シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第3章 「沖縄水上特攻作戦」(11)

イ-58

「返信のご指示をお願いします。長官」通信士がそう羽生に促した。
「そうだね…敵潜水艦を排除してくれた橋本中佐の労をねぎらって、渡した資料に基づいて敵艦隊の座標を伝えてくれないか」
「はい、了解しました」
 羽生の指示を受けた通信士は、あらかじめ彼から受け取った資料を見ながら、イ-58潜水艦に発光信号を送り始めた。
 羽生は、遼から借りたパソコンの取材記事を元に作戦資料を作成して、あらかじめ各部署に配布していたのだった。
(記事が役に立ったみたいで良かった。異世界で、多少顔の色が違っていても同じ日本人だからな)遼は安堵感を覚えた。
 大和と潜水艦隊との信号のやり取りは、それからしばらくの間続いた。
「作戦資料に基づいて、橋本中佐に敵艦隊の座標と作戦の詳細を伝達いたしました」通信士は、羽生にそう報告した。
「ありがとう…ご苦労さまでした」羽生はそう答えて、海上にいる潜水艦隊に目をやった。
 それに答えるかのように、イ-58潜水艦の司令塔から、また何やら発行信号が送られてきた。
「橋本中佐から長官への伝言です 《これより、本艦隊は海中より作戦海域に先行す。貴艦隊の武運を祈る》 との事です」
「ありがとう。万難を排しても必ず行く。作戦海域で待つように…と伝えてくれ」
「はい、了解いたしました」
 大和からの信号を受け取った橋本中佐は、イ-58潜水艦の司令塔から大和に向かって敬礼をした。
 羽生が敬礼を返すと、来島参謀長、草薙作戦参謀、春日情報参謀、有馬艦長らも一斉に答礼をした。
 そこには海に生きる…いや、海で戦う者たちの無言の魂のやり取りがあった。
 ほどなく、イ-58潜水艦の司令塔にいた橋本中佐は、部下と共に艦内に入りハッチが閉じられた。
 そして、9隻のシャチの群れは、何事もなかったかのように、海中にその黒ずんだ姿を姿を消した。
 遼と亮は、自分たちがいた世界にはなかった別の歴史の一幕を見たような気がした。
 橋本中佐の率いる9隻の潜水艦隊は、何かが起きる事を予感させた。

「これより、本艦隊は偽装航路を取りやめ、一路沖縄フロートへ向かいます」
 若き連合艦隊司令長官、羽生大二郎の意を決した命令が、戦艦大和の艦内に響き渡った。
「と~りか~じ、65度。両舷前進!よぅそろ~っ!」
 有馬艦長が、声高に成海航海長に航路変更を命じた。
「と~りか~じ、65度。両舷前進よ~しっ!」
 艦長の命令を受けた成海航海長も、気合の入った声で、そう答えた。
 雲が低く垂れ込めた曇天の海を切り裂くように、大和は船首を大きく南に向けて舵を切った。
 軽巡洋艦「矢矧」、駆逐艦「冬月」「涼月」「磯風」「浜風」「雪風」「初霜」「霞」の各艦がこれに続いた。
 行く手に何が待ち構えているのか?…遼と亮が知る限りでは、それは不幸な結末を迎えるはずだったのだが。

第3章 「沖縄水上特攻作戦」(完)→ 第4章 「激闘!坊の岬沖海戦」へ続く

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~ Comment ~


時間軸のズレた世界なのかな。
ここでも同じ結末を辿ってしまうのか気になります。
パラレルワールドならまた違った結末になってもおかしくありませんね。
#4275[2016/05/25 10:53]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 時間軸のズレた世界なのかな。
> ここでも同じ結末を辿ってしまうのか気になります。

量子論で言う、同じ因果を含んで枝分かれした「可能性の世界」になります。
異世界とは言え、発祥が同じである事から、時間軸の中で似た様な現象が発生します。
けれど、枝分かれした後、辿る運命にズレが生じるので、結果が同じとは限りません。
同じでありながら、別の可能性を含んでいるから「可能性の世界」なのです^^
#4276[2016/05/25 14:20]  sado jo  URL 

ついに沖縄フロートに向かうんですね。
行った先に何が待っているのか、
結果はどうなるのか気になります^^
#4279[2016/05/25 20:01]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> ついに沖縄フロートに向かうんですね。
> 行った先に何が待っているのか、結果はどうなるのか気になります^^

まず「沖縄フロート」と言う言葉が謎めいてますね。
次に、潜水艦隊を作戦海域に先行させる…と言う行動に意味がありそうです。
我々の世界で起きた沖縄特攻作戦と違って、羽生は何かをやろうとしている様です。
次章からは、いよいよ未来戦艦大和が本格的なバトルを演じてくれると思いますよ^^
#4280[2016/05/25 21:07]  sado jo  URL 

史実では、大和、過保護にされたのと。
速度、遅いので、運用しにくかった、ですけど。
この、お話しでは、どう活躍するのでしょう?
次回、気になります。

かしこ
#4281[2016/05/26 00:55]  みかんゼリー  URL 

Re: みかんゼリー様COありがとうございます^^

> 史実では、大和、過保護にされたのと。
> 速度、遅いので、運用しにくかった、ですけど。
> この、お話しでは、どう活躍するのでしょう?

良くご存知で…実際の戦艦大和は燃料を食い過ぎたのと、ご自慢の主砲が連射出来ず(砲弾が重過ぎ、砲撃の爆風で船体が傾く)実戦向きではなかったそうです。
その為、日本が誇る二隻の超弩級戦艦は「大和ホテル」「武蔵御殿」と皮肉られてました(笑)
小説の未来戦艦大和は極めて実戦向きに作られてます。航法も量子推進ですし、主砲も一味違います。さて、何が飛び出すやら?…続きをお楽しみに^^
#4282[2016/05/26 01:36]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
コメントありがとうございました。
でも大きな勘違いをされていますね。
グローバリズムこそ諸悪の根源だということをご存じないとは驚きました。
国歌が資本を支配しているのではなく、世界侵略の野望を隠そうとしないのが強欲資本主義に染まったほんの一握りの富裕層です。
彼らが国家を動かし戦争へと駆り立てたあげく、格差と貧困を拡大している元凶であることくらいご存じかと思っていましたが、こと経済についてはお詳しくないようですね。
この世から強欲資本主義がなくならない限り格差と貧困、人種差別による貧困国に対する搾取はなくならないでしょう。
#4283[2016/05/26 16:32]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

グローバリズムの本質は、我々先進国の大勢の市民が望んで、企業にけしかけたものです。
「もっと贅沢をしたい。いい生活をしたい…だから世界中の資源・食料・物資を取って来い!」
そう言って企業に資金を与え、人員を与えた。企業は市民の要望に応じて途上国を搾取しただけ。
大元は企業では無く、せっせと銀行貯金をし、高望みをして企業に資金を供与した市民のせいだ!
なら、現在の世界の混乱は強欲な先進国の市民が招いた事です…近代経済は一般市民が銀行預金を通して資本家なんです。逆にどんな大企業のCEOでも、働いている労働者です。
市民が資本家。資本家も労働者…双方が混在し、企業と市民が金と物資で結ばれている現代社会は、マルクスの二元論では割り切れない。世界の格差解消には別の新しい概念が必要です。
ただグローバリズムは、今は矛盾を生んでいるが、最期には世界を平均化すると言う希望はあります。
#4284[2016/05/26 18:14]  sado jo  URL 














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