シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】その9

Simoun 彼女達の肖像04
伝説のシムーン・シュヴィラ アイラとハンナ

「もったいないねぇ、あんな美しい飛行艇を戦争の道具に使うなんて…神様のバチが当たるよ」
「えぇ…神様のバチが当たりました。たくさんのシムーン・シュヴィラが戦死して、宮国は戦争に負けましたから」
「あたしの息子も、宮国との戦争で兵隊に取られて戦死しちまったよ…だから、今は独りぼっちだ」
「そうなんですか。お気の毒に…国と国の戦争は、勝っても負けても大勢の人が犠牲になりますね」
「親孝行な息子でね…山を下りて街に出てからも、ず~っとあたしの面倒を見てくれてたよ」
「お婆さんは、礁国北部の山地のご出身なんですか?どうして、故郷を捨てて隗市に?」
 老婆は運んできたお茶を古びたテーブルの上に置いて、ふう~っとため息をついた。
「それがねぇ…話せば長くなるんだけど、あたしらの先祖は元は北部の平野に住んでいたんだ。それがアリメンタが採れだしてから、政府に土地を追われて仕方がなく山に住み着いたんだけどね」
「えぇ、聞いた事があります。その昔、礁国北部の平野に住んでいた民族が、アイラとハンナと言う伝説のシムーン・シュヴィラに導かれて宮国にやって来て、神の教えを広めたと…お婆さんは、その信心深い民族のご子孫なんですね」
「ところがね…こっちじゃ平野を追われた事に不満を持つ連中が、神様を担ぎ上げてあちこちでテロをやりだしたのさ」

 パライエッタはアルクス・プリーマで自爆テロをやって死んだ嶺国の巫女、アングラスを思いだした。
 彼女のテロよって宮国と嶺国との和平交渉は決裂し、宮国は泥沼の戦争へと足を踏み入れてしまったのだ。
 その少女に過激な宗教思想を吹き込み、自らの出世のために戦争を画策した張本人が、今の北部宮国の総督で嶺国王立議会の副総裁でもあるアルハイトだった。
 しかも何とこの男は、政治家になる前の少女の頃は、国王も膝を屈すると言う嶺国最高の黄金の巫女・アウレアだった。
 欲望や憎しみは人を変えてしまう…宗教も政治も、人の欲望や憎悪がからめば人を害する凶器と化してしまうのだ。

「それで、政府の宗教への取り締まりが厳しくなってね。大勢の信者が逮捕されたり霊廟が取り壊されたり、住民が山を追い出されたりして…そりゃぁひどいもんだったよ」
「そんな事が起きていたんですか~」
「それで、あたしらもいたたまれなくなって、山を捨てて街に下りてきたって訳さ」
「そうだったんですか~…礁国の人々はみんな大変な思いをしているんですね」
「いゃいゃ、大変なのはあたしらだけさね。戦争で儲けてる連中は羽振りがいいよ~…繁華街はにぎわってるしね」
「そうなんですか?…でも、宮国にある私の孤児院には、礁国の人がよく赤ん坊を捨てに来るんですけどね」
「へぇ~、あんた孤児院をやっているのかい。さすがに元高位の巫女さんだねぇ…さぞ神様がお喜びになるだろう」
「いぇ、小さな孤児院なんですが、あんまり礁国人の捨て子が増えるので、気になって来てみたんです」
「さぁてね?…あたしらに比べりゃぁ、礁国の人たちが子供を捨てるほど生活に困っているようには見えないがね」
「他に何か理由があるんでしょうか?お婆さんたちみたいに、政治的な迫害を受けてるとか」
「さぁ?お上のやるこたぁここではわからんね~…都に行って聞いてみない事には」

~続く~

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~ Comment ~


アメリカとイスラムみたいですね。
欲望や憎しみは人間である以上仕方のない感情なのでISの行動も理解できなくはないですが
それを「神」をもって暴動を起こしているのだけは呆れるしかありませんね。
人間の感情で行動している以上神にはなれないし、神も望んでいない。
それに気づかない限りどちらかが滅ぶまで憎しみの連鎖は終わらないでしょう。
#4830[2016/09/29 10:00]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> アメリカとイスラムみたいですね。
> 人間の感情で行動している以上神にはなれないし、神も望んでいない。
> それに気づかない限りどちらかが滅ぶまで憎しみの連鎖は終わらないでしょう。

もし、イスラム教が邪教だったなら世界に12億もの信者はいません。
それを邪教にしてしまうのは、神の名を騙って自分達の欲望を遂げようとする亡者達です。
国家も同じ事…日本やアメリカは自然の豊かな美しい国です。だから人の心も豊かなはず。
権力の欲望に駈られた亡者達が美しい国を台無しにしてしまうのです…だから互いに争う><
せっかくいい宗教を持ち、美しい国に住みながらそれを壊す輩は人間のクズです!
#4832[2016/09/29 10:21]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
アメリカも戦前の日本同様帝国主義まる出しの差別主義国家ですね。
宗教がからむと余計にいけません。
さすがの政治屋もユダヤ資本にはヒトラー同様ペコペコしてるようですが、プロテスタント系でもアメリカは異常です。
ケネディはカトリック教徒でしたけどね(笑)
中南米諸国を米国の政治屋が侮蔑しているのも原因はカトリック教徒がほとんどだからかもしれませんよ。
#4833[2016/09/29 16:42]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> アメリカも戦前の日本同様帝国主義まる出しの差別主義国家ですね。
> 中南米諸国を米国の政治屋が侮蔑しているのも原因はカトリック教徒がほとんどだからかもしれませんよ。

米国のWASP=プロテスタント系白人が、自国や南米のカトリック教徒をバカにする様に、日本の政治屋も中国・韓国をバカにしたりしますね。
しかし、どちらが宗教や文化の親でしょうか?…生まれた経緯を知らずして今の豊かさに驕って親を貶すのは、すなわち自分自身の値打ちを下げる恩知らずです。
親がどんなにみすぼらしくてもひとまずは敬意を払え!…それが人の人たる道です。
平気で忘恩の行いをやるから子供が真似して罪を犯す…国が荒れる元になってる(嘆)
#4834[2016/09/29 17:33]  sado jo  URL 

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#4835[2016/09/30 16:50]     

Re: m様COありがとうございます^^

9月はジメジメしたお天気が続きましたね~><
10月は晴れると思いますが、小説の方は久方ぶりに筆を執った「やさしい刑事第5話:人形の涙」と言う少し湿った人情話を発表します。
それが終わると、いよいよ大河小説(笑)「ビーストハンター第4話:誰がために銃声は鳴る」…二部構成で12月まで続くお話です。アクション満載!読み応えのある小説にしたく思います♪
#4836[2016/09/30 17:59]  佐渡 譲(sado jo)  URL 

>こっちじゃ平野を追われた事に不満を持つ連中が、神様を担ぎ上げてあちこちでテロをやりだしたのさ

怨嗟や憎悪を晴らすための大義名分として、より大きな権威(神)を振りかざすんだろうなって思ったりします

状況は違いますが、ナルトで言うなら、サスケの原動力がこれにあたる気がしました

怨嗟や憎悪の対象が倒れても、結局はまた次の対象が現れてくる

収まるには、より強大な力に屈するか、怨嗟や憎悪が昇華されるか

そのどちらかでしょうね

ちなみにISは、どうも中央アジアのフェルガナ盆地あたりに身を潜め、着々と勢力を増強しているらしいです

なので、中国のウイグルあたりと繋がって、テロが起こる可能性も十分にあるらしいです
#4841[2016/10/02 20:26]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> 怨嗟や憎悪の対象が倒れても、結局はまた次の対象が現れてくる
> ちなみにISは、どうも中央アジアのフェルガナ盆地あたりに身を潜め、着々と勢力を増強しているらしいです

怨嗟や憎悪と言うものは、その根本を解消しないと永久に断ち切れません。
空爆は無駄な努力…今あるISを殲滅しても、幾らでもISは増殖して増えるだけです。
最期には「テロリストや犯罪者は皆殺せ!(トランプ氏やドゥテルテ大統領)」となる。
事実、フィリピンでは麻薬撲滅を口実に、民間人同士の殺人が公然と行なわれてます。
自分の小説『ビーストハンター』の予言がこんなに早く的中するとは思いませんでした。
11月より、執筆中の第五話・第六話「誰がために銃声は鳴る」の発表を予定しています^^
#4842[2016/10/02 22:17]  sado jo  URL 














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