シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】その8

simoun スラム街

 びっくりしたパライエッタが振り返ると、そこには恐い顔をした老婆が立っていた。
 老婆は有無を言わさずに彼女の腕を引っ張って、物陰まで連れていった。
「あんたっ!何をしてるんだい。軍需工場なんかのぞいたら、憲兵にとっ捕まってしまうよ」
「はぁ…すいませんでした。知らなくって」
「あんた、宮国の人だね」
「はい…さっき来たばっかりです」
 老婆は、ジロジロとパライエッタを見て、胸に下げたロザリオに目をとめた。
「もしやあんた。神の巫女だったんじゃないかい?それも相当な高位の巫女さんだ」
「えぇ、元はシムーン・シュヴィラでした」
「やっぱりそうかい…金のロザリオは、高位のシムーン・シュヴィラだけが身に着けられるものだからね」
「お婆さん。よくご存知ですね。宮国へ行かれたことがあるのですか?」
「あぁ、昔ね…でも、詳しい話は後だ。着いてきな。こんな所をうろうろしていたらまずい事になる」
 そう言うと、老婆は先に立って歩き出した。
(悪い人ではなさそうだ)そう思ったパライエッタは、後に着いていった。

 パライエッタは、老婆と一緒にばい煙でかすみがかった街の大通りを歩いた。
 店が立ち並ぶ街の中は人通りはにぎやかだったが、行き過ぎる人々の顔色は悪く、咳き込みながら歩いている人もいた。
 老婆は街の中心を通り抜けると、薄暗い街角の片隅へパライエッタを案内した。
 そこは、汚ならしい掘っ立て小屋が雑然と立ち並んだ貧民窟だった。
「さぁ、着いたよ。遠慮なく入んな」
 そう言って老婆は、バラック建てのアパートの一室にパライエッタを招き入れた。
「それじゃ、遠慮なくお邪魔させていただきます」
 部屋の作りは雑だったが、中は割と綺麗に整頓されていて、一角にご神体のピラミッドが祀られていた。
「まぁ、座んな。今お茶を入れるから」
「はい、ありがとうございます。親切にしていただいて」
「なぁに、これも神様のお導きさね…まだ国交のあった時代にゃぁ、よくあんたの国に行ったもんだった」
「やはり宮国に来られていたのですか?」
「あぁ、子供の頃、農閑期のキャラバン隊に加わっていたあたしの爺さんの荷車に乗せられてね。ソムニアの大聖堂にお参りに行ったよ」
 老婆はお湯を沸かしながら、思い出すように顔を上に向けて話を続けた。
「立派な聖堂の空の上に真っ白な船が浮かんでいてね。もちろん、あたしらは船には乗せてもらえずに、広場から仰ぎ見てたんだけど、船から飛び立ったシムーンが、大空に神を讃えるリ・マージョンを描くんだ。光の航跡が綺麗だったね~…今でも覚えてるよ…あんたもやっていたのかい?」
「えぇ…でも、私たちの時代は戦争でしたから、戦いのリ・マージョンばっかりでした」

~続く~

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日本はまだスラム街らしいところはない代わりに若者の自殺が問題ですね。
国民が死人同然の国は国自体も同じに思えます。
どこぞの国も国民より軍事に重きを置いているし、日本やアメリカへの威嚇もやめない。
脱出を試みる人がいても当然ですね。
#4811[2016/09/24 16:15]  西條すみれ  URL 

この光景は、やはりとある国が思い浮かびますね

まだここまでスラムな界隈は見かけないですが、行き交う連中の感じは、これに近い気がします

そのうち、大気汚染がどんどん悪化して、呼吸器系の疾患で、1人また1人と亡くなっていき、気がつくとロボットが3Kな仕事をしていて、人口は少ないものの、表面上は荒廃していないように見える

そんな世界になりそうな気もしました
#4813[2016/09/24 17:00]  blackout  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 国民が死人同然の国は国自体も同じに思えます。
> どこぞの国も国民より軍事に重きを置いているし、日本やアメリカへの威嚇もやめない。
> 脱出を試みる人がいても当然ですね。

まだ、国外に逃亡して生き延びようとするだけ某国人はガッツがありますよ(笑)
日本人なんか一回へこんだだけで「死にたい」と言って自殺する有様ですからね。
いくら某首相やネトウヨが叫んでも、今の若者は兵隊として使えないと思います。
逆に言えば、ガッツのない国民だからこそ平和でいいのではないですか?(笑)
#4814[2016/09/24 17:02]  sado jo  URL 

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#4815[2016/09/24 17:03]     

Re: blackout様COありがとうございます^^

> この光景は、やはりとある国が思い浮かびますね
> まだここまでスラムな界隈は見かけないですが、行き交う連中の感じは、これに近い気がします
> そんな世界になりそうな気もしました

原作のアニメでは「南京」や「ブルックリン」のスラム街の光景が描かれてました。
なので礁国は大気汚染が激しい某国と、社会格差が激しい某国がモデルだと思います。
美しい自然に恵まれた宮国は、多分某国がモデルでしょう…って日本の事?
いや、某国と某国が同盟したら恐ろしい事になる…もしや、南沙問題は猿芝居かな?(笑)
#4817[2016/09/24 17:27]  sado jo  URL 

Re: m様COありがとうございます^^

追い詰められると男は憤死を選ぶが、女は最期まで生き延びようと努力する。
女性の思想・信条や発言がコロコロ変わるのは生きようとする執着心の証拠。
極右発言を繰り返す事で有名な某女性防衛大臣もこう言っています。
「戦争が起きるのは構わないが、自分や夫や子供が死ぬのはイヤだ」とね。
おいっ!…あんたは他人の夫や息子の自衛隊員なら死んでもいいと言うのかい?
女の本心はそんなもんです(笑)…でも生きたいと言う思いは可愛いものがある。
危ない男を選ぶか?危ない女を選ぶか?と問われたら自分は女の方を選びます(笑)
#4818[2016/09/24 17:48]  sado jo  URL 














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