シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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もうひとつのプラスティック・メモリーズ

もうひとつのプラスティック・メモリーズ (4)

もうひとつ05

「おっ!なかなか高級なカメラじゃねぇか…いい動画も取れそうだな。給料はたいたんじゃねぇか?」
 目ざとく品定めをしたらしいヤスタカが、ツカサにそう言った。
「えぇ、まァ…」
「でも、給料がなくなったんじゃァ、飲みにも行けねぇな~」
「だから僕は未成年てすっ…て~」
「そんな高いの買って何に使うつもり?」カズキが興味ありげに聞いて来た。
「えぇ…まァ、見てて下さいって…」ツカサはそう答えた。

 それから、ツカサはそのカメラでアイラを撮り始めた。
 プライベートでも、仕事でも、いつもカメラを首から提げてアイラの姿を追い続けた。
 どんな小さな出来事でも、どんなにささいな仕草でも、アイラのする事を見逃さなかった。
 時には、いつものようにドジを踏んで転ぶアイラを撮って、逆に怒られながら、それでも少女を撮り続けた。
 そうしている内に、それまで暗く沈んでいたツカサの表情が、なぜだかだんだん明るくなって行った。

 アイラの回収期限が三日後に迫ったある日の事だった。
 山野辺課長に次のパートナーを探すように言われたツカサは、ギフティアのメンテナンスをするミキジロウの所へやって来た。
「鉄黒さん。ちょっとお尋ねしたい事があるんですが…」
「おぅ、何だ新入り…アイラの事か?回収は三日後だよな」
「えぇ…ギフティアって、期限が来て人格や記憶は消失しても、ボディは大丈夫なんですよね?」
「そうだが…アイラなら相当ガタが来てるから、一辺、大掛かりなオーバーホールしなきゃなんねぇぞ」
「どのくらい掛かるんでしょうか?」
「まァ、一月ってとこかな…でもよう、新しいOSを入れたら元のアイラじゃなくっちまうんだぞ」
「それで構いません。ぜひアイラの再生をお願いします」
「よし来たっ!だが、お前さんも物好きだなァ~…そんなにアイラがいいのか?」
「えぇ、あの子以外にパートナーは考えられないんです」
 ミキジロウに回収後のアイラを頼んだツカサは、少し嬉しそうにターミナルサービスの事務所に帰って来て言った。
「課長、次のパートナーを決めて来ました」
「そうか、メンテの所にいい子がいたか?」
「いえ、ここにいました…アイラです」
「えぇ~っ!?」事務所にいた一同が驚いて一斉に声をあげた。
「えっ!私?…でも、私は記憶も人格もなくなっちゃうんだけど…」アイラは自分を指差して驚いていた。
「心配いらないよ、アイラ…また取り戻せばいい」ツカサはそう言って、にっこりと笑った。

~続く~



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次のパートナーはアイラのボディを使って欲しいと、
そういう訳なんですね~。
記憶も人格も消えてしまって確かに消えてしまうものって多いですが、
記憶や思い出が消えてしまってもまた作って行くという事も出来ますもんね(´∀`)
#2017[2015/05/25 20:25]  ツバサ  URL 

なんだかその気持ちわかります。
それが叶うのなら、自分の愛する人もそうしたいと思いますので。
#2018[2015/05/25 20:26]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 記憶も人格も消えてしまって確かに消えてしまうものって多いですが、
> 記憶や思い出が消えてしまってもまた作って行くという事も出来ますもんね(´∀`)

例え、人格も何もかも入れ替ってしまったとしても、そこには愛した人がいます。
相手は記憶を失ってても、自分はその人との愛の思い出を記憶している訳ですよね。
人格は違っても、見た目は同じ…全て忘れて、他のパートナーは選べませんよね~
人の愛って不思議なものですね^^
#2019[2015/05/25 20:50]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> なんだかその気持ちわかります。
> それが叶うのなら、自分の愛する人もそうしたいと思いますので。

最近は、現実でも「脳死」と言うものがありますね。
身体は生きてても、脳は死んでいて、もう人格も記憶も失われてしまっています。
でも、血は流れていて暖かい…ですが、いつかは生命維持装置を外さなきゃならない。
愛する人がそうなったら判断に苦しみますね~…いやァ、辛いなんてもんじゃないです。
#2020[2015/05/25 21:02]  sado jo  URL 














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