シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】 その3

Simoun 堕ちた翼

「自分の子供を捨ててどこへ行こうと言うのですか?」
「希望の大地を探しに…でも、とても危険な旅になるので赤ん坊を連れては行けないんです」

 希望の大地…パライエッタは、小さい頃にそんな夢のような話を聞いた事があった。
 誰も行った事のない遠い海のかなたに、希望の大地と言うこの世の楽園があるそうだ。
 大地に花が咲き、小鳥が空を飛びながら歌い、甘い果物が実る木があって、人は死ぬ事なく永遠の少女でいられる。
 そんな話を聞いた子供の頃は、夢のような理想郷にあこがれてぜひ行ってみたいと思ったものだった。
 けれども、大きくなって色んな現実を知ると、希望の大地などと言うものはただの作り話にすぎないと分かった。
 だから、ありもしない夢みたいな幻想を追い掛けて、わが子を捨てる母親の気持ちは理解できなかった。
 パライエッタは懸命に母親を説得しようとしたが、母親は彼女を振り切って逃げ出していってしまった。
 残された乳飲み子を抱いて、呆然と立ち尽くしたままパライエッタは考えた。
 何がそうまでさせるのか?親が幻想を信じて子を捨てなければならないほど礁国の人々は生活が苦しいのだろうか?
 でも、戦勝国の礁国は豊かなはずではなかったのか?なぜ、戦争に勝った国が難民などを出すのだろうか?
 考えれば考えるほど、パライエッタには訳が分からない事だらけだった。

 パライエッタには普通の少女のような青春はなかった。ただシムーン・シュヴィラとして戦争に明け暮れる毎日だった。
 元来シムーンは、テンプスパティウムの神に捧げるリ・マージョンを大空に描くための神器であるはずだった。
 そして、その神の乗機であるシムーンは、神聖な神の巫女の資格を持つ少女たちにしか扱えなかった。
 だが隣国である礁国の脅威を感じた司政院と司兵院は、宮国の伝統を破り司宮院の反対を押し切って戦闘艇にしてしまった。
 礁国と言う大国に対する兵力不足を補うためとは言え、神聖な神の巫女である少女たちを戦う兵士にしたのだった。
 パライエッタたちは、テンプスパティウムの巫女でありながら宮国の兵士にされた最初のシムーン・シュヴィラだった。
 だが、宮国の政治家たちの神を冒涜する行為はたちまちテンプスパティウムの大きな怒りを買ってしまった。
 宮国では、神聖な神の巫女を輩出する家柄は名家だった。そこの少女たちが不慣れな戦闘で次々に戦死してして名門が絶えた。
 昨日まで一緒に笑いながらお喋りした仲間が、明日はいなくなる。今朝、挨拶を交わした友だちが飛び立ったまま帰ってこない。
 戦火に焼かれる家や、悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。戦闘で瓦礫が散乱した街や、無造作に打ち捨てられた幼児の遺体。
 多感な少女だったパライエッタは、そんな戦争の惨たらしさを嫌と言うほど見せ付けられてきた。
 だから、もう人々が苦しむ姿も嘆き悲しむ姿も見みたくはなかった…これ以上の悲劇はもうたくさんだった。

 いても立ってもいられなくなったパライエッタは礁国に行く決心をした。
 礁国がどうなっているのか?礁国で何が起きているのか?行って確かめなければならない。
 もし、不幸な出来事が起きているのなら、止めなければならない。人々を救わなけれなならない。
 かって、神に仕えたシムーン・シュヴィラだった者として自分にはその義務があると思った。

~続く~

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~ Comment ~


どうも、永遠の12歳です(笑)。
せっかく生まれたのに捨てなければいけないとは、何のための命なのかと嘆くしかありませんね。
戦争は何かを得るどころかほとんど失うことしかありません。
何事も経験しなくてはわからないのもわかりますが
しなくてもわかることだってあるでしょうに。礁国の実態は行って確かめないとね。
#4707[2016/08/24 22:44]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> せっかく生まれたのに捨てなければいけないとは、何のための命なのかと嘆くしかありませんね。
> 戦争は何かを得るどころかほとんど失うことしかありません。

総じて、強国だの大国だのと言ってる国に限って中身ガタガタなんですよね。
国民同士で殺し合うわ、民族弾圧してるわ、人権無視の政府だわ…米・露・中の無様な事。
なのに戦争だけは一丁前にやろうとする…ミサイルより、国民の飯が先だろう金正恩!
かと思えば、豊かなはずなのに虐めや幼児虐待をやってる国もある…日本人の恥だ!(嘆)
何かに付け、男のメンツや争いで犠牲になるのが女子供なのが、男として情けないです><
#4708[2016/08/24 23:48]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
国家などというのは人間が人種の違いや宗教の違いなどで勝手に作り上げたもので、初めから存在していたわけじゃないのに特定の権力を握ったほんの一握りの人たちで作り上げたものだから争いが起こるのですよね。
人間同士が争って何になるのでしょう。
そこから得られるものは何もなく悲劇と憎悪を増すだけです。
幸い人間は考えることができる能力を持っているのですから、人間同士が争わないために何が必要なのか話し合うことこそ必要なんでしょうね。
#4709[2016/08/25 16:59]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 国家などというのは人間が人種の違いや宗教の違いなどで勝手に作り上げたもので、初めから存在していたわけじゃないのに特定の権力を握ったほんの一握りの人たちで作り上げたものだから争いが起こるのですよね。

国家は私有財産に拘る近代人の頭の中にだけあるもので、古代にはなかったのです。
国=里、又は町はあったが、大地や海に特に国境線は無く、極めて曖昧だった様です。
世界を征服したアレクサンダー大王やジンギスカンでさえ、全ては俺の物とは考えなかった。
人も自然も、何もかも自分の物だと言うのは近代権力者の傲慢です。制御すら出来てない(笑)
そんな為政者の傲慢が争いを引き起こす…人や自然を制御出来たら国家の主と認めて上げます。
#4710[2016/08/25 17:58]  sado jo  URL 

希望の大地…

あるとしたら死後の世界かもしれませんね

そういえば、サガフロンティアというゲームでは、地獄、っていう露骨な名前のダンジョンがありますが、芥川龍之介とか江戸川乱歩の小説に出てくるようなおどろおどろしい感じではなく、天使が行き交う楽園のような感じでした

とはいえ、天使=モンスターでしたけどね(汗)

ちなみに、行ったら2度と戻ってこられないっていう設定でした
#4719[2016/08/27 19:04]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> 希望の大地…
> あるとしたら死後の世界かもしれませんね

本番のアニメでは「希望の大地」と言うのが一つのキーワードになっていました。
争いに満ちた現実世界とは違う「ユートピア」「シャングリラ「桃源郷」そんな理想郷です。
それぞれの希望の大地を胸に抱きながら、少女達が虚しく戦場で死んで行くドラマでした。
ま、確かにこの世で求めて得られないなら、死んで行くしかない所でもありますね~(笑)
#4721[2016/08/27 22:06]  sado jo  URL 














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