シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第4話 【境遇】 その2

遺跡01
コール・ブルーメの訓練場となった古代遺跡

 翌日、整備主任に任命されたワポーリフは、整備士たちに命じてシュミット・シムーンを調整させた。
「これでだいぶん操縦しやすくなるはずです。アウリーガとサジッタの連携部に手を加えたましたから」
「大丈夫でしょうか?」
 ネヴィリルが心配そうにワポーリフに言うと、彼は自信たっぷりに言った。
「ご心配なら、お二人とも一度シュミット・シムーンに乗ってみてはいかがですか?ええっと、誰か…」
 ワポーリフが周りにいる少女たちを見回したのを見て、ハイデローゼが進み出た。
「どうぞ、私たちのをお使い下さい」
「ありがとう、ハイデローゼ。じゃ、ちょっとだけ借りるわね」
 アーエルとネヴィリルは、ハイデローゼに礼を言ってシュミット・シムーンに乗った。
 アーエルがアウリーガ席の操縦桿を操作すると、シュミット・シムーンの翼が上下左右に動いた。
 ネヴィリルがサジッタ席のジョイスティックを動かすと、翼は開いたり閉じたりした…だいたいの操作方は分かった。
 二人はキスを交わし、シムーン宮に口づけすると、シュミット・シムーンでエアポートから飛び立った。
「随分長いテールね。普段は巻いてあるけど…どう、飛びやすい?アーエル」
 ネヴィリルは、後ろに長く伸びたテールを見て、それから前にいるアーエルに声を掛けた。
「うん、何だかコクピットの前がガラ空きだと落ちそうな気がする。視界は広くていいけど、正面から撃ち合ったら怖い感じがするだろうね」
「練習機だから武装はしてないわ。ちょっと上昇してみて…翼をたたんでみるから」
 アーエルが操縦桿を引くと同時に、ネヴィリルが翼をたたんだ。シュミット・シムーンは、急角度で上昇した。
 エアポートから、アーエルとネヴィリルの飛行を見ていた少女たちが感歎の声を上げた。
(すごいっ!私たちが苦労した新型機をあんなにスイスイと…これが宮国のシムーン・シュヴィラの実力か)
 ハイデローゼとイリスは、食い入るようにアーエルとネヴィリルの飛ぶさまを見つめた。
「これ、面白いシムーンだね。慣れたらやりやすいと思うよ、リ・マージョン…ちょっとやってみようか?ネヴィリル」
「えぇ、試してみましょう、アーエル」
 アーエルが急旋回して楕円を描き、再び急上昇すると、ネヴィリルがそれに合せて巧みに翼を開閉した。
 首都の空に、隼のリ・マージョンの航跡が描かれ、閃光がきらめいた。
「隼のリ・マージョンだよ、あれ…あんな綺麗な航跡は見た事もない」トルペが感歎して言った。
 リ・マージョンを終えたアーエルとネヴィリルは、少女たちの歓声に迎えられてエアポートに降り立った。
 だが、そこにはもう一人、怒りをあらわにしたブリュンヒルデが立っていた。
「誰が首都の空で勝手にリ・マージョンをやっていいと許可しましたか?」ブリュンヒルデは、迫るように二人に問い詰めた。
「あ、ごめんなさい。ちょっとシュミット・シムーンのテストをしていたので」アーエルはそう答えた。
「いぇ、私が悪いんです。許可がいるとは知らなかったので…お詫びいたします」ネヴィリルはブリュンヒルデに頭を下げた。
「首都の上空は、私たち防空隊の管轄です。今後は勝手なまねをしないように」
 ブリュンヒルデは吐き捨てるようにそう言うと、足早に去って行った。
「なぁに、あれ?」「ひどい言い方よね~」コール・ブルーメの少女たちは、口々に不満を漏らした。
 しかし、首都の上空でリ・マージョンの訓練ができない以上、アーエルとネヴィリルは練習場所を変えるしかなかった。

 アーエルとネヴィリルのシムーン。5機のシュミット・シムーン。そして、1機の古代シムーンが遺跡にやってきた。
 今日からここでシムーンの練習をする事になった…と言うより、ここしか練習場所がなかったのだ。
 かって、アーエルの祖父や、ドミヌーラが所属していたコール・デクストラは、翠玉のリ・マージョンを完成させるために、この遺跡で訓練を行っていた。
 しかし、失敗を重ねた末、数多くの犠牲者を出し、聖なる遺跡の時空を大きく歪める結果を招いてしまったのだった。
 アーエルとネヴィリルは、慎重に場所を選んで、少女たちの教練を始めた。
 整備主任のワポーリフが心血を注いで調整してくれたお陰で、シュミット・シムーンは随分操縦しやすくなっていた。
 アーエルとネヴィリルの親切な指導の甲斐もあって、ようやくそれぞれのパルが新型シムーンを問題なく飛ばせるようになった。
 ただ、古代シムーンのバルザミーネとネルケだけは、曲芸飛行のまねをして、みんなから外れた事をやっていた。

 それぞれのパルを指導している内に、アーエルとネヴィリルには、次第に少女たちの事が分かってきた。
 ディステルは貴族の娘で、性格は明るいのだが、どこかツンとしたところがあって、気分が変わりやすい。
 あどけなさを残している小さなファイルヒェンは、そんなディステルを姉のように慕っているようだ。
 トルペとレーヴェンは、しょっちゅう言い合いをしているように見える。
 でもそれは喧嘩ではなく、二人で意見を述べ合って、お互いが納得のできる結論を出しているのだ。
 それだからこそ、コールが全滅した激戦の中を生き抜いて来られたのだろう。
 アルボルの精鋭部隊にいたオルヒデは、事の外気位が高く、それに輪を掛けたようにキルシュも負けん気が強い。
 普段は衝突しないように、お互いに気を使っているが、片方に火がつくと片方も燃え上がるようだ。
 どうやら、二人はコール・ブルーメ最強のパルになるような予感すらする。
 何事にも真剣なハイデローゼは生真面目な性格で、イリスは社交的で色々と気配りができる。
 ナルテッセは、少し気取ったうぬぼれ屋さんで、カメリアはおっとりした気品のある娘だ。
 それぞれが、ブレイクやシザーズ、捻り込みなどの飛行技術をマスターした頃、アーエルとネヴィリルは模擬戦を提案した。
 その結果を確かめてから、いよいよ本格的なリ・マージョンを教えていこうと考えたのだ。

「さあ、みんな集まって~…これからみんなに模擬戦をやっていただきます」ネヴィリルが言った。
「5秒間、相手の後ろを取ったら勝ちだよ。判定は私たちがするから、みんな訓練の成果を見せてね」アーエルも言った。
 ディステルとファイルヒェン、トルペとレーヴェン、オルヒデとキルシュが飛び上がった。
 ハイデローゼとイリス、ナルテッセとカメリア、バルザミーネとネルケも続いて飛び立った
 それぞれの単機勝負がルールで、最後まで勝ち残った者が勝者となる。
 まずは、トルペとレーヴェン対、ナルテッセとカメリアの勝負になった。
 ナルテッセとカメリアは、いつものようにブレイクしながら相手を振り回し、疲れさせからて隙を突く作戦に出た。
 だが、トルペとレーヴェンはそれを読んで、す~っ!と谷間に隠れた。
「あれ~?後ろから追っかけてきていたはずなんだけど?」ナルテッセは、後ろに誰もいない事に気づいた。
「変ね~…急にいなくなっちゃった」カメリアは辺りを見回したが、トルペとレーヴェンはどこにもいない。
 二人がキョロキョロしている間に、谷間を迂回して出たトルペとレーヴェンが、ナルテッセとカメリアの後ろを取った。
「は~い。それまで」アーエルとネヴィリルの判定が下った。
「あらら~…負けちゃったわよ。ナルテッセ」
「もう、カメリアったらぁ~…あんたがぼ~っとしてるからよ」
 ナルテッセとカメリアは、まるで漫才コンビのようなパルだった。

 次はハイデローゼとイリス対、トルペとレーヴェンの勝負になった。
 双方ともパルの連携には長けた者同士だったが、ここは経験に勝るハイデローゼとイリスが戦いを制した。

~続く~

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