シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】その10

オイルポンプ

「征都ゴンハイに…ですか?だいぶん遠そうですね」
「港から船が出てるけどね…でも今のご時世は、軍需物資の輸送が最優先だから、上手く切符が取れるかどうかね~」
「そうなると、昔、お婆さんたちの先祖が住んでいた北部の平野を通って行くしかなさそうですね」
「けど、平野はアリメンタを掘って土地を荒らしちまったから、今はすっかり砂漠になってるよ」
「それでも、私は行かなきゃならないんです…もうこれ以上、人の不幸を見るのはイヤですから」
「そうかい…そんなら止めないが、かなりキツイ旅になると思うよ」
「えぇ、覚悟はしています」
「ともかく、今夜はひとまずここで休んでお行きよ…粗末な食事で口に合うかどうか分からんが、夕食を作るよ」
「ありがとうございます。お婆さん」
 親切な老婆に巡り会ったパライエッタは、彼女の部屋に一晩泊めてもらった。

 翌朝、目が覚めたパライエッタは、礁国の首都ゴンハイに旅立つために身支度を整えた。
「ありがとうございました。お婆さん…何から何までまで、とてもお世話になりました」
 パライエッタがそうお礼を言うと、老婆は名残惜しそうに彼女の手を取って言った。
「ねぇ、お前さん…あたしを祝福してしておくれでないかい?」
「でも、私はもう聖なる巫女ではないんですが」
「構やしないよ…元巫女さんでも」
 老婆にせがまれたパライエッタは、膝まづいた彼女の頭に手をかざした。
「あなたに神のご加護がありますように」
「ありがたいねぇ…巫女さんに祝福してもらうのは何年ぶりだろう。これで安心して死んだ息子の所へ行けるよ」
「そんなこと言わずに、長生きして下さい。お婆さん」
「生きていたって、良いこたぁないけどね~…あんたも気を付けてお行きよ」
 こうして、親切な老婆に別れを告げたパライエッタは、隗市を出て一人でシャムオ砂漠に乗り出したのだった。

 ジリジリと照り付ける太陽は、パライエッタを苦しめた。
 熱い砂を踏む腫れた足は、もう痛みを通り越して感覚すらなくなってしまっていた。
 ふと見ると、砂漠のあちこちには、小山のように盛り土をしたアリメンタ採掘施設の跡が残っていた。
 すっかり掘り尽くされて枯れた井戸の上に、用済みとなった採掘ポンプが幽霊のように錆付いて突っ立っていた。
 殺伐とした風景の中で、ただ風に巻き上げられた砂塵だけが宙を舞っていた。
 一度破壊された自然環境は、容易には元に戻らない…礁国北部の広い平野は、完全に死んでしまっていた。
 かっては、この辺りは緑豊かな穀倉地帯が一面に広がっていた。

~続く~

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人間が生活するには直接的にも間接的にも自然と関わることですからね。
利用するだけでは自然にとって破壊になってしまいます。
再生することで自然と共生していかなければ。寄生ではいずれ限界がきますね。
#4837[2016/10/01 11:19]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 人間が生活するには直接的にも間接的にも自然と関わることですからね。
> 利用するだけでは自然にとって破壊になってしまいます。

いくら驕っていても、所詮人間は地球に寄生している蛆虫程度のもんですからね。
大事な宿主を殺してしまっては、自分も滅びる訳で元も子もなくなります(笑)
それが分からない連中が大勢いるから、地球がボロボロになってしまった><
どうやら人類は宇宙に飛び立つ蝿になる前に、宿主もろとも滅びそうです(馬鹿)
#4838[2016/10/01 13:00]  sado jo  URL 

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#4839[2016/10/01 16:23]     

Re: m様COありがとうございます^^

こちらは安定しない空模様です(苦笑)
お陰様で「なろう」などの小説サイトでも随分ファンが増えました。
今月は本業の連載小説の書き物が多く立て込み、忙しくなりそうです^^
#4840[2016/10/01 18:29]  sado jo  URL 














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