
「どうした!敵の潜水艦か?」長谷川艦長が驚いて尋ねた。
「いぇ、浅瀬です。付近はだいぶん浅瀬が多いようです」
「浅瀬?…馬鹿を言え!ハワイ沖のこの辺の海域に浅瀬があるものか」
長谷川が将兵の言葉を一笑に付そうとしたその時だった。
「前方に岩礁、このまま進めば座礁します」航海士がそう告げた。
「取り舵30度、岩礁を避けろ!」即座に長谷川艦長の命令が飛んだ。
空母赤城は大きく舵を切って、岩礁の側を通過して行った。
「ふ~ぅっ、危なかったな…どうやら、だいぶん強風で流されてしまったようですな」
草鹿はほっとしたように言ったが、南雲は腕時計を見やりながら心配そうにしていた。
「ここはどの辺りだ?グズグズしていると攻撃予定時間を過ぎてしまうぞ」
「長官。ここは偵察機を出して周囲を調べさせた上で、進路を決めた方がよろしいかと思います」
「そうだな…源田航空参謀。九八式艦偵を出すように指示してくれ」
草鹿の提案を受けた南雲は、側にいた源田航空参謀に偵察機を出すように命じた。
<2016年12月8日 日の出前>
空母、赤城を飛び立った九八式艦上偵察機は、雲間を通して海に浮かぶ多数の島影を発見した。
「あっ!群島が見えます。あれがハワイですね」
そう言った偵察士の中村上飛曹の言葉に、操縦士の工藤少尉はちょっと小首を傾げた。
「確かに群島が見えるが、少し妙だな~…地図で見たのと島の形が違うようだが?」
「もう少し降りて、詳しく調べてみましょうか?工藤少尉」
「けど、あんまり近付くと敵に発見される恐れがあるからな~」
「もう少しだけなら大丈夫でしょう」
「よしっ!ちょっとだけ降りてみるか」
そう言うと、操縦士の工藤少尉は、九八式艦上偵察機を操って雲の下まで降下した。
「あっ!軍港らしき港があります。あっちには飛行場らしき滑走路が見えますよ」
何かを発見した中村上飛曹が、嬉しそうに工藤少尉にうながした。
「何だか、聞いたのとちょっと違うような気もするけどなァ?」
「連合艦隊の襲撃を予測して、偽装工作をしたのかも知れませんよ」
「おいっ!あれを見ろ中村…星条旗が上がってるぞ。間違いない敵地だ。すぐ艦隊に報告を入れろ」
「了解しました。艦隊より48度の方向。距離125キロ。敵軍港、並びに飛行場を発見っ!」
「長居は無用だ!九八式艦偵、これより赤城に帰到いたします」
九八式艦上偵察機から、敵地発見の報告を受けた赤城の艦橋は沸きかえった。
「よくやった!直ちに二航戦、山口少将。五航戦、原少将に打電「ニイタカヤマノボレ」繰り返す「ニイタカヤマノボレ」
艦隊を率いる南雲司令長官は、即座に通信士に命じた…そして、数奇な運命への幕は切って落とされた。
~続く~

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