シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】その11

砂漠の蜃気楼

 国と国の行き来があった時代には、この平野で採れたたくさんの作物が宮国に運ばれた。
 地元の農民が組んだキャラバン隊が、国境にある山の回廊を越え、海の海峡を越えて宮国にやってきていた。
 クロム隗市の港には、穀物や野菜の買い付けにやってきた嶺国の貨物船も停泊して、たいそうにぎわっていた。
 だが、今の礁国北部にはかっての繁栄の面影はどこにもない…人々の欲望がすべてを変えてしまったからだ。
 科学技術の進歩によって巨大化した産業は、大量のエネルギーを消費するようになった。
 そこで人々が目を着けたのは、この礁国北部の地下に埋蔵されている有機燃料アリメンタだった。
 かってこの平野が肥沃な穀倉地帯だったのは、農民たちがそれを自然の肥料としていたからだったのだ。
 礁国の資本企業家たちは最初は金で、次は国家権力の力を借りて、農民たちから次々と土地を奪っていった。
 土地を追われた農民たちは仕方なく山に移り住み、或いは街に出た…宮国に安住の地を求めて移民してくる人もいた。
 そして、アリメンタを掘り尽くした土地は活力を失い、草木とて生えない砂漠と化してしまったのだった。

 パライエッタは、荒涼としたシャムオ砂漠を南にある征都ゴンハイ目指して旅を続けた。
 使い捨てられた採掘施設の跡で夜を明かし、井戸に残っているわずかな濁り水をくんで渇きを癒しながら何日も旅を続けた。
 けれども、か弱い女の身で厳しい砂漠の旅を続けるのはしょせん無理だった。
 足を引きずりながら歩いてきたパライエッタは、ゴンハイに繋がる幹線道路の前で朦朧として意識を失った。
 はるか彼方には、まるで蜃気楼のような山並みが浮かんでかげろうのようにゆれていた。

「おぉ、気が付いたか…よかった~」
 心配そうにのぞき込んでいた男が、気が付いたパライエッタに声を掛けた。
「ここは…どこですか?」パライエッタは男に尋ねた。
「わしらのトラックの中だよ」男はそう答えた。
 パライエッタの周りには三、四人の男女がいたが、みんな歳を取っていた。
 荷台にたくさんの野菜が積まれているところをみると、どうやら農産物をどこかに運んでいるらしい。
「あんたが道端で倒れていたもんでな…トラックに運んできて乗せたんだ」
「あぁ…助けていただいたのですね。どうもありがとうございました」パライエッタは男に礼を言った。
「あんた無茶だよ~…どんな事情があるかは知らないが、女一人で砂漠を歩くなんて」
 男の側にいた小太りのおばさんが、パライエッタをたしなめるように言った。
「すみません…どうしても、ゴンハイに行かなきゃならない事情があったものですから」
 パライエッタは、一人で砂漠を歩いていたいきさつを話した。
「戦災孤児の面倒をみているとは奇特なこったな…そうかい、礁国人の捨て子ね~」
「えぇ、それで戦争に勝っている豊かな国からなぜ難民が出るのか?と不思議に思って来てみたんです」

~続く~

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~ Comment ~


いつだって豊かなのは国のお偉方や一部の富裕層のみ。
今日を食べて過ごすために汗水垂らす庶民はいつまでも豊かにならない。
なんちゃらノミクスもそうでしたね(笑)。
日本だって外から見る限りでは産業が発達していて豊かだけど、中から見るとそうでもない。
そういう意味では外国の方に見てもらいたくないような、もらいたいような。
#4859[2016/10/06 10:17]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> いつだって豊かなのは国のお偉方や一部の富裕層のみ。
> 今日を食べて過ごすために汗水垂らす庶民はいつまでも豊かにならない。
> そういう意味では外国の方に見てもらいたくないような、もらいたいような。

上の者だけが得をしない様に民主主義をやってるのに、相変わらず変らない><
システムが間違ってるのかも(笑)…内から見えない事も、外からは良く見える。
国の恥は晒して指摘してもらった方がいいです…隠すとソ連みたいに倒れてしまう。
中国がやってこれたのは、隠さないで外からガンガン批判してもらえたからです。
批判はありがたい…自分の欠点や改善すべき所が見えてくる。誰も言わなくなったらお終い!あぁ見えて中国は世界に愛されていると言う事。
日本はどうかな?批判されるとスグ逆ギレする某総理大臣殿…人が何も言わなくなったら終りです。人の言う事には謙虚に耳を貸しましょうね(笑)
#4860[2016/10/06 11:43]  sado jo  URL 

平和を敵視する妖怪の孫、某総理の救いようのない貧弱な発想が国民を苦しめていることもわからない取り巻き連中も揃ってゲスばかり。
国民が黙して語らなくなるとお仕舞です。
いつのまにか戦争に加担させられることだけはゴメンだと国民自身が気づくべきですね(^_-)-☆
#4861[2016/10/06 16:38]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 国民が黙して語らなくなるとお仕舞です。
> いつのまにか戦争に加担させられることだけはゴメンだと国民自身が気づくべきですね(^_-)-☆

自民党の「新憲法草案」を見ると、明らかに戦前回帰を目指してますね。
「天皇」を国家元首とし、その下に「国防軍」を置いて「徴兵制」を敷く。
そして基本的人権の「個人の自由」より「公共の秩序」を重んずるとなってます。
はて?個人の自由より大事な「公共の秩序」とは何でしょうか?意図が丸見え(笑)
憲法改革に賛成のみなさん…どうぞ、お国の為に勇ましく戦って散って下さい。
あなたの死を無駄にはしません。英霊として靖国神社に祀って差し上げます(笑)
#4862[2016/10/06 17:50]  sado jo  URL 

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#4863[2016/10/07 17:09]     

Re: m様COありがとうございます^^

文部省と過保護なPTAが日本の若者をダメにしたのは充分知ってます。
自分らの頃は、曲がった事が大嫌いな戦中派の教師ばかりで、ひねた根性で弱い者虐めなんぞしようものなら即ビンタが飛んで来ました…まるで軍隊式でしたね(笑)
ただ、自分達がやった戦争の反省から「皇国史観」は一切言わなかった。子供を二度と自分達と同じ目に遭わせたくないから…田舎の学校の教師さえしっかり子供の未来を見つめてた。
だから、敗戦で社会は荒れてたのに、戦後の青少年の犯罪率は驚くほど低かったんです。
#4864[2016/10/07 18:13]  sado jo  URL 














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