難しいですよね…同じ様な境遇にいる家族から何を得たのでしょうか?
物語はこの後、アイラの死へ…ツカサとの別れのシーンへと進みます。
#2010[2015/05/23 11:07]  sado jo  URL 

思い出の写真ですか。
切ないですね。
#2013[2015/05/23 19:22]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 思い出の写真ですか。切ないですね。

お母さんが亡くなった後、子供達は、写真を見て母親を思い出すんでしょうね。
家族の余命が幾ばくも無い…ってよく聞く話ですが、現実になったら辛いですよね。
#2014[2015/05/23 21:17]  sado jo  URL 

写真で残す思い出って見た時に辛くなる事もありますが、
見る事で暖かくもなれるものですしね。
別れが来る事を分かっているのなら、
心の中の思いでだけじゃなくて、見られるものという形でも残したいですしね(><)
#2015[2015/05/23 23:02]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 別れが来る事を分かっているのなら、
> 心の中の思いでだけじゃなくて、見られるものという形でも残したいですしね(><)

昔話に「瞼の母」と言うのがよくあって、子供はいつまでも母の面影を慕い続ける。
例えどんな形で母を失っても、子供には産んでくれた母は忘れられないものです。
いなくなっても母の思い出は大切ですね…アレッ?父の影が薄いのはな~ぜ?(笑)
#2016[2015/05/23 23:17]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←もうひとつのプラスティック・メモリーズ (4)    →もうひとつのプラスティック・メモリーズ (2)