シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

▼ゴジラの子守歌

ゴジラの子守歌 第3夜

ゴジラ幻想メソッド03

 オーストラリアの海洋生物学者 ポール・ブリッグスは、シャーク湾へ学術調査に来ていた。
 海洋生物学と言っても、彼は特定生物を対象としてるのではなく、むしろ種の進化を研究していると言った方がよい。
 なぜ海で進化の研究なのかと言うと、地球の生物の90%は海に棲息していて、その種類は陸上生物の数十倍に当たるからだ。 
 特にここペロン半島の付け根にあるハメリンプールと言う入り江には、地球最古の生物が今も群れをなして生きている。
 まるで海岸に並んだドーム状の岩石のように見えるストロマトライトを形成するシアノバクテリアの一種がそれだ。

 およそ46億年前、小さな岩の欠片に隕石が次々と衝突し、膨れ上がってできた灼熱の惑星があった。
 どろどろに熔けていた溶岩は、盛んに水蒸気を放出して徐々に冷えて固まり、惑星の表面には海が形成された。
 惑星の大気中にはまだ酸素はなく、海と言っても硫化水素やシアン、硫酸などに満たされた最悪の環境の海だった。
 そんな猛毒の海に入ったら、人間はおろかいかなる生物でもたちどころに死んでしまう事だろう。
 だが、生命はそんな劣悪な環境にあった海底の熱水噴出孔である高温の海底温泉の中から誕生した。
 マグマが地表に噴き出す火山国の日本には、現在でも周辺の海底に多数の熱水噴出孔がある。
 そして、その周辺には数十億年前の原始の地球そのままの海の生態系が存在する。
 熱水に棲むバクテリアやプランクトン、それらを捕食するチューブワームやエビ、カニ、巻貝が群をなして生きている。
 そのほとんどは酸素を嫌う嫌気性生物で、人間にとっては毒にしかならない物質を呼吸してエネルギーを得ている。
 はるかな昔、熱水の海底温泉で誕生した生命は次第に海の中に広がってゆき、やがて浅瀬にまで進出した。
 そこで生命は初めて太陽と出会った。そしてシアノバクテリアは太陽のエネルギーを得て猛烈に繁殖を始めた。
 それは、太陽の光で体内にある二酸化炭素をエネルギーに変換する生物史上初の光合成だった。
 そのシアノバクテリアが光合成をすませて排泄した物質こそが酸素だった…そうして酸素は海と大気に満ちていった。
 しかし、それは他の生物にとっては危険な代物だった。すべての物質を酸化させて燃やし尽くしてしまう猛毒だったからだ。
 たちまち海は酸化した鉄で赤く染まり、酸素で身体を焼かれた生物の死骸が漂い、原生代大量絶滅と呼ばれる現象が起こった。

 その災禍の中を懸命に生き延びようとした生物がいた。
 数多の同類を失って試行錯誤しながらも、ついに酸素を取り込んで蛋白質をエネルギーに変換する事に成功した。
 それはそれまでのエネルギーよりもはるかに効率がよかった。パワーもスピードも運動量も飛躍的なものになった。
 彼らは酸素で弱って滅んでゆく他の生物を尻目に、海の中を放浪し遠くまで泳いでいって勢力を広げた。
 そうしてある日、すっかり弱りきって縮こまっていたある生物のコロニーに飛び込んだ。
 やっと餌にありつけると勘違いしたコロニーの生物は、この有酸素生物を体内に取り込んだ。
 そこで奇跡が起こった。体内で暴れ回る有酸素生物が弱っていたコロニーの生物を活性化させたのだ。
 そこで活性化したコロニーの生物は、取り込んだ有酸素生物ごと自分の身体を分裂させてコピーした。
 コロニーの生物にとっては、繁殖に必要な高いエネルギーを供給してくれる有酸素生物。
 有酸素生物にとっては、労せずして自分をコピーして繁殖させてくれるコロニーの生物。
 お互いの利益が一致した結果、共生関係が生まれ、現在のほとんどの生物の身体を形作る真核細胞が誕生した。

~続く~

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~ Comment ~


地球のおよそ7~8割は海ですからね。
毒は身を守ったり狩りをするために進化して得た能力で、特に強力なのは海に集中してますが
最近じゃ陸のほうが圧倒的ですね。それも進化ではなく開発したもの。
相手を狩るところまではできても、自分の毒でやられたらなんとも間抜けですね(笑)。
#5950[2017/05/17 10:02]  西條すみれ  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 毒は身を守ったり狩りをするために進化して得た能力で、特に強力なのは海に集中してますが
> 最近じゃ陸のほうが圧倒的ですね。それも進化ではなく開発したもの。
> 相手を狩るところまではできても、自分の毒でやられたらなんとも間抜けですね(笑)。

ゴジラは自分の出す放射能でやられるか?毒蛇は自分の毒にやられるか?
自分が撒いた毒にやられるのは人間ぐらいのものです…挙句の果てに環境を破壊してる。
何とも間抜けな救いようのない生き物です。よっぽどバカじゃなかろか(笑)
酸素は、実は地球上の生物の90%を絶滅させた猛毒でした。放射能もそれくらいの生物を絶滅させる力のある猛毒です…さて、ゴジラはなぜ猛毒の放射能に適応できたのでしょうか?
#5951[2017/05/17 11:08]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
シアンと青酸は同一のものですよ(笑)
ナトリウムやカリウムなどの化合物だと青酸カリとか生産ナトリウムなどとひょうげんしますよね。
CN=青酸でやんす(。^p〇q^。)プッ
#5952[2017/05/17 17:07]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> シアンと青酸は同一のものですよ(笑)

ははは…硫酸と間違えてますね。よく校正してないからミスしました(苦笑)
いずれも、工業生産物を作る過程で出る有害毒物で公害の原因になったりします。
後に、水俣病の原因となったメチル水銀や、森永砒素ミルク中毒などもあります。
原始の地球の海の中は、そんなゾッとする毒物ばかりで満たされていたそうです。
原初の生命はその毒物の中から生まれて毒物を食べ、呼吸して生きてたそうです。
なのでゴジラが放射能に適応しても不思議ではない…除染作業の役に立つかも(笑)
#5953[2017/05/17 18:21]  sado jo  URL 

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#5958[2017/05/19 17:17]     

Re: m様COありがとうございます^^

今日は病院に行ってきました。待ち時間が長くて皆さんにコメント出来なかったです><
週末は相変わらず体に不調を抱えるお年寄りで混んで、日本は将来大変だと思いました。
旅行に行けるのは元気な方だと思いますよ^^…自分もまだ歩けるだけマシですが(笑)
#5959[2017/05/19 20:17]  sado jo  URL 














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