シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第1章 「可能性の未来へ」 (6)

憲兵
民間人の女性を尋問する憲兵隊(日本軍の憲兵は鬼だったそうです)

 天雲遼と陣内亮は、水兵たちに銃を突き付けられて「雪風」の艦内の一室に連行された。
 部屋の中は、まるで憲兵隊の尋問室のようで、腕に赤い腕章を巻いた古参兵と、その部下らしい二人の男がいた。
 部屋の中には鉄格子をはめた獄舎があり、頑丈なテーブルと鉄で出来た肘掛付きの椅子が備えられていた。
「憲兵兵曹長殿!米軍の諜報員を捕虜にしてまいりました」班長が敬礼をして言った。
「おぉ!ご苦労…よくやったっ!」
 憲兵兵曹長と呼ばれたいかつい顔の男が、班長とその部下たちをねぎらった。
 さっそく、同じ赤い腕章を腕に巻いた憲兵隊の二人の部下が、遼と亮を乱暴に掴んで引き立てた。
 銃を突き付けられたままの二人は、なす術もなく、椅子にベルトで手足を縛り付けられてしまった。
「これが捕虜から押収した証拠品であります」
 班長の部下たちが、遼と亮から奪ったバッグやカメラ、ノートパソコンやスマホをテーブルの上に並べた。
「では、これで…私どもは任務に戻ります」班長は憲兵兵曹長に敬礼して、部下を連れて部屋を出て行った。

 憲兵兵曹長はジロジロと遼と亮を眺めると、テーブルの上に置かれた二人の持ち物を調べ始めた。
「ふむ…どれもこれも敵性語だらけだな。米軍の諜報員に間違いなかろう」
「あのぅ…これは何かの間違いでは?」椅子に縛られたままの遼は、憲兵兵曹長にそう言った。
「貴様ら、名前と所属と階級を言えっ!」顔を上げた憲兵兵曹長は、怒鳴り付ける様に言った。
「自分は天雲遼と言います。軍事雑誌「旭日」の記者です」遼はそう答えた。
「私は陣内亮。遼さんと同じく軍事雑誌「旭日」のカメラマンです」亮もそう答えた。
「ふんっ!ぬけぬけと抜かしおって…本当はロバート・天雲とか、フランク・陣内とか言うんだろう?」
「そんなんじゃありませんよ~…私たちは純粋な日本人です」
「痛い目を見ない内に正直に吐いた方がいいぞ。えぇっ!貴様ら…」
 木刀を手にした二人の憲兵が、これ見よがしに遼と亮の肩を軽く叩いてみせた。
「本当に日本人ですって…お願いですから信じて下さい」亮が懇願するように言った。
「じゃァ、これは何だ?!C・A・N・O・N…敵性文字ではないか?」憲兵兵曹長は、亮にカメラを突き付けた。
「あァ、それはキャノンと言う日本の会社が作ったカメラですよ」
「キャノンだと?…そんな敵性名の会社は大日本帝国にはないぞ。それにこっちもだっ!」
 憲兵兵曹長は、テーブルから遼のスマホを取り上げて、裏表をひっくり返して見ながら言った。
「A・P・P・L・Eか?…確か聞いた事があるぞ。アメリカではリンゴの事をアップルと言うそうだな」
「アップルのスマホは、確かにアメリカ製ですが、買ったのは、間違いなく日本のソフトバンクと言う会社からです」
 だが、どうやら遼と亮の受け答えは、藪から蛇を突き出すようなものだったらしい、すっかり憲兵兵曹長を怒らせてしまった。
「スマホにソフトバンクだとっ?!貴様らアメリカ人は、大日本帝国海軍憲兵隊を舐めとるのかっ!やれっ!」
 憲兵兵曹長が二人の憲兵に命じて、木刀で遼と亮に拷問を加えようとしたその時だった。

~続く~

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<時代背景と法の重さ>
若い世代には分かりにくかろうと思いますが、小説の時代背景は太平洋当時の日本社会を模しています。
当時の日本国の主権は「天皇陛下」にありました。陛下がダメだと言われれば、どんな理由があってもダメだったのです。
ところが、東條英機などの逆臣達は憲法を曲げて解釈し、天皇の主権を無視して戦争を始め、日本を滅亡に至らしめました。
今、日本の主権は「国民」にあります。従って、国民がダメだと言ったら、どんな理由があっても政治家は従わなければならない。
主権を無視する政治家は、国家の逆臣であり、法を損えば、役人や軍人や警察官、一般市民まで質が落ちて国が乱れてしまいます。
現在の日本はその兆候が現れつつあります。法治国家の「法」の重さを、決して軽んじてはならないのです。
敗戦後に海外や国内で、多くの日本兵がB級、C級戦犯として処刑されました。彼らが上を見習って「法」を無視したからです。
 
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~ Comment ~


当時の人から見れば、ここまで敵性語が入り込んだ未来を予想していなかったでしょうね。
けっこううけました。
#2646[2015/09/12 06:50]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 当時の人から見れば、ここまで敵性語が入り込んだ未来を予想していなかったでしょうね。
> けっこううけました。

ははは…大日本帝国憲兵隊から見れば、今の日本人は殆ど米国のスパイですね(笑)
余り数が多すぎて、監禁する獄舎も足りないし、拷問する憲兵も人手不足ですね。
あ、そんな時に自民党が作った「労働者派遣法」が憲兵の補充に役立つのか~?
憲兵にとってはまんざら悪法でもなさそうだ。阿部総理は大日本帝国憲兵の友達?(笑)
#2647[2015/09/12 13:39]  sado jo  URL 

こんにちは🎶

何だかなぁ~。
私は団塊の世代ですが、経済的にそれほど苦労することなく
ある程度の衣食住に恵まれ、社会を憂うこともなく過ごしてきました。

歴史は繰り返されるというのでしょうか?
このような時代が来るとは思ってもなかったです。

ユーモアを交えたお話しに、この方々は何のために生きているのか?
考えさせられつつ、笑いながら複雑な感じで読ませて頂きました(*^-^*)。
#2648[2015/09/12 14:53]  kanmo  URL  [Edit]

Re: kanmo様COありがとうございます^^

> 私は団塊の世代ですが、経済的にそれほど苦労することなく
> ある程度の衣食住に恵まれ、社会を憂うこともなく過ごしてきました。
> ユーモアを交えたお話しに、この方々は何のために生きているのか?
> 考えさせられつつ、笑いながら複雑な感じで読ませて頂きました(*^-^*)

70数年前は、お国=天皇陛下に忠義を尽くす事が、日本人の生き方でした。
それをダシにして「天皇陛下万歳!」と特攻されては、陛下にはご迷惑だったと思います。

貴女も私も、戦後世代は、米国の庇護下で生きて来られました。
今、米国は「70年間、庇護してやったツケを払え」と孫達に迫って来ています。
もし、米国へ恩返しする為に、孫達が米軍と一緒になって中国や朝鮮を攻めれば、戦時中と同様、二千年来お世話になった大陸の方々への恩を、仇で返す事になってしまいます。
ならば、西洋文明をいち早く取り入れた日本人は、東洋と西洋の架け橋になるべきです。
長く苦しい道のりになりますが、それならば、双方の国民に恩を返してあげる事が出来ます。
人の道に外れた行いをする国家に天の加護はありません…ナチスも大日本帝国もそうでした。
私の言う事は間違っていますか?
#2649[2015/09/12 16:48]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
憲兵隊は軍人、民間人関係なく自分たちが気に入らなければ殺人さえ犯す恐ろしい部隊です。
特高警察に武器を持たせたようなものですね。
まさに暗黒の時代ですが、こんな制度を作り上げることを許可したのは昭和天皇です。
東条英機に利用された部分は日中戦争の途中からで、軍部の暴走が始まったのはもっと以前のことです。
昭和天皇に戦争責任が全くないというわけではないでしょうね(*^^)
#2650[2015/09/12 18:27]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 憲兵隊は軍人、民間人関係なく自分たちが気に入らなければ殺人さえ犯す恐ろしい部隊です。
> まさに暗黒の時代ですが、こんな制度を作り上げることを許可したのは昭和天皇です。
> 昭和天皇に戦争責任が全くないというわけではないでしょうね(*^^)

お気持ちは分かりますが、当時の皇室は軍部に加担する佞臣が多く、今の日本の様に、憲法を曲げて解釈して天皇の主権を奪う政治家が多かった。寧ろ、主権者である陛下の意見は通らなかった。
2.26事件当時の資料を見ても、青年将校がなぜ決起したのか?陛下は全然ご存じ無かった。
当時の民の貧困は、佞臣によってまったく陛下に伝わっていない。聾桟敷に置かれていた。
情報化された今なら、終戦記念日の様に、安部政権にチクリと皮肉を言われたと思いますよ(笑)
#2651[2015/09/12 18:51]  sado jo  URL 

異世界なのでこちらの過去と同じかは分かりませんが、
あちらとは時代も違えば環境も違うので、
向こうの常識で扱うしかないですもんね(-ω-)
拷問を加えようとしたその時だった、
と最後にありましたがこの後に何かあるのでしょうか?^^
#2652[2015/09/12 22:20]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 拷問を加えようとしたその時だった、
> と最後にありましたがこの後に何かあるのでしょうか?^^

多分、私の好きな歴史上の人物が登場すると思います^^
その人物によって、遼と亮がこれからどんな歴史的事件に出くわそうとしているのか?
彼らが海に投げ出されたのは「日向灘」でしたね…おおよそ察しは付くと思います(謎笑)
#2653[2015/09/12 22:29]  sado jo  URL 














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