シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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「アンナは、もう四回目のOSになるんだ。困った事に型が古いもんで、パーツが揃わなくてね。余り無理をさせられないんだよ」
「そうでしたか~…確かヤスタカさんもシェリーさんに同じような事を言ってました」
「ヤスタカもか~…アンナは以前僕の秘書をしてたんだがね。里子を引き取ってから家族として一緒に住む事にしたんだ」
「あァ、それで今こちらに…」
「これで分かったかね…実は僕もずっと前から君と同じ事をしてたんだよ。思い出を記録に残してまた植えつける。辛抱強くね…まァ、二年くらいは掛かるかな」
「常務もでしたか~…よく分かります。アイラも元の記憶を取り戻すのに随分掛かりましたから…」
「まァ、そのせいかカズヤは、自分の母親が無理できない事を知って、随分気遣いのできる優しい子に育ってくれた…それもこれもギフティアのアンナのお陰だ」
「そうだったんですか~」
「人は、よくアンドロイドの愛情は人間にプログラムされた偽物だと言うけれど、その人間の愛情も、DNAにプロブラムされたものじゃないかと思うんだよね」
「えぇ、常務のおっしゃる通りだと思います」
「それなら、あれは偽物、これは本物とは決め付けられないんじゃないかな?そんな事を考えるより、愛情を素直に受け入れた方が幸せなんじゃないかと思うんだよね」
 かって、ギフティアを機械としか見ていないと言われていた鬼の部長、伍堂ミキヤ…
 その人の口からこんな言葉が出るとは…正直、ツカサはいささか驚いていた。
「思い出を大切にするのはいい事だ。ただね…お客さんが皆ギフティアのリサイクルをすると、新品が売れなくなるのが困るんだ」
「それならこうしてはどうでしょう?二台目以降のギフティアは、割引で買えるようにしては…」
「う~ん…割引販売ねぇ~」
「子供のギフティアは、兄弟がいた方がいいだろうし、アンドロイドチルドレンも、両親がそろった方がよいと思います」
「なるほど…一台より二台、二台より三台。ギフティアで家族を作るんだね」
「そうです…家族の思い出って、人生で何よりも大切だし、お客さんも満足してくれると思いますよ」
「そうか…よしっ!検討してみよう。もしそうなったら、回収と同時に販売セールスも頼めるかな」
「はいっ!喜んで…」

 こうして、ミキヤとの話を終えたツカサとアイラは、幸せそうな家族の住む家を後にした。
 以前からツカサは、伍堂ミキヤはアンドロイドを機械としてしか見ていない冷たい人間だと思っていた。
 けれど、今日彼と話をしてみて、今は何となく伍堂ミキヤと言う男を好きになれそうな気がしていた。

「それじゃァ、行こうか…アイラ」
「どこへ?」
「家族を作りに…もう、君もお母さんになってもいい頃ではないかな?」
「そうね…子供を育てるのもいいわね」
 二人の行く先は決まった。

 家族がいる事は幸せだ。家族との思い出は大切だ。きっと、アイラはいい母親になる事だろう。
 僕は、アンドロイドのアイラと一緒に人生を過ごす事をまったく後悔していない。
 きっと、アイラのボディの耐用年数が切れる頃には、僕の肉体の耐用年数も切れる事だろう。
 アンドロイドのアイラは、自分に幸せな人生をくれた…それでいいじゃないか。
 ツカサはアイラに微笑み掛けた。

もうひとつのプラスティック・メモリーズ (終り)

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いかがでしたか?本家のアニメと違って、ハッピーエンドの結末を迎えるプラスティック・メモリーズは?
まァ、不幸事の多かった人生を振り返って「こうだったらいいなァ」と思う自分の願望でもありますが(笑)

鬼の部長と言われた伍堂ミキヤは、実は一人のアンドロイドを深く愛するとてもいい人だった…と言うのがミソです。
でも、会社では仕事の為に、アンドロイドの人格を無視して、機械として非情に処分しなければならなかったんですね。
みなさんも、社会人として企業(組織)の論理と、個人の幸せの間にある矛盾に葛藤した事があるだろうと思います。
組織や集団の為に生きてる人は、意に反して自分を殺して、伍堂ミキヤの様に鬼の顔をしなければならないんですよね。
そんな何処にでもある個人の幸福と、集団の論理の狭間にある不条理を理解していただけたらと書いてみた小説でした。
 
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~ Comment ~


こんばんは。

アンドロイドだって感情はあるし
笑も怒りも悲しくもなりますものね。
心に、血が通っていないと思われがちだけど、
実際は人間の方が、冷酷だったり
血が通ってない場合も多いかもしれませんね。

仕事上見せる顏と
実際の顔とのギャップがあるのも
わかる気がしました。
世の中には、どうしようもない事が多く存在して
そうせざるを得ない事との ぶつかり合いがありますね。
押し殺してしまわないといけないことも多いですね。

ハッピーエンドは読んでいても幸せな気分になれますね^^
#2055[2015/06/06 01:16]  yume-mi  URL  [Edit]

Re: yume-mi様 COありがとうございます^^

人間に限らず、犬や猫でさえ好きな人といる時は幸せそうな顔をしてますよね
愛情と言うものは全ての生命に共通なのではないかな?そう思います^^
自分の作風には似合わないハッピーエンドでしたが、喜んでもらえたら嬉しいです♪

泣いて馬謖を斬る(三国志)…可愛がっていた愛弟子を国の為に斬らなきゃならない。
父はアメリカ人、母は日本人…なのに国家の為に日本人と戦わねばならない日系二世。
国家や組織の論理は、決して個人を幸せにはしません。なぜでしょうかね?悲しいです。
#2056[2015/06/06 02:18]  sado jo  URL 

アンドロイドの愛情は人間にプログラムされた偽物だと言うけれど、その人間の愛情も、DNAにプロブラムされたものじゃないか〜そのとおりかもしれませんね。
大切なのは、愛することですね。
#2057[2015/06/06 19:13]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 大切なのは、愛することですね。

「生まれてきてごめんなさい」向野幾世著:扶桑社刊。
…と言う障害を持った子供とその母を描いた実話小説があります。泣けましたね~
愛は人である証だと思います。子供を虐待し、恋人や配偶者を殺す者は犬畜生にも劣る!
そう言うヤツこそ「生まれてごめんなさい」だと思いますね。いや、ホントに。
#2058[2015/06/06 20:00]  sado jo  URL 

愛情を向ける対象が人間であっても、
ギフティアであっても、そこに愛があれば、
本物の愛なのかは関係がありませんもんね~。
大事なのは愛しているという事であって、本物かの議論よりそれが必要ですしね(´∀`)
#2059[2015/06/06 22:28]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 大事なのは愛しているという事であって、本物かの議論よりそれが必要ですしね(´∀`)

有名な映画「ある愛の詩」で、恋人を白血病で亡くした主人公が言いましたよね。
「後悔しない。それが愛だ」と…誰かを愛すると言う事は決して後悔しない事。
愛するという事…それ自体が本物であって、他の理由は関係ないんですよね~^^
#2060[2015/06/06 23:12]  sado jo  URL 

肉体が滅んでも、想いや精神は残るものなのか?

最近はそういうことをよく考えますね

あの2組の人骨もそうですし
#2061[2015/06/07 19:44]  blackout  URL 

Re: blackout様 COありがとうございます^^

> 肉体が滅んでも、想いや精神は残るものなのか?
> 最近はそういうことをよく考えますね

自分は神を信じていないので、魂やあの世があるとは思っていません。
でも、人や生物は、言葉や鳴き声以外の精神意識の伝達手段を備えているはずです。
個体の記憶は死とともに消えますが、精神意識は個人や集団の中に伝播して残る。
だから個性が生まれ、意識や肉体(形態)の進化が生じるんだと考えています。
テレパシーと言うか?残留思念と言うか?特定の意識が場を形成してる例もあります。
親が教えた訳でも無いのに、何千年も憎しみ合ってる一族や集団もありますからね。
#2062[2015/06/08 00:37]  sado jo  URL 














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