シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼まぼろし」
まぼろし 小説本編

まぼろし 第7話 「雪女」 (2)

ふと目が覚めると、もう夜が明けていて、囲炉裏端で寝ていた女が不思議そうな顔をして茂吉を見ていた。
「おぉっ!良かった~…生き返ってくれたんべや」茂吉は嬉しそうに言った。
「ここはどこですか?」そう女は茂吉に尋ねて来た。
「おらんちだべ…あんたが祠の中で倒れて死にそうになってたもんで、運んで来たんだべや」
「私を助けてくれたんですか?」
「あァ、おらがめっけなかたら危ない所だったべ~」
「助けていただいてありがとうございます」
 そう言って女は身体を起こそうとしたが、ふらついてよろめいてしまった。
「あっ!まんだ無理したらいかんべ…じっと寝てろや。今、暖けぇもん作ってやっからな」

 そう言って女を寝かした茂吉は、台所から鹿の干し肉と刻んだ山菜を入れた鍋を持って来て囲炉裏に掛けた。
 そうして雑炊を作って椀に取り、ふ~ふ~息を吹いて手頃な温度にしてから、匙で女の口に運んでやった。
「どうだ、口に合うか?」
 茂吉が心配して尋ねると、女はこっくりとうなづいて言った。
「ご親切にしていただきありがとうございます」
「なぁに…困った時はお互い様だべ。気にせんでえぇよ」
 殺生を生業にする猟師とは言え、茂吉は気性のやさしい男だった。
 茂吉の作った雑炊を食べた女は、少しばかり落ち着きを取り戻した。
 そう言えば、茂吉は女を助けるのに必死で、まだ彼女の名前も事情も聞いていなかった。
「おらァ、茂吉って言うだが、あんたは何てぇ名だ?」
「はい、雪と言います」
「雪さんかァ、えぇ名だべぇ…で、どっから来なすった?」
 茂吉にそう問われた雪は、困ったような顔をして戸惑っていた。。
「あ、えぇよ…えぇよ…無理に思い出さんでも…」
(死に掛かってたくれぇだ。きっと記憶を無くしてしまったにちげぇねぇ)
(立派なべべ(衣装)を着てる所を見ると、大方どっかの名家の娘か、大棚の娘さんなんだろうな)
(山に遊びに来て、誰かと逸れて迷っちまったのか?…若いのに髪が白いのは、大病を患ったせいかもしんねぇな)
 茂吉はあれやこれやと想像しながら雪の事を考えた。
「あの…私」雪はちょっぴり不安そうな顔をして茂吉を見た。
「あァ、心配せんでえぇよ…雪さんの身体がよぅなるまで、安心しておらっちにおりゃァえぇ」
「はい、済みません」こっくりうなづく雪に、茂吉はそっとやさしく布団を掛けてやった。

~続く~

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~ Comment ~


茂吉の人柄の良さ過ぎが、何故だか気の毒に思えてきました……。
それもこれも、作者のせい?(´・ω・`)
本来なら、これがきっかけで仲睦まじい夫婦になってほしいと願うところなのですが…。
#2179[2015/07/02 05:49]  ヘタリーナ風鈴  URL 

Re: ヘタリーナ風鈴様 COありがとうございます^^

確かに、茂吉は作者の写しかも知れません…いや、そんなに優しくはないけど(笑)
おっしゃる通り「夫婦」と言う言葉は、この物語の重要なキーワードになりますね^^
たとえ身分が違っても、夫婦(みょうと)になれたら、幸せでなんすけどね~(謎)
#2180[2015/07/02 14:38]  sado jo  URL 

倒れていて助けたとはいえ、
赤の他人にここまで親切にするだなんて茂吉は性格がいいですね^^
さてそれにしても、どこから来たのかと問われた時に、
雪が戸惑っていたのはなにか理由があるのでしょうか。
#2182[2015/07/02 20:36]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様 COありがとうございます^^

> 赤の他人にここまで親切にするだなんて茂吉は性格がいいですね^^

殺生を生業とする猟師なのに、茂吉さんはやさしい男ですよね~^^

> さてそれにしても、どこから来たのかと問われた時に、
> 雪が戸惑っていたのはなにか理由があるのでしょうか。

ソコッ!物語の重要なポイントです。
本当に記憶を無くしたのか?それとも何か言えない事情があるのか?
雪は魔物の娘なのか?それともこの世の女では無いのか?続きをお楽しみ下さい^^
#2183[2015/07/02 20:47]  sado jo  URL 

このあとが怖いですね。
悪意はなくても、ひどい展開になりそうな気配が…。
#2184[2015/07/02 21:18]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様 COありがとうございます^^

> このあとが怖いですね。
> 悪意はなくても、ひどい展開になりそうな気配が…。

茂吉さんは、どうも雪女に惚れてしまいそうな気配ですね~
雪女?を愛して大丈夫なんでしょうかね?…続きをお楽しみ下さい^^
#2186[2015/07/02 22:13]  sado jo  URL 














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