シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第4章 「激闘!坊の岬沖海戦」(1)

大和艦首 

 たっぷりの湿り気を含んだ風が、もやの立つ水面を吹き抜けていった。
 軽巡洋艦 矢矧を先頭に立て、戦艦大和を中心に置いて、円陣を組んだ艦隊は一路沖縄を目指した。
 南へ進めば進むほど、雲は厚さを増していき、今にも泣き出しそうな空が重くのし掛かってきていた。

「まずいな…こりゃぁ」双眼鏡を手に、前方の雲を見ながら来島参謀長が言った。
「千から千二百と言ったところでしょうか」大和の上を通り過ぎてゆく雲を見上げながら、草薙作戦参謀が言った。
「散開して雲の中から飛び出して来られたら、対空防御が困難になりますね」春日情報参謀が、少し不安げに言った。
 三人の参謀がそんな話をしていた時、気象観測員からの報告が入ってきた。
「水平線上に大規模な低い密雲を確認しました…約40キロ四方に渡って広範囲に垂れ込めています」
「ますますもってまずい…長官。迂回を進言いたします」来島参謀長は、羽生にそう言った。
「少し待って下さい。来島参謀長…能本副長。機関室に燃料の残量を確認していただけますか?」
 羽生は、来島参謀長を制してから、能本副長にそう告げた。
「了解しました。長官…剛羅機関長。遠回りした場合、燃料は持ちそうか?」
 能本副長は、直ちに機関室にいる剛羅機関長にマイクで燃料の残量を尋ねた。
「出港してからず~っと節約してきましたのでね。持たん事はねぇですが、戦闘時にどれだけ消費するか見当が付かねぇもんで…最悪、目的地までたどりつけるかどうか」
 けれども、剛羅機関長の返答はあまり芳しいものではなかった。
「お聞きの通りです。長官…後は、参謀のみなさんと協議の上、ご決断願います」
「しかし、そうは言っても、低い密雲の下での対空戦闘はこちらに圧倒的に不利だしな~」
「自分も、参謀長と同意見です…敵将は、必ず自軍に有利な条件下で攻撃してくるはずです」
「そうですね…私も目的地に着くまでに沈められたら、元も子もないと思います」
 来島参謀長と草薙作戦参謀、春日情報参謀の三人は、それを聞いてもまだ迷っていた。
「弱気だなぁ…窮地には違いないが、まだ沈められると決まった訳じゃないよ…けれど」
 羽生は平然とそう言って、一呼吸置いてから眉をしかめている参謀たちを見渡した。
「けれど…何でしょうか?」春日は、羽生に尋ね返した。
「果たして、あの雨雲は航空攻撃を仕掛ける敵側にだけ利があるのだろうか?」
「はぃ~ぃ?」春日と草薙は少しいぶかしげな顔をして羽生を見た。
「来島参謀長。矢矧に蓮見舞之助中尉が乗る偵察用の水上戦闘機を預けてましたよね」
「えぇ…大和は特攻用の『桜花』を搭載した手前、矢矧の方で預かってもらいました。確か紫電改の一つ前の型で…」
「強風…ですね。それじゃ、彼女に一仕事頼みましょう」
 謎めいた笑みを浮かべながら、羽生は来島にそう言った。

~続く~

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~ Comment ~


誰もが不利だと思うことを覆すってかっこいいですよね。
それも確信がないとできないこと。どう覆すのか楽しみです。
#4363[2016/06/10 10:32]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 誰もが不利だと思うことを覆すってかっこいいですよね。
> それも確信がないとできないこと。どう覆すのか楽しみです。

不利な状況に陥ると、誰もがピンチだと思いますよね。
けれど、視点を変えると、その状況を有利な方向に利用出来る場合もある。
ダメだと諦めたら負け…全ての物事は両刃の刃なんですよ(笑)
#4364[2016/06/10 13:05]  sado jo  URL 

こんにちは〜♪
いつもありがとうございます(*^^)
今日も暑い日になりましたね。
熱中症対策をして素敵な週末をお過ごしくださいね(^_-)-☆
#4367[2016/06/11 16:20]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 今日も暑い日になりましたね。
> 熱中症対策をして素敵な週末をお過ごしくださいね(^_-)-☆

確かに、暑さで頭は多少鈍ってますが、考察はどんどん鋭く閃いています。
戦争の遠因を探ろうと、戦時小説を書いてる内に見えて来たものがあります。
それは人が力で打ち立てた「国家」に起因する…国家は最初っから力と言う因子で成り立ったが故に、暴力を内蔵しています。
国家と言う集団を作ってしまった事が、人類文明のそもそもの間違いだったとね。
#4368[2016/06/11 17:24]  sado jo  URL 

マイナスの力は強いですからね

大半の連中は、出来ない理由をこれでもかこれでもかと列挙しやがりますからね

それはいいとしても、どうすれば打開できるか?というところまで発想が回らない

そういう発想を持つ必要もなかった

ということなんでしょうね

そういえば、こういう八方塞がりの状況を、なぜか自分はことごとく覆してきましたね

それも力づくでこじ開けずに、状況がどんどん自分に有利に動いていった感じでしたね

もちろん意図的に悪者を演じたことも多々ありますが、マジで壊す気はなく、むしろ不満分子を裏で焚き付けして動かして、それで浮き足立った、実権を握っていた連中が勝手に自爆しただけでした

ええ、ご指摘のように国家は暴力を内蔵していると思います
それが露骨に表面化しているのが、昨今の状況でしょうね

しかし、インターネットでは国境を越えて、民族や言葉の壁を越えて、繋がるような下地が出来ているわけで、それだと都合が悪いので、上記のような露骨な態度に各国が出てるんだと思います

これからは、どこかで見かけたアソシアシオンという概念が鍵を握るようになるかもしれませんね
#4369[2016/06/11 19:10]  blackout  URL 

雲が低い位置にある時の方が、
迎撃する側としては不利ですしね。
偵察に出すようですが、果たしてどうなるか気になります^^
#4370[2016/06/11 20:21]  ツバサ  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> ええ、ご指摘のように国家は暴力を内蔵していると思います
> それが露骨に表面化しているのが、昨今の状況でしょうね
> しかし、インターネットでは国境を越えて、民族や言葉の壁を越えて、繋がるような下地が出来ているわけで、それだと都合が悪いので、上記のような露骨な態度に各国が出てるんだと思います

20数年前にたった一つの企業が仮想社会を統合した時、人々は気付くべきでした。
国家と言う概念が廃墟と化した事を…今、どの国家も財政危機で、国民の納得する政治は出来ない。
寧ろ、企業経済が国民を支えてる…政治体制に拘って、軍事費を無駄遣いする国家群は、人類の障壁になるだけで何の役にも立たない。
国家は生産性が無く、将来百億の人口を養えない…国家は解体されるべき無意味な存在なのです。
今、世界の生産性を高める鍵となるのは企業群…それが、将来国家に代って世界を担う存在になる。
幸い、市民は労働を通し、金融(貯金)を通し、消費を通して、企業群と深い関りを持っています。
今後の世界に必要なのは、政治思想や政党では無く「情報」と「マネー」と「物資の供給」なのです。
将来、物と人が自由に世界を行き交う国境無き「リアルネット社会」が世界に現出すると思いますよ。
いや、そうならなければ、百億の人類は生きていけなくなると断言して置きます^^
#4371[2016/06/11 20:36]  sado jo  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 雲が低い位置にある時の方が、迎撃する側としては不利ですしね。
> 偵察に出すようですが、果たしてどうなるか気になります^^

実際の某の岬沖海戦では、雲が低くて殆ど敵機の迎撃が出来なかったそうです。
有利な条件下で、米軍機は大和以下の艦隊を食べ放題…いや、撃ち放題でしたから><
多分、日本側の直援機がいたとしても、なぶり殺しは避けられなかっただろうと思います。
電子技術が発達した現代においても、なお自然界の気象条件は恐いものですよ。
どんな軍艦でも、荒海に揉まれながらではミサイルは撃てませんからね(笑)
#4372[2016/06/11 20:50]  sado jo  URL 














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