シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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もうひとつのプラスティック・メモリーズ

もうひとつのプラスティック・メモリーズ (7)

もうひとつの08

 それから20年が過ぎた。
 中年になったツカサは、ターミナルサービス課の課長になっていた。
 三度目のアイラは、顔やボディを整形して、今は20代後半の女性に見える。
 けれども、せっかく大人になったのに、相変わらずお茶を運びながら、見事につまづいてすっ転ぶ。
「お~っとっ…とっ、とっ」ツカサはアイラが転んだ途端に、書類を抱えて被害を避ける。手慣れたものだ。
「ごめんなさい。大丈夫?」アイラはハンカチを取り出して、濡れたツカサのワイシャツを拭く。
「うん、何ともないよ…君こそ怪我はないか?」反対に、ツカサはアイラの心配をしている。

「それにしても、上手く避けるわよねぇ…課長」新人社員の此花ツグミが、感心したように言った。
「あァ、いつもの事だからな…あれって、一種のノロケなんじゃネ」中堅社員の棚餅マツオが小声で言った
「ふ~ん、それにしてもよく呼吸が合うものよねぇ…よっぽど仲がいいんだ」
「あんたら何をそこでゴチャゴチャ言ってんの…あァ、課長。常務から呼び出し掛かってるわよ~」
 そう言ったミチルは、すっかりキャリアウーマンが板に着いてしまったようだ。
「あァ、伍堂常務か。俺あの人苦手なんだけどな~…仕方ない、すぐ行きます…って伝えといて」
 ちなみに、当時のスタッフは、あれからそれぞれの道を行く事になり、ターミナルサービス課の顔ぶれも変った。
 山野辺課長は退職し、カズキは研究所に転出して、今は耐用期限の切れたギフティアの事故を防ぐ研究をしている。
 元からサラリーマンが性に合わなかったヤスタカは、会社を辞めてシェリーと一緒にバーを開いた。
 ツカサもアイラを連れて二人が開いたバーに行き、旧交を温めた事があった…その時の話だ。

 ガッシャ~ン!いきなりシェリーがグラスを落として割ってしまった。
「ごめんなさ~い」シェリーは笑いながらそうあやまった。
「オイ、オイ、またかよ~…怪我してないか?」マスターのヤスタカが心配して言った。
「大丈夫よ~、マスター」シェリーはケロッとして言った。
「えっ?シェリーさんって、アイラとは違ってしっかりしてたと思ってたけど…」ツカサは、ヤスタカに尋ねた。
「いや何ね…彼女四回目のOSなんだけど、型が古いもんでもうボディのパーツがなくてね。少々不具合も出るのさ」
「へぇ~…そんな事もあるんですね~」
「まァ、些細なミスぐらい大目に見てやらなきゃな…シェリーの姉もまだ生きてるって聞くし」
「シェリーさんってお姉さんがいたんですか?知らなかったなァ」
「うん、シェリーは双子の姉妹として作られたんだ…多分、姉の方はミキヤの所にいるんじゃないかな?」
 そんな話を聞いた事をツカサもすっかり忘れていた。その矢先、鬼の部長だった伍堂ミキヤからの呼び出しを受けた。

 SAI社の本社ビルにあるミキヤのオフィスに入ったツカサは、彼に深々と頭を下げてから言った。
「ターミナルサービス課の水柿です。お呼び出しを受けてまいりました」
「あァ、水柿君か…まァ、掛けたまえ」もう60近くになった常務のミキヤは、ツカサを椅子に腰掛けさせた。
「はい…ところで常務、ご用件は何でしょうか?」

~続く~

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~ Comment ~


こんばんは^^

ツカサは成長していたのですね。
ツカサも もしかして
アンドロイド?なんて疑っていたので(☍﹏⁰)。

アイラも 何度生まれてもドジは同じで、それが
ツカサとの心地よい2人の空間と言うか?
かけあい?と言うか?安心しますね^^

え~ここでおしまい?気になります(〃ω〃)
#2041[2015/06/02 01:40]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

> ツカサは成長していたのですね。
> え~ここでおしまい?気になります(〃ω〃)

ツカサは中年になって、いいオジサンになりました。
社内は、アイラとの掛合い漫才みたいな仲のいい雰囲気ですね(笑)

いえ、まだ続きますよ~…ツカサが入社出来たのは、伍堂ミキヤと父親のコネ。
ところが、ミキヤは鬼の部長で、アンドロイドを道具としか見ない冷たい人間。
彼は何を隠しているのか?そこのミステリーを暴く段階に入ります。
#2042[2015/06/02 13:24]  sado jo  URL 

20年が流れてもツカサとアイラはとてもいい関係のままなんですね~。
年月が流れても変わらないものがある、
その変わらないものがあるというのが大事ですよね(´∀`)
さて、常務から呼び出されてしまいましたが、
要件は何なのでしょうね?
#2043[2015/06/02 20:14]  ツバサ  URL 

ツカサは年をとっても、アイラは成長せず。
だんだん親子のような感じになっていきそう。
#2044[2015/06/02 21:44]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 20年が流れてもツカサとアイラはとてもいい関係のままなんですね~。
> 年月が流れても変わらないものがある、
> その変わらないものがあるというのが大事ですよね(´∀`)

アイラの寿命に限りがある…と言う事がお互いを大切に思うのかも知れません。
思えば人も、いつか愛する人を亡くすのが分かってるから労わりあえるんですよね。
死がお互いを密接にしている…何気にそれはとても大事な事だと思います^^
#2045[2015/06/02 21:50]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> ツカサは年をとっても、アイラは成長せず。
> だんだん親子のような感じになっていきそう。

いえいえ、多分顔やボディはツカサに合わせて整形可能だと思います。
パーツも老朽化するから、アンドロイドのギックリ腰なんてのもあるでしょう。
人間が歳を取る様に、アンドロイドも一緒にポンコツになりますからねぇ~
さすがにヨボヨボの婆さんになったアイラは見たくもないですが(笑)
#2046[2015/06/02 21:59]  sado jo  URL 














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