シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~ 小説本編

乙女達の祈り 第7話 【異郷】その12

軍用トラック

「そりゃぁ、戦争して得するのは上の連中だけだからね…わしら庶民は、戦費調達のために税金は上がるし楽じゃないよ」
「そうそう…若いもんをみんな兵隊に取られて働き手がないもんだから、わしらがこうして働いてる訳だわさ」
「あんたら、お上の悪口を言うのはおよしよ…捕まっちまうよ」
 もう一人の男も一緒になって政府をけなし始めたので、小太りのおばさんが心配して止めた。
「なぁに…警察や憲兵はここまでやって来やしねぇよ」男は笑ってそう答えた。
「そうですか~…戦争に勝っている側も生活は楽じゃないんですね」
「いやね…わしら元々は、都の近くで百姓をしてたんだけどね。工場が盛んに建ち出してから土壌汚染がひどくなって、作物が採れなくなっちまったのさ」
「それで、仕方なく地方まで出掛けて野菜を買い付ける仲買人になったんだけどね…中にゃぁ土地を捨てて宮国まで流れて行った者もいるかも知れんな~」
「そうだな…そんな連中が生活に困って子供を捨てたのかもな~」
「そんな事情があったんですか~…そうとは知りませんでした」
「まぁ、ちょうどわしらもこれからゴンハイの市場まで行くところだし…よかったら乗せていってあげるよ」
「ありがとうございます」
「でも、宮国人のあんたが行ったところでどうにもならんと思うがね~」
「どうしてでしょうか?」
「悪い事は言わん…宮国も戦争の真っ只中で大変だとは思うが帰った方がいいよ」
 小太りのおばさんは、そう言ってパライエッタをたしなめた。

 そんな話をしているところへ、後ろから砂塵を巻き上げながら一台の車がやってきた。
「あっ!礁国軍のトラックが後ろから走ってきているぞ」
「おぃっ!路肩に避けて道を譲れ…難癖つけられちゃぁかなわんからな」
 運転していた男はそう言われると、トラックを道の端に寄せて停車した。
 パライエッタが通りすがりに見たその軍用トラックには、獣を入れる檻が積んであった。
 そして、何とその檻の中には嶺国のシムーン・シヴュラの少女たちが閉じ込められていた。
「あれは?」あまりの事に驚いたパライエッタは、側にいる男に尋ねた。
「あぁ、ありゃぁ嶺国の魔女さね…おおかた戦場で捕らえたんだろう」
「捕らえてどうするんですか?」
「あんた知らないのかい?…都の広場で火あぶりにするのさ。ま、公開処刑ってやつかな」
「捕虜にした嶺国の少女を火あぶりにするんですか?」
「そうだよ…怪しげな魔術を使ってシムーンを操る魔女は火あぶりにしなきゃぁね」
(何て事だろう…この親切そうに見える礁国の人々は、シムーン・シヴュラを魔女だと思っている)
 パライエッタは愕然とした(誰がそんな風に人々に教えたのだろう?もしや、礁国政府が教えたのだろうか?)
 元シムーン・シヴュラだったパライエッタは、異常な事を正しいと信じている人々にゾッ!とした。
  戦争は国民を変えてしまう…一見普通に見える礁国の人々の感覚は、決して普通の人間の感覚ではなかった。

乙女達の祈り 第7話 【異郷】 終了

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~ Comment ~


魔女狩りも今思えば本当にそんな力があるなら逆に狩られてもおかしくないだろうに。
私も時代が違えば狩られてたのかな(笑)。魔術も科学だったりするけど。
しかし、捕虜を生かさないのなら礁国も大変な目に遭うでしょう。
敵といえども同じ人間ですからね。
#4865[2016/10/08 11:35]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 魔女狩りも今思えば本当にそんな力があるなら逆に狩られてもおかしくないだろうに。
> しかし、捕虜を生かさないのなら礁国も大変な目に遭うでしょう。
> 敵といえども同じ人間ですからね。

逆説的に言えば本物の魔女なら人間如きが狩れるはずがない。その前に死んでます(笑)
地球では捕虜虐待や処刑は国際法違反ですが、大空陸世界では政府の権力は強力です。
政府の権力が強いと庶民はロクな事になりません…日本を始め世界的な傾向に現れてる。
世界のロシア化・中国化・フィリピン化です。アメリカももうすぐそうなるかもね(笑)
「シムーン 第二章」はよその星の話じゃなくて、この地球の事かも知れませんよ。
#4866[2016/10/08 13:04]  sado jo  URL 

いつの時代もそうですが戦争は人間を狂気に追い込みます。
何が正義すらわからない人間をつくりだし、あとになってPTSDになってしまうパターンはまったく変わりませんね(*^^*ゞ
武器を捨てよ!!です。
#4867[2016/10/09 16:48]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> いつの時代もそうですが戦争は人間を狂気に追い込みます。
> 何が正義すらわからない人間をつくりだし、あとになってPTSDになってしまうパターンはまったく変わりませんね(*^^*ゞ

戦後、戦地から復員してきた日本兵の間で「バクダン」なる焼酎が流行りました。
工業アルコールを混ぜた強い酒で、多くの復員兵が身体を壊し、亡くなりました。
彼らは戦争で患ったPTSD(心的外傷症候群)を強い酒で紛らわそうとしていたのです。
復員兵だった私の父も、PTSDの苦しみを紛らわす為密造したドブロクを呑んでました。
現在、米国では年間8000人の中東などからの帰還兵がPTSDに苦しんでいるそうです。
米国で暴力が絶えないのは、戦争の影響で心が病んでしまった人が多いからです><
勇ましい事ばかり言う日本人は、一度PTSDの苦しみを味わったらいいと思います。
#4868[2016/10/09 17:32]  sado jo  URL 














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