シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第2章 「若き連合艦隊司令長官」(2)

 亮は思わず大きな声を上げながら、手錠を掛けられている事も忘れて、カメラのファインダーをのぞく仕草をした。
 カメラマンの本能からだろううか?シャッターチャンスを見逃せなかったのだろう。
「こら~っ!静かにせんかっ!」たちまち憲兵の叱り付ける声が飛んで来た。
「まァ、いいじゃないか。ゆっくり拝ませてやれ…アメリカ人にゃァ、こんな見事な戦艦は作れんだろうからな」
 憲兵兵曹長が、興奮気味の亮を見ながら、勝ち誇ったように笑って言った。
(戦艦大和?…確かに艦橋の形は大和だ。でも、大和はとっくの昔に米空母艦載機の攻撃を受けて、鹿児島の沖に沈んだはずだ)
 遼は目の前の光景が信じられなかった(これは戦艦大和の亡霊か?やっぱり俺たちは死んでいて、死者の国にいるのかも知れん)
 ふいに遼の頭の中に、幼い我が子と妻の笑顔が浮かんだ…無性に悲しくなって来て、泣きたい気持ちになってしまった。
(もう現世には帰れないんだろうか?そりゃ、死んじまったんだから当たり前だよな…もっと優しくしときゃァ良かった)
(仕事とは言え、取材から取材へと跳び歩いて、あんまり構ってやれなかったなァ~)遼は悼たまれない後悔の念にかられた。
 水上滑空艇は発光信号を出しながら、大和の側舷に沿ってゆっくり艦尾の方に滑って行った。
(すごい戦艦だ!ゆうに250メートルは越える…それにしても、船体の銀の鱗は何なんだろう?あの世じゃみんな銀色なのか?)
(確か、極楽って金色のはずだったよな~…じゃァここは地獄か?)気を取り直した遼は、開き直ってあの世を観察する事にした。
 大和の船尾からチカチカと発光信号が送られて来て、遼と亮を乗せた水上滑空艇は大和の船尾に接舷した。
 上を見上げると、少し斜めに傾いた巨大な垂直尾翼が二枚そそり立っていた。形は米軍のジェット戦闘機の尾翼によく似ている。
 すぐに水上滑空艇が接舷した船尾の喫水線上にあるハッチが開いて、遼と亮たちは大和の中に吸い込まれて行った。

 遼と亮が憲兵に連行されて入った部屋は、やはり、海軍憲兵隊の詰め所だった。
 だが、それは駆逐艦「雪風」のものよりも遥かに大きく、鉄格子の入った獄舎も複数備え付けられていた。
 腕に赤い腕章を巻いて、肩に階級章を付けた士官らしき男が、自分のデスクから立ち上がって横柄な態度で彼らを迎えた。
 憲兵兵曹長は、さっそくデスクに歩み寄ると、士官らしき若い男に敬礼をして言った。
「墺賀憲兵大尉殿、米軍の諜報員を捕虜にしてまいりました」
「よくやってくれた。お手柄だ…そいつらがその諜報員か?」
 墺賀憲兵大尉と呼ばれた男は、遼と亮を蔑むような目で見ながら言った。
「はい、そうであります。日本人の血が混じってるくせに、鬼畜米英に加担する汚らわしいヤツらであります」
「ふんっ…売国奴めらか。焼きを入れる前に取り合えず報告を聞こう」
「はっ!かしこまりました」
 墺賀憲兵大尉と憲兵兵曹長が話をしている間に、遼と亮は大尉の四人の部下に椅子のベルトで縛り付けられた。
 それは、駆逐艦「雪風」の憲兵隊詰め所で、二人が縛られた鉄製の椅子と同じつくりのものだった。
 目の前には尋問に使う大きなテーブルが据え付けられていて、その上に遼と亮の持ち物が並べられた。
「では、本官はこれにて「雪風」に帰艦させていただきます」報告を終えた憲兵兵曹長が言った。
「うん、よくやった…兵曹長の手柄は上に報告しておく」墺賀憲兵大尉はそう言って、憲兵兵曹長をねぎらった。
「はい、光栄であります。なにとぞよしなに…」
 そう言って、憲兵兵曹長は墺賀憲兵大尉に敬礼すると、えびす顔で二人の部下を連れて部屋を出て行った。

~続く~

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<自我自讃(笑)>
現代の日本で、これだけ緻密に憲兵の様子を描ける人間は、数少なかろうと思います。
これも私が戦時第二世代で、直に戦時下の日本を経験した方々から話を聞けたお陰だろうと思います。
当時の日本人は、中国(支那)人を「チャンコロ」。韓国・朝鮮人を「チョナソー」。ロシア人を「ロスケ」。
そして極め付きは、アメリカ人・イギリス人を「鬼畜」と呼ぶ様に憲兵に強制されたそうです。
さらに、「日本は戦争に負ける」などとうっかり現実を口に出したら、憲兵に捕まって半殺しにされたそうですよ。
男女、地位、立場に関係無く、規律を破った者は憲兵に引き立てられて折檻されるのが常だったと聞きました。
ましてや、天皇陛下が主催される、神聖な「大日本帝国議会」でヤジなど飛ばした安部首相はどうなる事か?
一度、規律違反で憲兵に引っ立てられて折檻される「安部首相」の悲鳴を聞いてみたい様な気もしますが(笑)
戦時中の「大日本帝国憲兵隊」は国家公認の極右集団だったんですね~!!
ネット右翼さん。輝かしき大日本帝国…まだ見ぬあこがれの別世界にタイムスリップして見ませんか?(笑)
 
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~ Comment ~


こんにちは^^

ロスケといえば正露丸も元は征露丸といってロシアを征服する意味があったのを
今の日本人もロシア人もどれくらいの人が知ってるのかな。
名前が変わったくらいだから今表立ってそんなこと言ったら問題ありそうだけど。

安部さんの「あべしっ!」を聞いてみたいものです(笑)。
お前はもう(首相として)死んでいる。
#2719[2015/09/24 09:36]  西條すみれ  URL  [Edit]

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> ロスケといえば正露丸も元は征露丸といってロシアを征服する意味があったのを
> 今の日本人もロシア人もどれくらいの人が知ってるのかな。
> 名前が変わったくらいだから今表立ってそんなこと言ったら問題ありそうだけど。

今、そんな侮蔑語を使ったら大変です><…一部右翼は使ってますが(笑)
憲兵や右翼で思い出しましたが(ISや独裁的指導者も含め)突っ張ってムキなってる連中って、滑稽でからかい甲斐があるんですよね~♪
昔のヒトラーや東條英機の風刺画は、結構面白い…今の阿部首相の風刺画も笑える。
海外でたくさん出回ってます。どの国でも、お上と庶民感情は違うのが良く解ります。
憲兵が無理矢理作った侮蔑語や翻訳敵性語の類を、一度纏めて紹介しようと思います。
彼らは大真面目に作ったんですが、見る方にはお笑いにしか見えないのが面白い(笑)
#2721[2015/09/24 13:13]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
戦前には憲兵隊より怖い内務省警保局直属の特別高等警察がありましたよ。
憲兵隊が民間人相手に暗躍したのは関東大震災だけですね。
それ以外は治安警察法から治安維持法と名前を変え、国民を徹底的に弾圧したのは特高警察です。
憲政の神様と言われた尾崎幸雄でさえ「不敬罪」容疑で逮捕されたくらいですからね(*^^)
#2722[2015/09/24 18:09]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 戦前には憲兵隊より怖い内務省警保局直属の特別高等警察がありましたよ。

憲兵もだけど、大日本帝国軍政下の特高警察は悪名高いですね…国民を捕らえて拷問し放題><
法治国家の基礎を築いた、偉大な尾崎幸雄さえ逮捕するとは、もう権力の名を借りた無法者。
憲法や法律を遵守せず、国家に都合の悪い思想や、人間を暴力を使って排除しに掛かります。
警察とか軍隊と言う国家組織は、時に法を逸脱した犯罪組織となる事がしばしばありますね。
#2723[2015/09/24 19:11]  sado jo  URL 

自分たちが知っているのは艦載機によって沈められた大和ですもんね~。
でも、目の前に浮いているのも大和ですし、
二人からしたら本当に不思議で仕方ないでしょうね^^;
#2724[2015/09/24 20:29]  ツバサ  URL 

誤解され、大ピンチですね。
どう展開していくか。
楽しみです。
#2725[2015/09/24 20:46]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 自分たちが知っているのは艦載機によって沈められた大和ですもんね~。
> でも、目の前に浮いているのも大和ですし、
> 二人からしたら本当に不思議で仕方ないでしょうね^^;

赤い空と海、そうして銀色の鱗に覆われた「戦艦大和」何もかもが不自然です。
確かに遼と亮から見たら、死んであの世に来てるとしか思えないでしょうね~
そうすると、銀色の服を着た憲兵は地獄の獄卒か?そうしか見えないですよね。
#2726[2015/09/24 20:52]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 誤解され、大ピンチですね。
> どう展開していくか。楽しみです。

連合艦隊旗艦「戦艦大和」に連行された遼と亮…これから憲兵に拷問されるんでしょうか?
この異世界で救ってくれる人は誰もいないのか?…って、鬼気迫るシーンですよね~♪
#2727[2015/09/24 20:59]  sado jo  URL 

こんばんは~♪
憲兵隊長が甘粕でなくてよかったですね。
甘粕が出てきたらお仕舞いですよー
#2730[2015/09/25 19:46]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 憲兵隊長が甘粕でなくてよかったですね。
> 甘粕が出てきたらお仕舞いですよー

「甘粕正彦憲兵大尉」多数の反体制派を捕えて殺害し、右翼の中心として悪名高い人物。
だが、国家権力をバックにした横暴は誰でも出来る事で、タダの弱い者イジメにしかならない。
今の日本にもこの手の右翼は多いが、果たして彼らは本物の「愛国者」と言えるだろうか?
対して、2.26事件で青年将校のリーダーだった「安藤大尉」は、民の苦境を憂い、民を救う為に「強い相手」に立ち向かった真の右翼であり「愛国者」だった。
弱い民をイジメて、戦争に負けると全て放り出して自殺するヤツと、処刑直前まで民の窮状を訴え続けた「安藤大尉」と、どちらが本物の右翼であり、本物の男なのだろうか?自分は彼が好きです^^
#2732[2015/09/25 22:24]  sado jo  URL 














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