シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼未来戦艦大和」
未来戦艦大和 小説本編

未来戦艦大和 第4章 「激闘!坊の岬沖海戦」(2)

「通信士。矢矧の原田艦長に伝えてくれ 《強風に液体炭酸ガスを積めるだけ積んで、蓮見中尉に前方の密雲の上から散布するように命じてくれと…それが済んだら、一足飛んで、鹿屋と知覧から飛び立った友軍の航空攻撃隊に、敵艦隊の正確な座標を伝えるようにと…あ、くれぐれも伝えるだけでいいと念を押してくれ。あの子は情が深い分、深入りして航空隊を敵艦隊まで誘導してしまいかねないからな。攻撃隊に情報を伝えたらすぐに戻ってこい》…と打信して欲しい」
「はっ!了解いたしました。長官」
 早速、大和からの発行信号が矢矧に送られ、了解の応答が返ってきた。
 ほどなくして、矢矧の水上機カタパルトに搭載されていた強風が、海面に降ろされた。
 それは奇妙な水上戦闘機だった…一見したところ、短い首を伸ばしたカルガモのような形をしていた。
 尾翼はまるで鳥の尾羽のようだし、水上機に特有のフロートもなく、どうやって水の上に浮いているのかさえ分からない。
 首の付け根の部分に、楕円形のコクピットが付いていなければ、まさに巨大なカモそのものだった。
(まさか、水かきでも付いているんじゃないだろうな?)カメラを構える亮の横で、首をひねりながら遼は思った。

 水面を蹴立てながら、軽やかに強風が飛び立って行った。
 そして、飛び立つ時には広げていなかった翼を上空で開いた。それは本体の三倍以上もある大きな翼だった。
 いや、翼と言うには余りにも薄すぎる…蝶の羽根か、或いは蝙蝠の皮膜と言う表現の方がより正確だろう。
(これが異世界の未来の航空機なのか?)遼は呆気に取られながら、雲の中に消えていく強風を見送った
「このまま、まっすぐ進みます」羽生は居並ぶ一同に決断を告げた。
「了解しました。両舷前進!巡航速度を維持しながら敵襲を警戒っ!」有馬艦長が、成海航海長に命じた
「両舷ぜんし~ん!巡航速度を保ちま~すっ」成海航海長が即座に応じた。
 羽生の下した決断に従って、9隻の日本連合艦隊は空を黒く覆う群雲に向かって突き進んで行った。
(あの群雲の下で何が待ち受けているのか?)遼は、ふと自分たちの世界でかって起きた出来事と重ね合わせた。
 だが、よく似た出来事が進行しているとは言え、ここはまったくの別世界なのだった。

 水平線上に見えていた密雲は、段々近づいてきて辺りを暗くしていった。
 そして、ついに大和の対空レーダーが、敵機の大編隊を捉えた。
「敵らしき機影を確認っ!かなりの数の大編隊です」
「ついに来たか…距離と方位は分かるか?」副長の能本中佐が対空監視員に尋ねた。
「電離層の乱反射の為、正確には分かりませんが、距離は100キロ前後かと…なお方位は不明です」
(そうだった…この世界の電離層は不安定で、レーダーが充分に機能しないんだった)
 遼は羽生から聞いた話を思い出した。その横では亮が顔をこわばらせていた。
 カメラを持つ手が、小刻みに震えているのを見て取った遼は、小声で囁いた。

~続く~

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~ Comment ~


敵の正確な位置がわからないんじゃ不利には変わりませんね。
敵も同じ条件とは思えませんし。これは絶体絶命かな。
#4373[2016/06/12 08:32]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 敵の正確な位置がわからないんじゃ不利には変わりませんね。
> 敵も同じ条件とは思えませんし。これは絶体絶命かな。

羽生には、異世界から来た二人が齎した情報で、敵の位置は掴めてるんですけどね。
ただ、低い雲が垂れ込める悪条件の中で、膨大な数の敵機の攻撃をかいくぐって、沖縄までたどり着けるかどうか?が至難の技なんですよ。
#4374[2016/06/12 16:57]  sado jo  URL 

強風も機体名が同じでも形は全く違うから、
こちらの世界から来た二人にとっては、
何もかもが驚きですね~。
#4375[2016/06/12 19:06]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 強風も機体名が同じでも形は全く違うから、
> こちらの世界から来た二人にとっては、何もかもが驚きですね~。

強風=後の「紫電改」はゼロ戦の陰に隠れた名機でしたよね~^^
水上機としては活躍出来なかったけど、局地戦闘機として抜群の性能を発揮した。
惜しかったな~…三菱重寄りの海軍が、もう少し川西重を公平に見てれば紫電改はもっと働いていた。米軍機を上回るシャープな空戦性能を持ってましたからね。
#4376[2016/06/12 20:07]  sado jo  URL 

自然の力は強大だと思います

どれだけ科学技術が進歩しても、いとも簡単にそれをねじ伏せてしまいますからね

2011年のあの地震といい、それ以降の記録更新づくめの気候といい、ホント底が知れないと思います(汗)

しかし、遊び心があるのか性格が悪いのか、ある程度人類を泳がせて、科学技術というおもちゃで遊ばせておいて、危なくなったら、軽く天変地異を起こして警告をしてきますね

人類は自然に逆らいすぎだと思う今日この頃
#4377[2016/06/12 22:14]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> 自然の力は強大だと思います
> どれだけ科学技術が進歩しても、いとも簡単にそれをねじ伏せてしまいますからね
> 人類は自然に逆らいすぎだと思う今日この頃

その通りです…人類の生存環境は、地球の薄い膜で守られているに過ぎないんです。
大きな惑星や彗星が側を通過するだけで、簡単に膜は剥がれます…人間は身の程知らずの大それた考えを持つより、普通に空気が吸えることを有難く思った方がいい。
人間の生きる環境は、自然のバランスあっての賜物です。それが壊れたら死滅するだけ><
#4378[2016/06/12 23:55]  sado jo  URL 

レーダーが、信用出来ないのだと、目視が重要になりそうですね。
先の大戦みたいですね。

大編隊、どう、さばくのでしょう?
気になります。

かしこ
#4379[2016/06/13 00:53]  みかんゼリー  URL 

Re: みかんゼリー様COありがとうございます^^

> レーダーが、信用出来ないのだと、目視が重要になりそうですね。
> 先の大戦みたいですね。

この異世界は一口に言えば、ガス雲に覆われた金星の様な環境下にあります。
暑いの、ジメジメしてるの、太陽光がマトモに届かないの、オゾン層や電離層も機能しない。
そんな酷い環境にしてしまったのは人類なんです…それでもまだ戦争だけはするか?お前ら!
って、今後にそうなりそうな…いや、なってしまうだろう救いがたい人類を描いています。
これじゃ、幾ら科学が発達してても何の役にも立ちません。知恵だけが頼りの戦いです(笑)
#4380[2016/06/13 01:08]  sado jo  URL 














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