シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

随想/論文集

南京のシンドラー 「ジョン・ラーベ」

ジョンラーベ02
映画「ジョン・ラーベ ~南京のシンドラー~」のシーン

私の愛読書の一つに1世紀のギリシャの歴史家、プルタルコスが書いた「プルターク英雄伝」と言う歴史書がある。
ギリシャとローマで活躍した人物を、各々の業績を踏まえた上で対比させた歴史書で、別名「対比列伝」とも言う。
世界が狭かった時代なのに、公平にギリシャ人とローマ人を描き、決して母国びいきをしていないのには驚かされる。
読むと分かるが、人としての行為を為したかどうか?が人物の判定基準となっている。有名な英雄よりも、一地方の市民政治家
に多くのページを割いて、高い評価を与えている。いかに英雄的行為を為そうが、人間としてダメなものはダメなのである。
ヨーロッパ社会において、古い時代から「人道」と言うものが存在していた事は、まったくもって驚異としか言う他は無い。

南京攻略図
日本軍の南京侵攻図:ジョン・ラーベが作った「安全区」が見える。
日本軍は、南京城の四箇所の狭い城門を破って市街地に突入した。
城門を破るの大変だったろうなァ…と、ふと兵士の身になって思う。

1937年、南京事件が起きた時、一人のドイツ人が多くの中国人の命を救った。何と、そのドイツ人は中国在住のナチス幹部だった。
「ジョン・ハインリヒ・ラーベ」彼は当時、ナチスの軍産企業「シーメンス社」の中国支社長として南京に滞在していたそうである。
日本軍による南京攻城戦の際に、10数人の外国人と組織した「南京安全区国際委員会」の委員長となり、民間人の保護に尽力した。
シーメンスの所有地に、高々とハーケンクロイツ旗を掲げ、避難民を招き入れて戦禍から救った…と、後に国際社会から賞賛された。
南京陥落後は、先頭に立って非人道的行為の防止に努めたが、日本軍によって南京を追放され、母国に強制送還される事となった。
ドイツ政府に、南京事件の資料や写真を押収され、戦後はナチス幹部である事を理由に逮捕され、不遇の晩年を送ったそうである。
人の為に善い事をしたからと言って、善い報いを受けるとは限らない。人々や時代が歪んでる場合は、逆の仕打ちに遭ったりもする。
だが、その人は歴史の中で永遠に輝き、その時の歪んだ人々や時代は忌み嫌われ、歴史に悪業の墓標を刻んで葬られる事になる。
近年、そんな日本人が増えて来たのを残念に思う。日本人が世界の誰からも庇ってもらえない様にならねば良いが…と心配する。

ラーベの業績は、2009年に20世紀フォックスで映画化され、世界中で大ヒットしたが、日本の各映画館はこの映画の上映を拒否した。
「シンドラーのリスト」はドイツ人が悪役だからよくて、「ジョン・ラーベ」は日本人が悪役だから都合が悪いと言う事なのだろうか?
或いは、南京事件を否定して歴史修正を企む政治家や、首相も会員になってる日本会議などの圧力団体の差し金なのだろうか?
アメリカでは、米軍や政府が行なった悪事を描いた映画が、幾つも上映されて来ている…何と日本人の了見は狭い事だろう(笑)
そのお陰で 「世界中の人々が知っている 日本人だけが知らない」 などと言う嫌味なキャッチフレーズまで付けられてしまった。
以前も言ったが、都合が悪かろうが良かろうが、事実は隠さずに公開しなければならない。でないと、証拠隠滅罪で有罪にされる。
シンドラーもナチス党員だったし、ラーベもナチスの幹部だった。ナチスだから大日本帝国だからと言って、全部が悪人とは限らない。
1940年、リトアニア領事だった杉原千畝は、ナチスの迫害から逃れて来た6000人のユダヤ人に渡航ビザを発給してその命を救った。
その杉原に、帝国政府は公職追放をもって報いた。彼の名誉が回復されたのは、死後大分経った2000年になってからの事だった。
ちなみにこの時期、ウィーン駐在の中国外交官だった何鳳山も3000人のユダヤ人を救った。どの国にも偉大な人間はいるものだ。

昔、映画会社で知り合った女性が、アメリカ人と結婚し、日本とアメリカの歴史認識の違いから、夫と口論になったそうである。
夫は「戦争中の日本人は、よその国でたくさん野蛮な事をして来た。でもMr.センポ・スギハラの様に人の命を救った人もいる。
なので、僕は日本人を野蛮人だと思っていない。だから君と結婚した。日本人が野蛮人だったら結婚出来ないよ」
と言って笑ったそうである。当時は日本の教科書に無かった「杉原千畝」の業績が、アメリカの教科書にはちゃんと出ていたのだ。
私は慌てて図書館で杉原千畝の事を調べた。まさに「世界中の人々が知っている 日本人だけが知らない」カルチャーショックだった。
政府の命令に背いた…ただ、それだけの理由で長い間、こんな凄い人を闇の中に葬っていたのか?日本人の体質に完全に失望した。
杉原千畝がいなかったら、日本人は残虐民族のレッテルを貼られていただろう。彼はその尊い行為で全ての日本人まで救ったのだ。
南京のシンドラー「ジョンラーベ」の映画はDVD化されて、レンタルされているので、一度借りて来てご覧になったらいいと思う。
日本のシンドラー「杉原千畝」を描いた映画は、今年の12月5日に全国公開される予定なので、ぜひご覧になって欲しいと思う。

「人は地位や、家名や、門閥によって評価されるものでは無い。その為した行為によって評価されるものだ」
とプルタルコス自身も述べている。さて、プルタルコスが20世紀の歴史的人物を書いたなら、誰を評価するだろうな~(笑)
私はかっての大日本帝国の人々の子孫では無く、 杉原千畝に野蛮人の汚名から名誉を救われた日本人の子孫だと思っている。
だから、その名誉を傷付けない様に、中国人だろうと、韓国・朝鮮人だろうと、なに人だろうと命を守る義務があると考えている。
日本人はくだらん事を誇りにするより、これほど世界的に評価されている日本人を先祖に持った事を誇りにした方がいいだろう。
杉原千畝が為した偉大な業績に関しては、次回にじっくりと話したい。


映画「ジョン・ラーベ」 ~南京のシンドラー~ 予告編

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<誤った思想教育が招いた戦時中の悲劇>
南京事件の背景には、中国・朝鮮人ばかりか、欧米人までを人間と見なさない大日本帝国の差別に満ちた思想教育があった。
なので、日本軍の兵士は中国や朝鮮半島、マニラやバターンで国際法に反した残虐行為を行なって、戦後の裁判で大勢処刑された。
彼らに罪を問うのは可哀想だ…彼らは政府に教育された通りの事をやっただけで、元凶は、そんな思想教育を施した政府にある。
「教えられた通りにしただけなのに、なぜ死刑にならなきゃならん?」何も知らずに処刑された兵士の無念は政治家には分かるまい。
後にアメリカは、住民の住む東京・大阪・名古屋を無差別爆撃し、広島・長崎に原爆を投下して非戦闘員の大量虐殺を行なった。
普通なら世界中から非難の声が上がるはずである。ところが、世界のどの国にも日本人を庇おうとする者は一人もいなかった。
それどころか「あァ、また日本人が大勢死んだか。ざま~見ろ」だった。恐いのは、日本人が誰にも庇ってもらえなくなる事だ。
今の日本は、再び戦前の様な思想が広がっている。本来ならそんな思想を止めるべき政府が、却ってそれを煽る有様とは情け無い。
後藤さんがISに殺された時、世界の人々は同情してくれた。戦後、70年間努力した日本人が「善き日本人」になった証拠だと思う。
いかに国防に務めても、いかに外交に務めても、思想教育一つで「あァ、また日本人が死んだか。ざま~見ろ」となってしまうのだ。
日本政府が、真に国民を守ろうとするなら「公平な教育」を施し、早い内に「差別思想」や「ナショナリズム思想」の芽を摘み取る事だ。
何事があっても、世界の人々から庇ってもらえる日本人でありたい…いつか、日本人の命を救ったISの司令官の話をしたいと思う。
 
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~ Comment ~


こんにちは^^

マスコミでも中国の偽装とか衛生管理のずさんさが取り上げられて
中国人のイメージが崩れているけど、私も全員がそうだとは思わないし
日本に原爆を落としたアメリカを未だに悪としているわけでもないですね。
情報という武器は恐ろしく、単純な人間はそうだと信じ込んでしまう。
これからは本当に自分の目と意思で真実を見極めなくてはいけない時代ですね。
#2971[2015/11/05 10:39]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> マスコミでも中国の偽装とか衛生管理のずさんさが取り上げられて
> 日本に原爆を落としたアメリカを未だに悪としているわけでもないですね。
> 情報という武器は恐ろしく、単純な人間はそうだと信じ込んでしまう。

中国もだけど、日本も欧米基準…と言う文化にはまだ付いていけて無いからね(笑)
同じ虐殺をしても、日本は追及され米国は追及されない?広島・長崎の方が南京より犠牲者は多い。どちらも罪の無い民間人の虐殺だ!あれは善くてこれは悪いのか?不条理に過ぎる!
神の視点で平等に裁くべき…でないと全て勝てば何をやっても良いになってしまう><
それが欧米の文化とは情けない…真似をした日本も問題あるけどね(笑)
#2972[2015/11/05 11:19]  sado jo  URL 

こんばんは~♪
杉原千畝はシンドラーと同列視してほしくないですね。
本来なら世界でいちばんの人道主義的外交官だったと日本人が誇るべき人です。
シンドラーは営利企業を経営し、工場で働けないユダヤ人は平気でアウシュビッツに送ったことは知られています。
杉原千畝は戦前は松岡洋祐に疎まれ、戦後は汚名を着せられたままでも反論もしないで86歳まで生涯を全うしました。
ふざけているのは日本外務省で米国とドイツ大使館から抗議を受けるまで杉原千畝の存在も否定していたことです。
正式に名誉回復したという日付は確かに2000年10月10日の河野洋平外務大臣演説とされていますが、実際には1991年当時のロシア通として知られた鈴木宗男外務政務次官が外務省の対応を非難して事実上の名誉回復ともいえる幸子夫人への謝罪が最初だと理解できます。
まあそれでも外務省官僚のほとんどは認めていないのが現実です。
これは現在でも続いているのですから呆れますが・・・・・
#2973[2015/11/05 19:24]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

シンドラーがナチスの兵器製造業者であった事は事実です。
ジョン・ラーベも同様にナチスの武器商人でした。それはドイツも認めてます。
だが、杉原千畝も外交官の肩書きを持った、事実上の日本政府のスパイだったのです。
杉原の業績を認めると日本のボロが出る。故に外務省は隠蔽し続けた…と言うのが真実です。
「日本は汚い事はしない綺麗な国だ」 政府も外務省もそう言いたい訳ですよ(嘲笑)
人に手を汚させる国のどこが綺麗かねぇ?…上の悪人達の方がよっぽど人道的です(笑)
#2974[2015/11/05 20:06]  sado jo  URL 

本当にナチスだろうと大日本帝国だろうと、
全員が悪人であるはずがないんですよね。
一括りにするというのも分からなくないですが、
讃えられるべきものは讃えるべきです(´∀`)
#2975[2015/11/05 20:19]  ツバサ  URL 

自分たちの都合で徳が美徳にも悪徳にもかえられるのは、いけないと思います。
自分たちもひどいことをしてきた、そこを反省してから、新たな価値観を構築していくのが大切なのかもしれませんね。
#2976[2015/11/05 20:46]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 本当にナチスだろうと大日本帝国だろうと、
> 全員が悪人であるはずがないんですよね。

ナチスでも大日本帝国でも、人の命を大事にする立派な人もいたんです。
それをみんな政府の都合でダメにしてしまった…バレそうになると闇に葬った。
日本政府が、なぜ杉原千畝の事を何十年も隠したか?…国民は考えた方がいいと思います。
汚れ仕事をやらせておいて、邪魔になったらポイッ!…政治家はマフィアですかね~(笑)
そんな境遇ながら、ジョン・ラーベも杉原千畝も人の命を救った。立派な人間ですよね^^
#2977[2015/11/05 21:39]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 自分たちの都合で徳が美徳にも悪徳にもかえられるのは、いけないと思います。
> 自分たちもひどいことをしてきた、そこを反省してから、新たな価値観を構築していくのが大切なのかもしれませんね。

政治家や政府の都合で、隠したり、出したり、どうにでもなる様な国ではいけない!
人の業績も、国家のやる事も、判断するのは国民なんです。そこを完全に無視してる。
ジョン・ラーベも、杉原千畝も、長い間政府の都合で隠して来たのが問題なんですよ。
あった事は良かろうが悪かろうが、全て明るみに出す…それが本当の民主主義です^^
#2978[2015/11/05 21:50]  sado jo  URL 

こんばんは~♪
岐阜県八百津町の杉原千畝記念館にお出かけになればあなたの間違いがわかりますよ。
彼はスパイではありません。
町岡洋祐に反抗したから、杉原千畝だけ戦後外務省から追放されたのです。
彼の下で働いていた人物たちは全員外務省に復帰しています。
また彼と一緒に旧ソ連に抑留されていた人物も外務省に復帰し高級官僚にのし上がっています。
イスラエルからセンポ・スギハラを知らないかと外務省に問い合わせがあったとき、外務省はそんな人物は外務省には存在しなかったとでたらめな回答をしていたことも判明しています。
どこで杉原千畝がスパイとお聞きになったか知りませんが、それは彼を侮辱する言葉だと思います。
彼は対ロ外交のプロ中のプロで、戦後米国べったりになった日本外務省にとって不都合な人物だと思われただけのことでしょう。
#2979[2015/11/06 19:30]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

杉原千畝の外交事情は複雑でしてね…最初のロシア人の妻は、反革命派の一族でした。
日本政府の命令で、ソ連とドイツの両方から国家の情報を集めていたのは事実です。
その為、ソ連情報部から危険人物とされ、ゲシュタポから命を狙われた事もあります。
多くの機密情報を握ってしまった…と言う訳です。当時の日本は戦時下だったのです。
外務官僚が国家に命じられた仕事をするのは当たり前です。それは彼の責任では無い。
その官僚が、国家の命令に背いて多くのユダヤ人を救った。そこが偉大だと思います。
ちなみに、政府は表向きは命令違反で解任しながら、なお、杉原を欧州に留まらせて情報を集めさせていた様です。
戦後、政府が杉原千畝の件を表沙汰に出来なかったのは、そんな裏の事情があったからで、汚いのは明らかに日本政府ですよ。
#2980[2015/11/06 21:39]  sado jo  URL 














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