シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼まぼろし」
まぼろし 小説本編

まぼろし 第7話 「雪女」 (1)

雪女

<オリジナル/恋物語/ファンタジー/ミステリー>

人の目はすべてを見ている訳ではありません。この世には人に見えない世界があります。
これから、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間と空間に入って行くのです。

 一寸先も見えないほどの猛吹雪が辺り一面に吹き荒れていた。
 茂吉は吹雪を避けようとして、ひたすら山の中をさまよい歩いた。
 茂吉は猟師だ。小さい頃から父親と山歩きをして山の事はよく知っている。
 だが、さすがの茂吉も、この猛吹雪の中ではなす術がなかった。
(早ぅ隠れる場所を見つけなければ凍え死んじまうべな)
 すでに足は凍えて感覚がなくなり、踏み出すがんじきを重くすら感じた。
(もうだめか…?)そう思った時、茂吉は目の前に見覚えのある洞窟を見つけた。
 それは小さい頃、父と山歩きをしていた時に見つけた洞窟だった。
「えぇか、茂吉…この祠には絶対に入っちゃなんねぇぞ。中には恐ろしい魔物が住んどるけぇな」
 父にそう注意された事を思い出した…でも、今は祠の中に隠れて吹雪を避けないと凍え死んでしまう。
 迷っている暇などない!茂吉は意を決して、鉄砲を構えながら祠の中に入った。
(もし、魔物が出て来たら撃ってやるべ!)そう思いながら、火縄を取り出して火を点けて準備した。

 火縄の薄明かりに照らされた祠は綺麗な半円形だった。床も壁も何だかつるつるした石でできているようだった。
 恐る恐る壁を触ってみると、石と言うよりも、まるで磨いた鍋のような手触りだった。
 そうして、茂吉が祠の奥の方に目をやると、何かがチカチカと光っているのが見えた。
(ははァ、あれが魔物の眼だべな…さァ、掛かって来い!)茂吉は火縄を鉄砲の中に仕込んだ。
 けれど、いくら身構えて待っても、その眼は茂吉に襲い掛かっては来なかった。
(妙だべな?魔物の奴、動こうともしねぇ…)
 不思議に思った茂吉は、鉄砲を構えながら、一歩一歩慎重に光る眼に近づいて行った。
(よしっ!今だ!)鉄砲の引き金を引こうとした茂吉は、びっくり仰天してひっくり返りそうになった。

 火縄の薄明かりに照らされたそこには、若い女が倒れていた。チカチカする光は女が出していたのだった。
 それは見た事もない美しい女だった。妙な事に頭は白髪なのに顔は若々しく、身体にはさらに白い衣装を纏っていた。
 そっと触ってみると、その衣装はまるで絹のようにスベスベした手触りがする。だが女の身体は冷え切っていた。
 茂吉はあわてて女の手を取った(脈が弱い…このまんまでは死んでしまうべ。助けてやらなければなんめぇ)
 女を抱き上げた茂吉は祠の入り口へと急いだ。外に出てみると吹雪は少し小止みになっていた。
 そこからは、どこをどう走ったのか覚えていないほど、茂吉は必死になって女を抱えて山を降りた。
 麓の小屋に帰って来た茂吉は、取るものも取りあえず火を熾して、身体を暖めるために囲炉裏端に女を寝かせた。
 一晩中寝るのも忘れて、女の手や足をマッサージしている内に、疲れきった茂吉はついうとうとして寝てしまった。

~続く~

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~ Comment ~


どこかの記事でコメントかもしれませんが(汗)

目に見えない世界や力というのは、確実に存在すると思ってます

とはいえ、自分は無神論者ではありますが
#2167[2015/06/30 19:23]  blackout  URL 

Re: blackout様 COありがとうございます^^

> 目に見えない世界や力というのは、確実に存在すると思ってます
> とはいえ、自分は無神論者ではありますが

自分も同じく無神論者です(笑)
とは言え、人は科学的に言っても、宇宙のたった4%しか見れてない事も知っています。
「なぜ生まれたのか?」「なぜ生きてるのか?」人はDNAは見れてもその意思は掴めません。
近い内に、そんな哲学的な?お話を小説にしようと思っています^^
#2168[2015/06/30 19:58]  sado jo  URL 

今度のお話は雪女なのですね~。
一先ず麓の小屋に連れて帰ってきましたが、
続きがどうなるのか楽しみにしてますね^^
#2169[2015/06/30 21:00]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 一先ず麓の小屋に連れて帰ってきましたが、
> 続きがどうなるのか楽しみにしてますね^^

山の中の洞窟で倒れていた美女…と来ればいかにも妖しいですね~?
この世のものならぬ妖怪か?はたまた魔性の女なのか?それとも…?
最期の最期にドンデン返しになるかも知れません。お楽しみに^^
#2170[2015/06/30 21:11]  sado jo  URL 

雪女の画像にやられてしまいました。
こんな美女になら…、そう思ってしまうのが、怖いですね。
#2171[2015/06/30 21:33]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> 雪女の画像にやられてしまいました。
> こんな美女になら…、そう思ってしまうのが、怖いですね。

そうですね~「俺は騙されんぞ!」と思っても、体が言う事を聞かない。
男のサガってどうしようも無いですね~…酒と煙草は絶てても、女は絶てない。
そう言えば、オバマ大統領も奥さんと結婚したいが為に、禁煙したそうです(笑)
#2172[2015/06/30 22:12]  sado jo  URL 

連載開始ですね♪(//∇//)
いざなわれる始まりに引き込まれました。
また、てっきり都会が舞台だと思い込んでいたので、雪山から始まるシーンに驚きました。
彼女が雪女の可能性が高いと予測しているので、暖めたりさすったりしたら溶ける!……と彼女の心配をしてしまいました ^_^;
ごめんなさい。雪女の方を応援しています(汗)
#2175[2015/07/01 21:05]  ヘタリーナ風鈴  URL 

Re: ヘタリーナ風鈴様 COありがとうございます^^

> 彼女が雪女の可能性が高いと予測しているので、暖めたりさすったりしたら溶ける!……と彼女の心配をしてしまいました ^_^;
> ごめんなさい。雪女の方を応援しています(汗)

この小説は、もちろん伝説の「雪女」が題材ですが、このひねくれた私が、正直に雪女を書くとは思ってらっしゃらないですよね~(笑)
一見、古風なストーリー展開だと思わせといて、最期に 「アァレ~!」…なんてね?
読んでいただく有り難い読者を翻弄する悪い作家だ!と反省しながら書いてます(笑)
#2176[2015/07/01 21:31]  sado jo  URL 

こんばんは
画像の雪女綺麗ですね
話の続き気になります
#2177[2015/07/02 00:00]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様 COありがとうございます^^

> 画像の雪女綺麗ですね
> 話の続き気になります

Mさんもおっしゃてましたが、儚くて美しい女性に男は弱いんですよね~
絵なら「竹久夢二」、文学なら「谷崎潤一郎」の描く女性になるかな?
憑り殺されても惹き付けられてしまって…男ってしょうが無いなァ(笑)
#2178[2015/07/02 01:11]  sado jo  URL 














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