シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

アニメ /コミック

この世界の片隅に ~封切3カ月後もヒット中の秘密~

この世界の片隅

『この世界の片隅に』(こうの史代:漫画 片渕須直:監督)と言うアニメ映画が日本の映画賞を総なめにした。
さほど目立たない作品にも拘らず、大ヒットした「君の名は」や「シンゴジラ」を押しのけて堂々の栄冠に輝いた。
驚いたり、がっかりされた方も多いと思うが、元映画人だった自分はそれを予測していたし、当然の結果だと思った。

戦争を題材にした作品と言うと、反戦・平和をテーマにしたどこか政治色の強いものが多く、近年は余り人気がない様だ。
ところが『この世界の片隅に』はまったく違っていた…戦争を当たり前の日常とし、淡々と生きる庶民の姿が描かれていた。
ともかく人々はよく笑い、つつましやかな食卓を囲み、たわいのない話をし、たまには夫婦喧嘩もする…そんな映画だった。
もちろん、映画の中では主人公「すず」の姪が空襲で死んだり、姉が広島の原爆に遭って亡くなったりする場面も出て来る。
だが、その悲惨さの中でことさら政治色を強調してはいない…今までとまるで違う戦争映画だっただけに余計に胸に堪えた。
当時の呉軍港に停泊する「戦艦大和」のマストを止まり木にしてカモメが群れていた風景は、とても印象に残るものだった。
ふと思った…四六時中戦争をしているアメリカのサンデェゴ港に停泊している軍艦でも同じ風景が見られるのではないかと?
アメリカ人は戦争と言う日常の中で生活している。軍艦も戦闘中でなければただのオブジェであり、カモメの止まり木なのだ。

思い出せば、自分が育った実家には広い囲炉裏部屋があって、戦争から帰って来た村の復員兵達がよく集まって来ていた。
そうして、人の良い祖父が作ったドブロク(密造酒)を飲みながら出征した体験を語るのを、傍で聞いていた記憶がある。
召集令状が届いて戦地に赴くと言うと、死を覚悟して出征する様な描かれ方がしてある映画や文学が多いが、実際は違う。
死を覚悟したのは戦争末期の特攻隊などの話で、当時の村の青年にとって兵隊になるのはあこがれで、勇んで行ったそうだ。
皇軍の姿を見たら敵は蜘蛛の子を散らす様に逃げると教えられていたし、日本の兵隊は現地の女にモテると思ってたらしい。
実際には散々な目に遭ったのだが、それでも映画や文学の様な暗い話より、現地で見聞した明るい話の方が多かったと思う。

庶民感覚とはそんなもので…だけに戦争は生活の中に入りやすく、彼らは日本がいつから、なぜそうなったか知らなかった。
軍艦が港に停泊していても、戦闘機が飛んでいても、兵士が街を歩いていても、いつしかそれは日常の風景になってしまう。
誰かが人々に敵愾心を焚き付けても、それを批判する人がいても「あぁ、またか」で慣れっこになって殊更気にも留めない。
自分の頭上に爆弾が降って来て、周りの人が死んでやっと戦争してるんだと言う実感が湧く…庶民にとっての戦争はそうだ。
誰もマッチ1本が大火事の元とは考えないが、実際の火事は些細な火種から起きる…戦争は日常をデフォルメした現象なのだ。
故に戦争は日常の中にあり、決して非日常的な出来事ではなく、明日起きるかも知れないし、来年に起きても不思議ではない。
要は日常にある人の心がどうデフォルメされるかによる…そして日常を生きて来た人が、非日常を当然の如くに生きてゆく。
戦争の中で異常に見える事は、実は日常が極端にデフォルメされた現象なのであり、人は誰もがそうなる資質を持っている。
『この世界の片隅に』は、今の時代に生きる人々の感覚と、戦時中に生きた人々の感覚が見事にシンクロして描かれてます。
それが人々の共感を呼ぶのでしょう…戦争は決して異常な非日常ではありません。すでに我々の心の中に存在しているのです。
だけにそれがデフォルメされた時、戦争は日常になります。普段は恐ろしいと思わない事が恐ろしい現象として現れるのです。



この世界の片隅に とくダネ

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#5636[2017/03/15 01:13]     

今思うと「受験戦争」って言葉は面白いですね。
高い競争率の中で争い、合格発表が出るまで結果はわからない。
努力をしたから合格することもあれば、努力をしても落ちるときは落ちる。
スポーツだって、相手も努力をしているから結果は出るまでわからない落とし合い。
ただ、今の安倍政権は落とし合いというより足の引っ張り合いのほうが合ってますね(笑)。
#5637[2017/03/15 10:31]  西條すみれ  URL 

君の名は、かと思いました

こんにちは~~~♪
真冬のような寒さが戻ってきましたね。花冷えにはちょっと寒いような。

驚きました。
けど、sadoさんは予測されていらしたのですね。

戦争の中でも庶民はつつましく、智慧でもって暮らしを営む。
そういえば、小さなころは、台所の間で囲むテーブルは、丸いちゃぶ台だったですね。
懐かしい光景を、思い出させてくれるような、アニメだと思いました。

こういうのアニメって、不変?というのか、琴線に触れるというのでしょうか。
切なく甘く、そして、明日を信じることができるような気にならせてくれますね。^^

#5639[2017/03/15 12:20]  窓  URL  [Edit]

「この世界の片隅に」と「君の名は」は昨年の映画界の
大きなトピックでした。
映画や小説の「反戦」は声高に主張しない作品の方が
胸を打ちますね。
例えば「禁じられた遊び」とか「火垂るの墓」とか。
この両作品とも一度見たらトラウマになり二度と見たくない
傑作です。
#5640[2017/03/15 12:49]  エリアンダー  URL 

Re: M様COありがとうございます^^

皆さんが映画館に行く切っ掛けは、その映画の「知名度」と「宣伝」を見て…ですよね。
確かに、宣伝の行き届いた有名歌手の歌なら、お金を払っても外れはないでしょう(笑)
でも、プロは無名の歌手も発掘しなきゃならない…だから、量ではなく質で作品を観ます。
「この世界の片隅に」 は、そんなプロを感動させるに充分な素晴らしい内容の作品でした。
アカデミー賞は知名度や評判だけでは決まりません…ぜひ、ご覧になって下さい^^
#5641[2017/03/15 13:02]  sado jo  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 今思うと「受験戦争」って言葉は面白いですね。

いい所に気が付きましたね^^…そう、人間は日常茶飯事に争っています。
その形が国家規模にデフォルメされたのが戦争です。だから戦争は異常現象ではない。
戦争は日常的にあって、誰しもがその原因となる種子を持っている…そこが恐いのです。
人は、政治家のやり取りを見て「醜いな」と思う…だが、あなたも日常的にエゴや立場やプライドから足の引っ張り合いをして争ってはいませんか?
だから、ちょっと油断するとすぐ戦争は起こるし、人は戦争に馴れ親しみやすい(笑)
#5642[2017/03/15 13:19]  sado jo  URL 

Re: 窓様COありがとうございます^^

> 君の名は、かと思いました
> けど、sadoさんは予測されていらしたのですね。
> 戦争の中でも庶民はつつましく、智慧でもって暮らしを営む。
> こういうのアニメって、不変?というのか、琴線に触れるというのでしょうか。

「君の名は」「シンゴジラ」が幾ら大ヒットしても、時代を超えて残るとは思いません。
人の心に残る作品には命が脈打ち、時代を超えて人の共感を呼ぶ「普遍の原理」があります。
それは映画も、文学・芸術も同じ…「君の名は」「シンゴジラ」は特殊な現象を描いてます。
一方「この世界の片隅に」は、現代に生きる我々と同じ、誰にでもある人の生活を描いてます。
その日常が、戦争と言う現象によって徐々に壊れてゆく…身近に感じさせる近親感があります。
それが人を惹き付けてやまない魅力でしょう…数々の映画賞はダテではないんですね^^
#5643[2017/03/15 15:27]  sado jo  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> 映画や小説の「反戦」は声高に主張しない作品の方が胸を打ちますね。
> 例えば「禁じられた遊び」とか「火垂るの墓」とか。

米軍の捕虜になって、戦後に復員して来た元兵隊さんから聞いた話です。
故郷に帰ってみると自分は戦死した事になっていて、妻は弟と再婚して家庭を築いていた。

※ 日本軍には「生きて虜囚の恥を受けず」と言う掟があったから、戦死扱いにされていた。

映画「ひまわり」を観た時思い出しました。洋の東西を問わず、戦争は人を引き裂く…と。
戦場の惨たらしさを描いた戦争映画よりも、はるかにグッ!と来るのはなぜでしょうか?
#5644[2017/03/15 15:29]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
私は二作品とも観ていないので作品の良しあしへのコメントはしませんが、日本映画最高作品は山本薩夫監督の大作「戦争と人間」以外にないと考えます。
これを超えるようなものはいっさいないと断言したいくらいですね。
#5645[2017/03/15 17:18]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 私は二作品とも観ていないので作品の良しあしへのコメントはしませんが、日本映画最高作品は山本薩夫監督の大作「戦争と人間」以外にないと考えます。

文豪:五味川純平氏原作の日活映画「戦争と人間」は戦争映画の大作ですよね~
でも、この映画が戦争映画のジャンルに入るかどうか?…どころか「禁じられた遊び」「ジョニーは戦場に行った」「ひまわり」「火垂るの墓」すら戦争映画なのかどうか?
人は戦争の渦中で常に闘う事ばかり考えてる訳じゃない…家族がいて、愛し合い、メシを食う普通の生活があるはずです。それらが戦争によって壊れてゆく。
「この世界の片隅に」は、歴史ではなく人として見た戦争と言う出来事を描いた作品だと思います。
#5646[2017/03/15 18:13]  sado jo  URL 

ええ、戦争は日常茶飯事的にあると思います
現に自分も、最近VXガスを浴びせられたに等しい仕打ちを受けましたからねw

腹立たしいのと同時に心底「素敵だ」とも思ったんですが、やっぱり自分はどこか壊れてるのかなとw
#5648[2017/03/15 19:44]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> ええ、戦争は日常茶飯事的にあると思います
> 現に自分も、最近VXガスを浴びせられたに等しい仕打ちを受けましたからねw

人も生物である以上、種を保存する為の副産物として「闘争本能」を持ってます。
それがデフォルメされると、集団で他種族・他生物を排除する暴力へと発展します。
人間は、歴史上たくさんの人間に集団暴力を奮って、他種族や民族を根絶しました。
オーストラリアでは「邪魔だ」と言う理由から、多くの種を絶滅に追い込みました。
戦争の原因は本能の中にあり、戦争のトリガーは、嫌でも日常茶飯事に存在しますよ。
#5650[2017/03/15 20:30]  sado jo  URL 

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#5651[2017/03/17 16:53]     

Re: m様COありがとうございます^^

自分も最近は体調が悪くて、出掛ける予定はありません。
部屋が散らかったまま片付かないのと、ブログの記事が書けないのが悩みの種です。
きっと未来社会なら、体調が悪い時は代理のロボットがやってくれるんでしょうね。
もう少し、遅く生まれたかったなぁ…と後悔してます(笑)
#5652[2017/03/17 18:05]  sado jo  URL 

この作品にも関心をもっております。
戦時下の日常が、とてもうまくかかれていると評判ですよね。
すごい作品だと思います。
#5653[2017/03/17 20:33]  マウントエレファント  URL  [Edit]

Re: マウントエレファント様COありがとうございます^^

> 戦時下の日常が、とてもうまくかかれていると評判ですよね。
> すごい作品だと思います。

作者も監督も、思想家でも反戦家でもありません…戦時中の風景を素直に描いてます。
だけに、余計に我々の身近にある日常と同じに思えて、エピソードが胸にジンと来ます。
のどかな田園風景と空を往くB-29…そんな景色が、過去の日本には現実にあったんですね。
#5654[2017/03/17 22:31]  sado jo  URL 

こんにちわ
戦争の中の日常に焦点を置いたのは
ある意味斬新だと思います
#5663[2017/03/20 11:56]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> 戦争の中の日常に焦点を置いたのは
> ある意味斬新だと思います

普通、戦争に関する映画は当事者=戦争に関った軍人や政治家の目線で描かれます。
だが「この世界の片隅に」は部外者(と言っても当然巻き込まれます)の目線です。
上が何をやってるのか分からないが、自分達は生活して生きてゆく…と言う庶民達。
それは今の時代と見事にシンクロしています…斬新であり、共感出来る映画です^^
#5664[2017/03/20 15:15]  sado jo  URL 

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#5665[2017/03/20 15:20]     

Re: M様COありがとうございます^^

そうですか…ご返信ありがとうございます^^
家は人が住んでこそのもの…人がいなくなれば家の役目は終ります。
惜しい気もしますが、やはり、街は何でもあって暮らすのに便利ですからね。
#5666[2017/03/20 16:58]  sado jo  URL 














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