シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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「いや、他でもないんだがね…君の課は他の課と比べて、抜群の業績を挙げている。特にここ三年は、ギフィティアの回収事故が一件もない」
「はい、お褒めいただきありがとうございます」
「それで、どんな方法で回収事故を防いでいるのかを聞きたくてね」
「はい、私の課はギフティアの耐用期限が切れる一カ月前から、顧客とギフティアの思い出作りサービスを行なっております」
「ほう、どんなやり方で?」
「サービスマンが耐用期限の一カ月前に持ち主の所へ出向き、ギフティアと持ち主とのアルバム作りをしているんです」
「記憶を失くしたギフティアが再び思い出を取り戻せるようにか?なるほど…それでギフティアのリサイクルが増えている訳だ」
「はい、回収されて戻って来たギフティアに写真や動画を見せて、再び元の記憶や人格を取り戻していただいてるんです」
「う~ん…道理で苦情が一件もない訳だな。だがな…困った事に新品のギフティアの売れ行きが落ち込んでるんだよ」
「はァ…それは困りましたね~」
「顧客に喜んでもらってるならやめろという訳にもいかんしな~…と言って常務になった今の私は、ギフティアの回収だけでなく、販売も含めた営業全般を統括している身だからね~」
「済みません。私の独断でご迷惑をお掛けしまして…」
「いや、何も君のせいばかりじゃないがね…ところでどうかね、休日にでも私の家に来ないか?その件について、君に会わせたい人もいるし…そこで詳しく話をしよう」
「はい、かしこまりました。今度の休みにでもお伺いさせていただきます」
 あの鬼の部長だったミキヤに、家に招待されるとは…さすがに驚いたが、断る訳にもいかずツカサは承諾した。

「ごめん下さ~い。水柿です」
 ツカサがインターホンを押して来訪を告げると、すぐに丹前姿のミキヤが出て来た。
 会社で見るのとは打って変わったミキヤの一面…眼鏡を掛けたその姿は、どこかの哲学者のようにさえ見えた。
「あァ、よく来てくれた。まァ、入りたまえ」
 そう言って、ミキヤはツカサとアイラを二階の書斎に案内した。勉強家らしく蔵書がぎっしり並んだ書斎だった。
 ミキヤに薦められてツカサとアイラがテーブルに腰を下ろすと、襖が開いて、和服を着た40絡みの美しい女性が現れた。
「あァ、済まんがお客さんにお茶を入れてくれんか」ミキヤは振り向いてその女性に言った。
「はい、かしこまりました」和服の女性は、ツカサとアイラに軽く会釈をしてからそう答えた。
「えっ!シェリーさん?」その女性は、ツカサには見覚えのある顔をしていた。
「いや、違うよ…シェリーの姉に当るギフティアのアンナだ」
 ヤスタカがシェリーには姉がいると言っていた事を、やっとツカサは思い出した。
「SAI社が、展示会のコンパニオンとして作った美形の双子姉妹の一体でね。姉のアンナは僕が引き取ったんだが、妹のシェリーの方は女好きのヤスタカが目ざとく見つけてパートナーにしたと言う訳だ」
「あァ…それで瓜二つなんですね」
 その時、何やら階段の下の方から少年と女性の声が聞こえて来た。
「お母さ~ん、無理しなくていいよ~…またつまづいて転んだら危ないから、階段は僕が運ぶよ」
「ありがとうカズヤ…大丈夫よ、これくらいなら持って行けそうだから…」
 そのやり取りを聞いていたミキヤが、ツカサとアイラに言った。

~続く~

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~ Comment ~


こんにちは*^^*

あちこちあれこれ楽しみに読ませて頂いています*^^*

お一人の方を長く愛してその方からも長く愛されて生きていければ最高なのですが、愛されるすべとしてその方に愛されるために合う方法などはいろいろ身に着けて実行していけるとしても、私の奥深くはお相手に表現できないままなので結局は私の自己都合によって駄目になります・・。

こんな純愛の物語を知るとうらやましくて可愛くて、己の日常を思うと辛く悲しく、ある意味では面白いです!続きを早く読みたいです^^
#2047[2015/06/04 19:07]  めがみ  URL  [Edit]

Re: めがみ様 COありがとうございます^^

人を愛そうとすれば、自分を犠牲にしなくてはなりません。
そこで、自分を殺して無理をするから、逆に自分が不幸に思えてしまうんでしょうね。
良い所も悪い所も、ありのままの貴女を愛し、ありのままの相手を愛する関係が必要です。
物語の中のツカサとアイラは、お互いに労わり合って生きているのが分かると思います^^
#2048[2015/06/04 20:02]  sado jo  URL 

なるほど、顧客とギフティアの思い出作りサービスをやっているんですね~。
これなら別れる前に思い出も作れて、
また後でリサイクルされたギフティアと一緒に見返せますし一石二鳥ですね(´∀`)
#2049[2015/06/04 20:25]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> なるほど、顧客とギフティアの思い出作りサービスをやっているんですね~。

実は、鬼の部長だった伍堂ミキヤも、密かに一人のギフティアを愛していたんですね。
…と、言う人間らしさが、本家のアニメとは違うストーリーなんですよ^^
人は、誰しも愛する人と一緒にいたいものです。彼も人の子だったんですね~
俺は愛などイラン!と言う人間はこの世には一人もいませんのですよ。
#2050[2015/06/04 21:58]  sado jo  URL 

思い出づくりをしながら、客が満足できるギフティアをリサイクルする。
素晴らしいアイデアですね。
しかしそれで新品が売れなくなるということも起きてしまうんですね。
商売は難しいですね。
#2051[2015/06/04 22:22]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 思い出づくりをしながら、客が満足できるギフティアをリサイクルする。
> 素晴らしいアイデアですね。
> しかしそれで新品が売れなくなるということも起きてしまうんですね。

客は、長年一緒に暮らしたギフティアに愛情を抱いてるからリサイクルしたい。
一方、企業の方は新品を買ってもらいたい。コレ、資本主義の矛盾の一つですね。
人間である個人の愛着心と、企業の論理は一致しないのが常なんですよね~(笑)
パソコンでさえXPから7に替えた時も、随分違和感を感じました。まして、家族を交換しろと言われたら、そりゃ困惑するのが当たり前でしょうね。
#2052[2015/06/04 23:33]  sado jo  URL 














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