シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第1章 「可能性の未来へ」 (7)

 ガチャリッ!と部屋のドアが開いて、口髭をたくわえた人物が二人の部下を連れて入って来た。
 その人物は、色こそ銀色だが、旧日本海軍とよく似た制帽と肩章の付いた軍服を着て、左胸にいくつかの徽章を付けていた。
 指揮官らしい人である事は、遼と亮には一目で分かった。そして、彼はなぜか背嚢のようなリュックを背負っていなかった。
「あっ!これは艦長殿」憲兵兵曹長は即座に立ち上がって、その人物に敬礼をした。
「米軍の諜報員を捕まえたと聞いたもので、気になって見に来たんだ」口髭の人物が言った。
「はっ!こいつらがその米軍の諜報員です」憲兵兵曹長は、遼と亮を指差して答えた。
「日系人なのか?」口髭の人物は、遼と亮を一瞥してから言った。
「そのようです。鬼畜アメリカ人の血が混じっている汚らわしいヤツらです」
「うむ…本艦隊を探りに来たのか?或いは、別の何かの情報収集に来たのか?」
「それをこれから吐かせようとしていたところでした」
「しかし、憲兵兵曹長。彼らを本艦で尋問するのはまずかろう」
「お言葉ですが、早川少佐…」
「本艦隊に関る事は、旗艦で処理するのが筋だ。まかり間違うと責任問題になるぞ。旗艦に捕虜を移送したまえ」
「はい…承知いたしました」憲兵隊兵曹長はしぶしぶ承諾するしかなかった。
 早川少佐と呼ばれた人物は、憲兵隊兵曹長にそう命じると、悠然と部屋を出て行った。

 天雲遼の頭の中には、去年に取材して「旭日」に載せた記事が浮かんだ。
 連合艦隊の第二水雷戦隊に所属していた駆逐艦「雪風」…その艦長は、間違いなく「早川少佐」だった。
 死を覚悟の1945年4月7日「沖縄特攻天一号作戦」において、日本の駆逐艦「雪風」は米空母艦載機の猛攻を懸命に凌ぎ切った。
 そうして、艦長である早川少佐の指揮の元、生き残った数少ない戦艦大和の乗組員の命を救ったのだった。
 しかし、駆逐艦「雪風」は、戦後の補償金代わりに台湾政府に引き渡されて、とうの昔に廃船になっているはずだった。
 なぜ、こんな所に駆逐艦「雪風」と、とっくに故人となった「早川少佐」がいるのか?
 俺は…いや、俺たちは悪い夢でも見ているのだろうか?あり得ないっ!…俺と亮が同時に同じ夢を見るなんて。
 それとも、俺たちはもうあの渦潮に飲み込まれて死んでいて、二人とも死んだ者たちの世界にいるのだろうか?
 いやっ!そんな事があってたまるか…遼は自問自答しながら考えた。

 何が何だか分からぬままに、遼と亮は手錠をはめられて、憲兵隊兵曹長と二人の憲兵に艦尾まで連れて行かれた。
 ふと二人が上を見上げると、駆逐艦「雪風」の船尾には、まるで飛行機の尾翼のようなテールがそそり立っていた。
(船の舵なら船尾の水の中にあるはずだ?空でも飛ばない限り、こんな構造物が船の上に付いているのはおかしい?)
 遼は不思議に思ったが、じっくり観察する間もなく、憲兵たちに小突かれて船尾の階段を下りて行く他はなかった。
 階段を下りると海面に面したデッキに、船体が膨らんだホバークラフトのような銀色のボートが何台か並んでいた。
 それは奇妙なホバークラフトだった。水面を滑空するホバークラフトには付いてるはずのプロペラがどこにもないのだ。

~続く~

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<未来戦艦大和 新章の予告>
次回の新章にて、ついに天雲遼と陣内亮の二人が「未来戦艦大和」とご対面いたします。
「未来戦艦大和 第1章:美貌の連合艦隊司令長官」 ぜひ、ご期待下さい♪
 
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~ Comment ~


こんにちは~♪
SFの世界ですね。
さっぱり先が予想できません(゚∀゚ ;)タラー

今週もよろしくお願いします(^_-)-☆
#2654[2015/09/14 18:09]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> SFの世界ですね。
> さっぱり先が予想できません(゚∀゚ ;)タラー
> 今週もよろしくお願いします(^_-)-☆

現在と、過去と未来が入り混じった異世界の日本のSF物語ですね~♪
でも、小説が進むにつれて、日本人はどう生きたらいいのか?
幾つかのヒントが出て来ると思いますよ…先のお話をお楽しみ下さい^^
#2655[2015/09/14 18:48]  sado jo  URL 

同じ名前の人物に同じ艦名の駆逐艦と、
こちらの世界からあちらの世界に行ってしまった二人からしたら、
驚きと混乱しかないでしょうね(´∀`;)
そして次回はついに大和と対面を果たすんですね~。
#2656[2015/09/14 20:06]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 同じ名前の人物に同じ艦名の駆逐艦と、
> こちらの世界からあちらの世界に行ってしまった二人からしたら、
> 驚きと混乱しかないでしょうね(´∀`;)

後で明かしますが、同じ物が、違った形で存在するのが量子論で言う「可能性の世界」
そこには、もう一人のツバサさんがいて、違った運命をたどりながら生きています。
この世界の「雪風」や「大和」は名前は同じでも、まったく違うものになるでしょうね^^
#2657[2015/09/14 20:25]  sado jo  URL 

夢か現実かわからない状況では、自分がおかれた状況を冷静に受け入れることができませんね。
さてこれからどうなるか、楽しみです。
#2659[2015/09/14 22:02]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 夢か現実かわからない状況では、自分がおかれた状況を冷静に受け入れることができませんね。
> さてこれからどうなるか、楽しみです。

どうやら遼と亮は、戦時中の日本に似た世界にいるようですが?
米軍のスパイと間違えられて、何を言ってもちんぷんかんぷんですね~><
この後、話が進んで行くにつれて、一大SFスペクタクルになりそうです。
何てったって登場するのが「戦艦大和」ですからね~♪派手な撃ち合いシーンも有りです^^
#2661[2015/09/14 22:15]  sado jo  URL 














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