シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

アニメ /コミック

この世界の片隅に

この世界の片隅に

「この世界の片隅に」 =原作:こうの史代 監督:片渕須直= と言うアニメ映画をご紹介いたします。
まだ、公開されてないアニメ(10月封切予定)を紹介するのは初めてですが、原作漫画に感動を覚えたので、敢てご紹介します。

十年近く前に何とも不思議な漫画に出合いました。独特なタッチの画風に引付けられて、何気に読んで「あっ!」と驚きました。
それが「この世界の片隅に」でした…俗に戦争を背景にした作品には、血生臭さと、誇張した悲劇と、反戦ムードがあるものです。
だがこの作品は、声高に戦争反対を叫ぶのでは無く、絵の好きな主人公のスケッチブックに淡々と戦時下の日常が描かれています。
戦時下の日本人の日常風景とはどんなものだったのでしょうか?そのストーリーを簡単にご紹介しましょう。

海苔を商う広島の商家に生まれた絵の好きな浦野すずは、少し抜けた所のあるおっとりした少女。その彼女が、幼い頃にふとした事で知り合った北條周作に請われて、幼馴染の水原哲と別れ、大戦末期に18歳で軍港の町「呉」に嫁ぐ事になる。折りしも物資不足で食糧難のご時勢の中、すずは新しい家族の元で、一家の主婦として、子連れの出戻り小姑である徑子にいびられながら、家を切り盛りする為にあれこれと工夫して頑張ってゆく。だが戦火は軍港の町に襲い掛かり、すずは大切な人や家や絵を描く為の右腕までも失ってしまう。そうしてついに8月6日、実家のある広島に原爆が投下され、父母や姉までも失い、独りぼっちになるのだが…

ここまで書くと、悲惨な物語に思えますが、漫画にそんな悲壮さは無く、普通に泣き笑いする庶民の暮しが描かれているのです。
ただ、その普通が何とも奇妙に思えてならない…例えば、明日死地に赴く幼馴染の水原哲が、嫁ぎ先にいるすずを訪ねて来ます。
「すずが普通で良かった。これからも普通でいてくれ」と言い「死んだ兄の代りにお国の為に奉公する」と言って去っていきます。
「天皇陛下の為に」と言って軍事教練に励むすずは、何も知らずに時限爆弾に近づいた姪の晴美を助けようとして巻き込まれます。
「人殺し!あんたが付いていながら」と子供を失った義姉の徑子に責められたすずは「私は生まれて来なければよかった」と嘆く。
そうして、片腕を失くしたすずは「自分はこの家にも、お国にも役に立たない人間だ」と密かに家を出る決心をしたりするのです。
これらは数十年前、戦時下の日本に普通にあった風景なのですが、どうにも人々の言動に、奇妙な矛盾と違和感が湧いて来ます。
はて?この戦争の風景は誰が作ったのだろう?国民?それとも国?…確かなのは、人々がそれを普通だと信じて暮らしていた事。

今は、爆弾の雨を降らしていたB-29は影も形も無く、燃えていた軍港も無く、死んでいった人々の思い出だけが残っている呉の町。
あの時の普通とは…日常とは何だったのでしょう?人間は風景を作り出す主体なのか?それとも単なるオブジェ(客体)なのか?
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」…実の所、人も風景も時の中に浮かんでは消えるオブジェなのかも知れない。
世界中で、時に爪痕を記そうと躍起になっている人達が多くいる昨今、自分の住む街では多くの外国から来た人々を見掛けます。
中国人の女の子達が、集まって楽しそうに語らっている風景を見ると、ふと、この子達にとって南沙諸島とは何なのだろうと思う。
アラブ人の女性が子供の手を引いて市場で買い物をしてる姿を見ると、この親子にとってテロとは何なのだろうと思ったりします。
自分はどうしても、レジの中国の女子と南沙諸島は結び付かず、アラブの親子とイスラムのジハード(聖戦)は結び付かないのです。
誰もが、この世界の片隅に生きています。なのに風景が違って見える。この違和感は何なのだろう?普通の日常って何なのだろう?

実の所、元映画のプロだった自分にもこの作品の位置付けが分かりません…反戦でも無いし、かと言ってホームドラマでも無い。
なので、妙な思想を交えたり、何かの先入観で見ると「この世界の片隅に」の意味する所はまったく掴めないだろうと思います。
情報によると、作品の製作に当たって、一般公募を募ったら、僅か二週間で三千万以上の空前の募金が集まったと聞いています。
「この世界の片隅に」は、それだけ人を引き付ける不思議な魅力がある作品です。前評判も高いので、ぜひご覧になって下さい。


アニメ映画 「この世界の片隅に」 予告編 (10月封切予定)

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人間はどの程度の能力を授かっているのか?と言うと、世界の片隅に束の間のひと時を生きる程度なのだろうと思えます。
その人間が、世界の風景を変えようと図るのは大それた事で、幾ら足掻いても、時が経つと人の捏造した風景は元に戻ってしまう。
ロシアや中国の戦闘機は空を飛ばなくなり、海を往くアメリカの空母は消えてしまう…いや、その国自体が存在しなくなるのです。
してみると、人は時の流れの中で風景を作り出す主体では無く、風景の中にあるオブジェ(客体)の一部に過ぎない事になります。
世界中で「俺達の世界を作る」と騒いでいる者達は空虚な妄想を描いているだけで、この世界の片隅に生きる小さな存在なのです。
彼らの作り出す風景は、束の間の飛沫に過ぎず、跡形さえも残らない…だから言って置く「無駄に足掻くのはやめとけ!」と。
 
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~ Comment ~


「普通」も「日常」もわかっているようで実は抽象的でよくわからないものですね。
今は「お国のために」という思想が理解できなくとも
それを教えられて、初めのうちは「なんだこれ」だったのが
長く浸透して「普通」になると非日常だったそれが「日常」になる。
ある意味ピカソみたいなものなのかもしれません。
#4408[2016/06/21 10:34]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 今は「お国のために」という思想が理解できなくとも
> それを教えられて、初めのうちは「なんだこれ」だったのが
> 長く浸透して「普通」になると非日常だったそれが「日常」になる。

男がお国の為に戦争に行き、女が家の為に働いていた…父の時代はそれが普通でした。
父は男兄弟の半分を戦地で失い。母は勤労奉仕中の事故で片目を失いました…でも、それは日常的にあった事で、当時の日本はそれが普通だったのです。
どう見ても異常な日常が普通になる…人間の思想って恐ろしい一面を持ってますね><
#4409[2016/06/21 12:53]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
実際に原作も読んでいないので評価は控えさせていただきますね。
はっきりしていることはあの戦争下でも反戦を訴え牢獄につながれた多くの市民が存在したということ。
これは決して無駄なことではないと私は思います。
世の中がどう変わろうと人間が暴力によって支配することは不可能です。
#4410[2016/06/21 17:19]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> はっきりしていることはあの戦争下でも反戦を訴え牢獄につながれた多くの市民が存在したということ。
> これは決して無駄なことではないと私は思います。
> 世の中がどう変わろうと人間が暴力によって支配することは不可能です。

戦争と言うものは、テレビで見る通り、普通の風景として人間の側に存在しています。
ある地域、ある時代の人には戦争は日常風景です…日本人はそれを悲劇とは思わなかった。
「日の丸」「国威高揚」「勇ましい」「天皇陛下万歳」…どう考えるかは人それぞれです。
確かな事は、国民は「大日本帝国」と言う国家の戦争を行う機械であったと言う事実です。
#4411[2016/06/21 18:03]  sado jo  URL 

一般人から見たものを描いているだからこそ、
心に残るのでしょうね。
普通に戦争をテーマにしたものよりも、
日常からアプローチしたものの方が印象敵なのかもしれませんね^^
#4412[2016/06/21 20:03]  ツバサ  URL 

Re: ツバサ様COありがとうございます^^

> 一般人から見たものを描いているだからこそ、心に残るのでしょうね。
> 日常からアプローチしたものの方が印象敵なのかもしれませんね^^

その通りです…実際の戦争の中にいた人(多分、祖母)の日常を淡々と描いています。
呉軍港に停泊している「戦艦大和」のマストにカモメが止まってたり…何とものどかです。
確かに軍艦で無いなら、いい止り木ですよね…逆に言えば、その普通さが何とも恐ろしい。
街角に憲兵が立ってたり、軍人が街を闊歩するのを普通だと思う様になったら、日本人の普通の日常は、異常な日常に変るんでしょうね。
#4413[2016/06/21 20:30]  sado jo  URL 

こんばんは^^

見てみたいです。
淡々と日常が描かれている。それこそがリアルであり
哀しくもあるけど多くの現実でもあるのでしょうね。

先日、仕事仲間だった女子大生と打ち上げがありそこで
はだしのゲンを見てからお肉を食べれなくなった。と言ってました。

こちら映画は10月に公開になるけれどマンガでは出ているのですか?
読んでみたいと思います^^
*動画すでに削除になっているみたいです~(^^:見れなかったです。
#4414[2016/06/21 22:04]  ミノリ  URL  [Edit]

Re: ミノリ様COありがとうございます^^

> 見てみたいです。淡々と日常が描かれている。それこそがリアルであり
> 哀しくもあるけど多くの現実でもあるのでしょうね。
> こちら映画は10月に公開になるけれどマンガでは出ているのですか?
> *動画すでに削除になっているみたいです~(^^:見れなかったです。

あらら…結構、自分のブログを見る人、多いのでアクセスが集中してバレたのかな?
著作権がありますからね(苦笑)…漫画やDVDは、ツタヤなどで借りて見るしかなさそうです。
ま、10月にはアニメ映画が公開されますよ。評判が高いから前売り券を買った方がいいかも^^
こうの史代さんの祖母?が日常生活から見た戦争風景…独特の視点がすごいなと思いました。
#4415[2016/06/21 22:29]  sado jo  URL 

こんにちわ
戦争中の日常を描くのは新鮮な気がします。
#4416[2016/06/22 17:15]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> 戦争中の日常を描くのは新鮮な気がします。

殊更、特定の思想を押付けようとせず、淡々と戦時下の人々の生活と風景を描いてみせる。
それを異常だと思うか?それも普通の内だと思うか?は、観る人の自由意志に任されます。
ある人にとっては、恐い作品であり、ある人にとっては、とてものどかに見える作品です。
但し、自分に死が降り掛かるまではね…新鮮でしょ(笑)
#4417[2016/06/22 18:05]  sado jo  URL 

そういう自分も、これまで書いてきたものを見ると、それなりに異常な世界を淡々と描いているかもしれません(汗)

よく読むと、エグめの流血あり、精神状態がよくない奴の独白、核で滅んだ世界、氷河期に見舞われた世界、だったりしますからね(汗)

精神錯乱を起こさないで生きているのが不思議なぐらいですな(汗)
#4418[2016/06/22 19:33]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> そういう自分も、これまで書いてきたものを見ると、それなりに異常な世界を淡々と描いているかもしれません(汗)
> 精神錯乱を起こさないで生きているのが不思議なぐらいですな(汗)

blackoutさんの核戦争後の世界も、氷河世界も、自分の描く、環境破壊で二酸化炭素の雲に覆われた「未来戦艦大和」の世界も、それが現実となれば、人にとって日常の風景になる。
「こんな世界を普通と思っちゃいけない」と思っても、人の馴れは恐いですからね。
現に、B-29が焼夷弾の雨を降らす防空壕の中で、人は平気でメシを食ってましたから。
えぇ、その側に焼け焦げた死体が転がっていても…です(笑)
#4420[2016/06/22 20:04]  sado jo  URL 














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