シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

実話「事実は小説より奇なり」

事実は小説より奇なり 番外編 その1

子育て幽霊

世にも泣けてくる怪談 「飴を買う幽霊」
これは世藻末茶が酒場を経営してた頃に、よくお客様に話して差上げた世にも泣けてくる怪談です。

その昔、京の都のはずれに古びた一軒の飴屋がございました。
今日も今日とて客は少なく、日はすでに暮れ、飴屋の主は雨戸を閉めて店じまいしたのでございます。
ところがしばらくして、トントン、トントン…と、誰かが雨戸を叩く音がするではございませんか。
「ごめんくださいまし、ごめんくださいまし…」と、何やらか細い女の声がいたしまする。
いぶかしく思いながらも、主が雨戸を開けますと、店先に白装束の女が立っているではございませんか。
「これで飴を売ってくださいまし」と、その青白い顔の女は一文銭を差し出しまする。
不審に思いながらも、主は銭を受け取りましたが、女の手は凍る様に冷たかったのでございます。
一文分の飴を渡しますと、女は無言で頭を下げ、宵闇の中に溶け込む様に消えて行ったのでございます。
それから、次の夜も、次の夜も、決まって店じまいした後に、女は飴を買いにやって参りました。
そんな事が六夜続き、七夜目になりましたが、なぜか女は現れないのでございます。
妙に思った主が外を覗きますと、軒先に黙ったままうつむいて立っている女いるではございませんか。
主は早速用意していた飴を包み、女に手渡そうといたしましたが、女は受け取ろうといたしません。
「どうしたんだい。遠慮せずに持ってお行きよ」
「それが、銭を使い果たしてしまって、今夜は手持ちが無いのでございます」
「構わないよ。いいから持ってお行きなさい」
そう言って女に飴を手渡しますと、女は何度も何度も頭を下げて立ち去って行きました。
さすがに哀れに思った主は、こっそりと女の後をつけて行ったのでございます。
そうしますと、女はとあるお寺に入って行き、墓地の墓の前でふっと消えたではございませんか。
驚いた飴屋の主が、その女の事を寺の住職に告げますと、数日前に身重の女を埋葬したと申します。
人を集めて墓を開けますと、棺の中に死んだ母親にしがみついて、飴をしゃぶっている赤子がおりました。
墓の中で子を産んだ女は、育てようにも乳が出ず。飴を買い求めにやって来ていたのでございましょう。
しかし、棺に入っていた「六文の三途の川の渡し銭」も尽きて、さぞかし困っていた事でございましょう。
(六文銭 ※江戸時代は、死者が三途の川を渡る舟賃に、棺桶に銭六文を入れて葬ったそうでございます)
わが子を思う母親の霊が、飴屋の主を導いたのか、赤子は寺に引き取られて育てられたそうでございます。

この話を聞いた時、さすがに親不孝者の私も、わが子を思う母親の愛の深さに泣きました。
が、疑い深い私は泣きながら、つい考えてしまったのです「話が出来過ぎてはいないだろうか?」と…
そうして考えに考えた末、ある真相にたどりついたのでございます (続きを読む。からご覧下さい)
 


<話の真相>
飴屋の主は、寺の墓地の桜の木で、首をくくろうとしておりました。
代々続いた店屋は古くなり、家業も傾いて、借金取りに責め立てられ、もはや死ぬしかございませんでした。
さて、首に縄を掛け、いよいよと言う時に、ふと飴や風車が供えられた赤ん坊の墓が目に入ったのでございます。
主は思いました「母親は幼くして死んだわが子を何と思うだろう」とっさにある話を思いついたのでございます。
主は思いついた話を書き留め、僅かばかり残った銭を持って瓦版屋に行き、それを京の町に撒いたのでございます。
翌日、飴屋の店先には「子育ての飴」を買い求めようとする人々の長蛇の列が出来ておりました。
そうして、借金を返して家業を立て直したたばかりか、さらに数軒の店を持つに至ったのでございます。
おそらく日本初のヒットコマーシャルであったでしょう。今なおこれほどの宣伝効果を上げたC.Mはございません。
およそ人に何かを売らんと欲せば 「心に訴える」 を基とすべきでありましょう。物書きとて同様でございます。
仮に後になってから「作り話にまんまと騙された」と分かったとしても、こんな話なら悪い気はいたしますまい。
今でも京都には、くだんの「子育ての飴」を売る店が幾つかあるそうでございます。
京都にお立ち寄りの節は、この話を思い出しながら覗いてみてやって下さい。

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こんにちは

なるほど、考えたものですね。
拍手コメありがとうございました。
#45[2014/02/11 16:17]  エリアンダー  URL 

Re: 恐縮いたします

あなたのBlogで随分「からくり」の勉強をさせていただきましたから…
何と言ってもエリアンダーさんはからくりの師匠でございます^^
#46[2014/02/11 19:51]  佐渡 譲(じょう)  URL  [Edit]














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