シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「呪詛」ダヴィンチコードの謎を解く

「呪詛の構造」と「呪詛返し」

陰陽師

前回は、呪詛と言うものが特殊な呪文では無く、ありきたりの語句を使って掛けられると言う事を説明いたしました。
その方が一般の人々の口に上る機会が多くなり、呪詛を賭ける側には呪詛の拡散と増幅が狙えるからだ…と言う事も説明しました。
そうなると、特に訓練した呪術者で無くとも、誰でも呪詛が掛けられると言う事になります。そして、それはズバリ当っています。
最近ネットで、意見の違う者同士が罵り合う記事をよく見掛けます。まァ、若者が政治に関心を持ち出したのは一面良い事ですが(笑)
「何々人(国)は滅ぼせ」「何々党は消えろ」「何々新聞や、テレビ局は潰せ」随分派手にやってます。見てる分には結構面白いです。
しかし、呪い…或いは憤りの感情を持って、自分の負の情念を拡散しようと図るならば、それは立派に呪詛を掛けた事になります。
それを聞いた者が「何々人は悪だ」と思い込み、人々が悪意を実現しようと行動すれば、呪詛の拡散と増幅に成功した事になります。
つまり、呪詛を掛けた者の願いが実現する…この世はある意味、呪詛を掛け合って、どっちが先に呪詛の現実化に成功するかです。
呪詛を巧みに操って国民を煽り、特定の人物や団体、民族の抹殺に成功したのは、アドルフ・ヒトラーと大日本帝国の指導者でした。
但し、呪詛には一つの難点があります。それは「人を呪わば穴二つ」であり、掛けた呪詛は、必ず自分に返って来ると言う事です。
それを深く考えもせずに、呪詛を拡散し増幅させ過ぎた為、彼らは巨大化した呪詛を支え切れなくなって、我が身を滅ぼしました。
片や、呪詛を掛けられた側にとってもそれは厄介です。そこで東洋では古くから、呪詛を操る人物を官職として重用していました。
所謂、陰陽師とか阿闍梨(仏教僧)と言うものです。彼らは「呪詛返し」なる技を用いて悪意に満ちた呪詛から、人々を守りました。

さて、ここで陰陽師(阿闍梨)が鬼を調伏する場面をドラマチックに描いてみたいと思います。
当時は、鬼は人の怨念が結実して具現化した物と考えられていました。それは今も同じで、人は悪意に執り憑かれると鬼と化します。
呪いに縛られ、怒りに満ちて暴れようとする鬼の前に、陰陽師は両手を上に翳して立ち塞がります。これは呼び掛けのポーズです。
興奮していた鬼は、陰陽師が攻めて来ないのを不思議に思います。実は、彼はわざと鬼に冷静になって考える時間を与えてるのです。
そして、冷静になった鬼はじっと陰陽師の様子を窺います。彼は手は上に挙げてるが、足は臨戦態勢を取っている。しかも隙が無い。
鎮まった鬼に陰陽師は「何が望みか?」と聞きます。鬼は恨み辛みを述べます。人間にひどい目に遭った鬼には居場所が無いのです。
そこで陰陽師は鬼に社を提供し、屋根瓦として守護者の地位を与えます。鬼は居場所を得た事に納得し、陰陽師の提案を受け入れます。
これが封印の儀式です…本物の陰陽師や魔術師は、アニメの様にやたらに魔物と戦って無理矢理封印したり、殺したりはしません。
魔物と乱闘を行なえば、周囲の人々を巻き込み被害を与えます。それでは、何の為の陰陽師や魔術師なのか?役目から外れています。
魔物は元は人間であったのです。暴虐を揮ったナチスや日本軍の軍人も元は人間でした。悪意に満ちた呪詛の力によって魔物と化しただけの事です。陰陽師や魔術師はその事をよく理解し、元の人間に戻す役割を背負っているのです。
平安時代の史書には、その様な陰陽師、或いは阿闍梨が為したらしい「呪詛返し」が伝説的に記録されています。

「東風吹かば、匂いおこせよ、梅の花、主無しとて、春を忘るな」

朝廷によって大宰府に追放され、怨念を残して他界した「菅原道真」が詠んだこの歌には、呪詛が掛かっています。
時の天皇が病を患い、皇子が死に、権力者・藤原時平も若死にし、疫病や天変地異が頻発するのは、道真の呪詛の祟りに違い無い。
人々が道真の呪詛を恐れ、世が騒然とした時、これを鎮めたのは、多分陰陽師、或いは阿闍梨であった事だろうと思われます。
彼らの提案に従って、朝廷や政敵は道真の名誉を回復し「天満宮」を造営して、神様として社に祭った。道真は居場所を得たのです。
この頃から、庶民の間では何かの災難に見舞われそうになると「くわばら、くわばら」と呪文を唱える風習が流行り出しました。
くわばらとは、菅原道真が朝廷から賜った領地の事であり、庶民は「私はあなたの領地の住民です。どうか災いを為さないで下さい」
そう言われては、さすがに鬼と化した道真も、可愛い領民をひどい目に遭わす事は出来ない。いや、見事な「呪詛返し」です(笑)
多分、これも陰陽師や阿闍梨が教えたのでしょう「呪詛返し」とは、呪詛に対して呪詛をもって全力で打ち返す事ではありません。
そんな事をしたら、双方の呪詛は余計に拡散して増幅し、拡大した呪詛は全ての民を巻き込んで、人々を不幸に落としてしまいます。
日本のみならず、世界にはその愚を犯している人々が大勢います。鬼と化した相手を殺せば、鬼の恨みは延々と子孫を苦しめるのです。
「呪詛返し」とは、悪意の根源を理解し、その呪詛を受け流して緩和し、善き思念を返す。そして善き鞘に収める事を言うのです。
もしかしたら、今の日本や世界に必要なのは、見事な「呪詛返し」を行なう陰陽師や阿闍梨なのかも知れませんね(笑)

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<人と魔物の調停官として存在する者>
実際の所、人々の幸せと平和な暮らしを守り、様々な呪詛(悪意)と戦う陰陽師や阿闍梨の仕事は大変だと思います。
悪意に満ちた呪詛と対峙しながら、魔物と化した人に悪意を持ってはいけないし、勿論、殺害する事はもっての他です。
時の権力者にも実直に諫言し、魔物に居場所を与えて人間に戻さなければならない。逆に権力者の怒りを買ったりもします。
敵味方の判別しか出来ない了見の狭い人々や魔物に、双方からあらぬ誤解を受けて、裏切り者扱いされたりする事もあります。
なぜ、そんな割りに合わない仕事をするのか?…それは、この人が人間界と魔界の真実を知り尽くしているからに他なりません。
呪詛の多くは、人が差別され、阻害され、不当な扱いを受けて不幸になった時に起ります。その時、人は人を呪う鬼と化します。
人も自分と同じ様に不幸になれ!と言う呪詛は、幸せを求める心の裏返しです。つまり、人も魔物も同じ様に幸せになりたいのです。
それを知っているこの人は、報われぬ事を知りながら、敢て人間界と魔界の幸せの為に「調停官」を引き受けているのでしょうね。
 
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~ Comment ~


こんにちは^^

イスラム教もイスラム過激派みたいに「イスラム」を含んで報道するから
イスラム教全体のイメージが悪くなるんですよね。全員がそうなわけないのに。
彼らは「報復だ」と言ってますが、このままお互いに報復を続けると
どんどん大きくなってまた世界的な戦争が起こるんだろうな。
#3036[2015/11/17 10:01]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

イスラム教は、元々は良心的な宗教です。だから世界に13億もの信徒がいるのです。
ところが、彼らの土地を欧米人が侵略して荒らした。それで呪詛が掛かってしまった。
中国や韓国が「日本憎い」と呪詛を掛けたのと同じ構図です…非は欧米や日本にある。
欧米は、住民を巻き込む空爆でテロに報復する事を止めよ!でないと呪詛の連鎖が拡散し、余計にテロが増えます。日本人も中・韓の呪詛に憎悪で返すべきでは無い!終い目に戦争になります><
#3037[2015/11/17 11:45]  sado jo  URL 

こんばんは~♪
当たらずとも遠からずでしょうね。
まあ私は呪詛は信じませんが、フランスがやっていることはアラブ人を自国に同化させようというのですから人権宣言にも悖る行為を法律で決めてしまっているからややこしくなります。
米国と一緒になってシリアを空爆したことも同時多発テロを招く原因になったことは間違いありません。
一番始末に負えないのが安倍晋三というバカ者です。
何一つ道理がわかってないのですからね~
バカにつける薬はないというけど、このままだと日本も憎悪の対象になりかねませんから国民が困ります。
#3038[2015/11/17 19:07]  まり姫  URL  [Edit]

余程上手く逃げ切れない限りは、
やった事は帰ってくる事もありますしね。
上手く行っているうちはともかく、
そうそう上手く行き続ける事もないでしょうし、
行った呪いでも行為でも帰ってくるかもしれないですね(´∀`;)
#3039[2015/11/17 20:38]  ツバサ  URL 

自分に返ってくる恐ろしさ。
それが呪詛の恐ろしさですね。
#3040[2015/11/17 20:48]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 米国と一緒になってシリアを空爆したことも同時多発テロを招く原因になったことは間違いありません。
> 一番始末に負えないのが安倍晋三というバカ者です。
> 何一つ道理がわかってないのですからね~
> バカにつける薬はないというけど、このままだと日本も憎悪の対象になりかねませんから国民が困ります。

日本人はその昔、多くのイスラム教徒の命を救った事もあり、彼らは好意を持っています。
集団自衛権を行使して欧米に加担し、中東に派兵すれば、日本も十字軍の一員と見られる。
その時日本は、フランス状態となるでしょう…日本人がイスラムの敵となるのは間違い無い。
日本は欧米の様な武装国民では無く、国内の警備も甘い…実にテロをやりやすい国なのです。
#3041[2015/11/17 21:00]  sado jo  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 行った呪いでも行為でも帰ってくるかもしれないですね(´∀`;)

「人を呪わば穴二つ」…どうも欧米人は、東洋の共に生きる為の知恵を理解して無い。
やられたらやり返す…と言う原始的な手段で物事を解決しようとするから大火事になる。
欧米人も、イスラム教徒も、どちらも幸せになりたい癖に、暴力と憎悪の連鎖を煽ってる。
穴二つどころか、世界中を巻き込んで穴だらけにするつもり?…こっちは迷惑ですよ><
#3042[2015/11/17 21:09]  sado jo  URL 

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 自分に返ってくる恐ろしさ。
> それが呪詛の恐ろしさですね。

昔、欧米人の祖先がイスラム教徒に放った憎悪が、今返って来てるんですね。
日本人も、昔大陸の人々に悪意を放った…穴が開かない様に善意で蓋をすべきです。
フランスの事件は気の毒ですが、どちらも復讐心を棄てる必要があると思いますね。
憎悪の連鎖が拡大すれば、子々孫々に至るまで果てしなく殺し合う事になるでしょう。
#3043[2015/11/17 21:19]  sado jo  URL 














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