シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】 その5

Simoun 嘆きの詩

 思えば、礁国の空中補給基地に不時着したネヴィリルを逃がそうとした、嶺国の巫女たちが処刑されそうになった時、敵国の乙女をかばって撃たれて死んだマミーナは、嶺国から来た移民の娘だった。
 ドミヌーラは、一切れのパンと引き換えに、親に司兵院に売られた礁国の貧しい移民の娘だと聞いた。
 アーエルも、宮国に移民してきた礁国人と嶺国人の両方の血を受け継いだ娘だった。
 彼女たちは、いったいどんな思いを抱きながら戦争をしていたのだろうか?

 パライエッタたちが昔の仲間の話をしていると、屋敷の中から、礁国の軍人たちがぞろぞろと出てきた。
 彼らは、歩きながらジロジロと庭にいる三人の女性を見て通りすぎていった。何ともいやらしい目付きだった。
 戦争をしている男たちが女を見る目は、人間の目と言うよりも、理性のない獣の目に近いものだ。
 きっと、明日を知れない命を感じて、何とか自分の種を残そうと懸命に本能を働かせるからなのだろう。

「礁国の軍人さんがいるのね」パライエッタはカイムとアルティに聞いた。
「父の客人です。父が、街に駐留する礁国軍に屋敷を使わせているので」アルティが答えた。
 カイムとアルティの父親は、戦後は礁国派の政治家となって、今はソロルの街の市長をしている。
 大きな屋敷の半分を礁国軍の将校たちの宿舎に提供し、カイムとアルティの姉妹はその軍人たちの世話をしていた。
「そうなの…二人とも軍人さんのお世話をしているのね」
「僕は男の世話なんか嫌だって言ったのに…男なんて、汗臭いし、横柄だし、デリカシーはないし、いいところなんか一つもない」
 カイムは昔から自分の事を僕と言う。言いたい事をあけすけに言うのも昔からだ。
「しっ!お姉ちゃん。声が大きいわよ」
 軍人たちに聞こえるように好きな事を言うカイムを、たまらずアルティが制止した。
「僕は、パラ様のところで子供たちの世話をしてた方がずっといいや」
「そう思って、お願いしに来たんだけどね。でも、家の仕事が忙しいなら、頼めないのかなって」
「えっ!何々…そんな話があるの?」
「えぇ、実はね…」
 パライエッタは、カイムとアルティの姉妹を訪ねる事になった経緯を話した。
「そんな訳でね。私が礁国に行っている間、二人に子供たちの面倒をみてもらえたらって思ったんだけど」
「な~んだ、そうだったんですか…分かりました。ぜひ、子供たちの面倒をみさせて下さい」
「私もカイムと一緒に子供たちの面倒を見ます…だけど、自分で産んだ子供を捨てるなんて、ひどい親ですよね」
「きっとよっぽどの事情があるんでしょうね。だから確かめに行ってみたいの…でも、二人とも家を空けて大丈夫なの?」
「どうせ父が礁国にいい顔したくてやりだしたことですから」
「そうそう…軍人の世話なんて、私たちでなくったって家政婦でもできる事だし」
 こうしてカイムとアルティは、パライエッタが礁国に行っている間、孤児院の管理をすることになった。
 だが、それがパライエッタとの永遠の別れになろうとは…この時のカイムとアルティには知る由もなかった。

~続く~

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そういえば慰安婦像問題も撤去するしないで未だにもめてますね。
安倍君、10億の支出をしたと言ってもお金の問題ではないと思うのですが。
普通に恋愛して普通に子供を授かりたい少女が自害する気持ちもわかります。
自衛隊を戦いのために海外へ出したらまたこんな歴史が繰り返されるのか。
まあ、男にはわかりにくい問題だろうから首相も女に代わったら違うんだろうな。
#4761[2016/09/08 10:08]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 普通に恋愛して普通に子供を授かりたい少女が自害する気持ちもわかります。
> 自衛隊を戦いのために海外へ出したらまたこんな歴史が繰り返されるのか。
> まあ、男にはわかりにくい問題だろうから首相も女に代わったら違うんだろうな。

都知事じゃなくて首相の方がよかったかな?小池百合子(笑)
男は何でも金や力でやりたがるが、女にとっては金や力よりも幸せの問題なんですよね。
肝心の女の気持ちが男には分からない。なぜ金持ちや著名人の妻が相次いで離婚するか?
最近米国で年老いた老夫婦が、手を握り合ったまま殆ど同時に亡くなったと聞きます。
金も力も無い普通の庶民でした…死ぬ時は一緒に…と思えるような男なら女は幸せです。
#4762[2016/09/08 11:03]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
本文とは関係ないので非公開コメントにさせていただきます。
沖縄は米国に支配されたままです。
日本政府は沖縄を米国に売り渡したも同然ですが、米国の軍師政策に協力させられているだけですよ。
日本政府が拒否すればいくらでもできるはずですが、政治・経済とも日本政府は従属しているだけで、沖縄の置かれている立場は現在も米国軍支配のままなのです。
日本政府は沖縄を見捨てただけで日本政府が支配しているのではありません。
本土の人がそれを理解しないと本当の解決の道を見失うことになるでしょう。
何を正せばいいのか?
それは日本政府が対米関係を見直し、日米安全保障条約を解消することこそ最低限のことです。
これを抜きにして沖縄の真の解放はないでしょうね。
#4763[2016/09/08 16:53]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 本文とは関係ないので非公開コメントにさせていただきます。
> 沖縄は米国に支配されたままです。

いや、小説と関係なくはないです…戦争に負けたら外国軍の言いなりと言う点は合ってます。
戦ってる間は使うだけこき使っといて、負けたら住民ごと敵に売り渡すのも小説と同じです。
アニメ「シムーン」の作者は、沖縄出身の脚本家で円谷プロの上原正三氏と親交があったとか。
だから、登場人物「グラギエフ」の帽子や衣装が、琉球王朝の司官の装束に似てたりしてます。
「シムーン」は沖縄を意識した物語だと思います。なので私もその線に沿って小説を書いてます。
ちなみに、私も円谷プロのスタッフだった時代、沖縄人の上原正三氏と親交がありました^^
#4764[2016/09/08 17:55]  sado jo  URL 














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