シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

随想/論文集

時の流れを遡る日本人の感性 ~カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞に思う~

イシグロ氏

英国在住の日本人作家「カズオ・イシグロ氏」がノーベル文学賞に輝いた事をまるで自分の事の様に嬉しく思います。
恥ずかしい話ですが、私はカズオ・イシグロと言う作家の存在も、彼が書いた作品も今までまったく知りませんでした。
にも関わらず、彼の「私を離さないで」と、私の「クローンの嘆き」が同じ発想で描かれた作品である事に驚いています。
勿論、ノーベル賞受賞作家の作品と、しがないブログ作家である私の作品では比べ物にならないのは充分承知しています。
けれども、私はイシグロ氏を知らなかったのだから盗作するはずもなく…なのにどうして一致してるのか不思議に思えます。
洋の東西に住みながら、なぜこんな共鳴が?…そう考えてると多くの日本人が持っている特異な精神性が浮かんできました。

そう…日本人は西洋人と違って時を遡り、死から逆算して物事を考える事のできる独特の死生観を持っている民族なのです。
それは広大な大陸で遊牧生活を営み、牧草地を求めて移動を繰り返してきた西洋人の祖先とはまったく異なる思考形態です。
我々の祖先は日本と言う島に閉じ込められ、巡る四季を見てきた…春に生まれ、夏に盛え、秋に年老いて、冬に死んでゆく。
その巡る輪廻の死生観に仏教思想が加味され、人として必然的に訪れる死を前提として物事を考える様になったのでしょう。
つまり、英国に住むイシグロ氏も、日本に住んでいる私も同じ感性を持つ日本人だった…だから発想が一致していたのです。

文学にしろ映画にしろ、創作作品には臭いと言うものがあります。映画界にいた私はその臭いの違いを嗅ぎ分けてきました。
日本人が創る映画には独特の臭いがあります。だが洋画にはその独特の臭いはありません…それは感性の違いからきています。
死ぬ事を前提として「お国の為に死ぬ」などと戦争に出掛ける西洋人は一人もいません。だが、日本人はやってのけるのです。
だから、命を的に敵艦に体当たりする特攻と、神の為に殉教する西洋人やアラブ人の精神性は根本的に異なっているのです。
人にとって死は必定…逃れられぬ運命(さだめ)と悟達した民族は世界広しと言えども日本人だけではなかろうかと思います。

勿論、現実の特攻や自殺はしてはならないが、その感性が創作に生かされれば、日本人の作品は独特の雰囲気を醸し出します。
前提に死があり、生を逆算して作られた日本の文学や映画・アニメが西洋人の心を揺さぶるのは、彼らにはないものだからです。
「私を離さないで」は、外国で日本人の両親の元で育ったイシグロ氏だからこそ日本的精神への憧れが出ているのだと思えます。
移ろう四季の如く輪廻転生を繰り返し、死を突き抜けた先に何があるのか?これこそが日本人が求めてやまないテーマでしょう。
そして、この様な独特の悲壮感や死生観にあふれた作品は日本人にしか創れません。そこが日本人の素晴らしさだと思います。
年齢も近く、顔や雰囲気がどことなく私に似ているイシグロ氏の日本人特有の感性を生かした今後の活躍を願ってやみません。

(▼)自分で言うのも変ですが「クローンの嘆き」は私が書いた小説の中でも、秀作の部類に入ると思います。

地球年代記 ~カルマ~ 第6話 「嘆きのクローン」 (小説のリンクの続きはページ下部の【Back】から読めます)

(▼)併せて、イシグロ氏の原作になる映画「私を離さないで」の予告編の動画を掲載しておきました。
ノーベル文学賞に相応しいとても優れた作品です。DVDはツタヤなどのレンタルショップにてお借り下さい。


映画 「わたしを離さないで」 予告編 原作:ノーベル文学賞作家「カズオ・イシグロ」

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~ Comment ~


譲さん、『嘆きのクローン』は、すごくいいお話でしたよ。
確かに「秀作」でした。
涙が何度も流れ出ました。
いまも流しながらコメントを書いています。
人間が家畜を飼って殺して利用している残酷さは、以前から気になっていました。

> 人は誰しも、知らず知らずの内に自分が重い罪を重ねている事に気付いていない。
> 人の生は、それが動物であれ人間であれ、誰かの犠牲の上に成り立っているものだ。
洋の東西を問わず、現代人は、ほとんどの人が牧畜業も農耕業もしていませんが、
受け継いできた精神性という血は、ひとの根底にしっかりとあるのでしょうかね。

一部の特権階級が他の人たちをあたかも食い物のようににしている格差社会。
その流れがますます拡がる一方に見える現代社会と重ね合わせて読みました。
人間というのは本当に利己的な生きものなんですね。
ただ、それが人間本来の性向ではないと思いますが。

> 日本人が創る映画には独特の臭いがあります。だが洋画にはその独特の臭いはありません
そうなんですか。その逆か、あるいは双方ともにあるが自分では気づかないのかと思っていました。

人の世の生存は無常で、のちには永遠の静寂があるだけ。
あるいは、人の世は生存競争で、のちの世には永遠の至福が待っている。
この考え方の違いに、彼我の生き方の違いがあるのでしょうかね。
#6574[2017/10/07 09:25]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

生きるために他の命を奪う。これは仕方のないことですが残酷といえば残酷ですね。
掘り下げれば掘り下げるほど命や物を大切にする日本人の味が出てくるでしょう。
ただどこをどう間違ったのか、猫をふざけてわざと轢いたと言った上に
お互い様だ、むしろ車を血で汚されたからこっちが被害者だなんて言うバカも出てきたし
数十年で日本人の感性が失われなければいいのですが。
まだ炎上してるうちは安心できますね(笑)。
#6575[2017/10/07 11:02]  西條すみれ  URL 

こんにちわ
イシグロさんの作品読んでみたいですね
#6577[2017/10/07 14:04]  ネリム  URL  [Edit]

Re: パーソ様COありがとうございます^^

> 譲さん、『嘆きのクローン』は、すごくいいお話でしたよ。
> 涙が何度も流れ出ました。

私の小説をお褒めいただきありがとうございます^^
いずれは死ぬべき人間が、動物や人…他者の命を犠牲にしながら生きる事は大変な不条理です。
しかし、それをやらなければ人は生きてゆく事が出来ません…だから日本人は昔から命への憐れみを感じ、自分が生きる為に犠牲にした命を供養してきました。
心ならずも己が犯した罪を贖う努力をした…そこに日本人独特の精神性が息づいてると思います。
西洋文化に染まり、日本人の「生類への憐れみ」と言う大切な文化が失われようとしている昨今。
イシグロさんの「わたしの手を離さないで」も、私の「嘆きのクローン」も同じ事を訴える為に描かれました…作品の内容が偶然にも一致したのは同じ日本人の心のなせる業なのでしょう。
物質文化に飲み込まれ、欲望に振り回され、平気で人を殺傷する事件が多発している今の社会…イシグロさんも私も、人々に心のあり方を問いかけたのです。
#6578[2017/10/07 14:14]  sado jo  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 生きるために他の命を奪う。これは仕方のないことですが残酷といえば残酷ですね。
> 掘り下げれば掘り下げるほど命や物を大切にする日本人の味が出てくるでしょう。

徳川将軍 綱吉は信心深い人で、生き物を大切にせよと「生類憐れみの法」を作りました。
だが犬や猫の為に人を処刑したのは矛盾しています…おまけに自分は魚を食べていた(笑)
生き物の命を奪わなければ生きてゆけないのが人間のサガです…ならば奪った命の分、生き物が生きる事を助けてやり、人を幸せにする様に努力するのが「生類憐れみ」ではなかろうか?
一方で善い事をして、一方で悪い事をしたのでは天秤に合わないのが道理ですよね(笑)
当時、有名な「赤穂浪士事件」が起きましたが、全て大老の伊豆の守に任せて浪士達の事情すら聞かずに処刑したのも片手落ちではありませんか?
一時が万事で、人は自分の周りだけ見て、都合よく物事を考えてしまう習性を持ってます。
その習性が大きな悲劇を起こす基になります…分け隔てなく全体を見渡して考えましょう。
そうスズメ〇トシ君を諭してあげて下さい…多分、無駄だろうけど(笑)
#6579[2017/10/07 15:42]  sado jo  URL 

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> イシグロさんの作品読んでみたいですね

今、書店では大変なイシグロブームが起きて、書籍の完売が相次いでいるそうです(笑)
私はノーベル文学賞の知らせを聞いて、慌ててツタヤに行き「わたしの手を離さないで」を借りて観ました。そして、作風は違えど同じ内容の物語を書かれている事に驚きました。
えぇ、読んで下さい…イシグロさんがどんな視点から命を見つめて小説を書かれたか。
やさしい目で命を見つめるイシグロさんの感性は、ほとんど私と同じなのです…だから私は、彼のノーベル賞受賞が自分の事の様に嬉しいのです^^
#6580[2017/10/07 16:13]  sado jo  URL 

嘆きのクローン

sadoさん、こんばんは!

嘆きのクローン、読ませていただきました!
そうですね!ほんと、似てますね。^^ヾ

凄いことですよね。
ノーベル賞文学書受賞の世界作家と心の模様を同じくされていらっしゃるのですもの。
私は、何冊か読みましたが、正直、村上春樹よりはうんと、好感がもてました。^^ヾ
実は男性作家は、ある事情で好きではないのですが、数少ない好きな作家です。
だから、この度の受賞はsadoさんと同じく、わがことのように嬉しく、誇りにも思えます。
ヽ(^o^)丿万歳~~~

#6581[2017/10/07 22:13]  窓  URL  [Edit]

Re: 窓様COありがとうございます^^

> 嘆きのクローン、読ませていただきました!
> そうですね!ほんと、似てますね。^^ヾ 凄いことですよね。
> ノーベル賞文学書受賞の世界作家と心の模様を同じくされていらっしゃるのですもの。

私の「嘆きのクローン」をお褒めいただき恐縮しています。
そうですね…作風は違えど、なぜイシグロさんと私の作品が似通っているか?考えました。
それは多分、イシグロさんも私も伝統的な日本人の死生観や生命観を持っていて、かつ、クローン技術や臓器移植などで生命を弄る科学(医学)の行き過ぎに抵抗感があった。
そして、死は必定の理で、まず死を先に置いてから生き方を考えると言う感性の一致をみた。
二人とも、随分心が似通っていて、とても命を大事にする伝統的な日本人だった訳です(笑)
ただ違うのは、イシグロさんは外国にいて外から日本を見て、今の我々が大切な日本の心を失ってゆく事に危機感を感じておられたのだと思います。
私の「嘆きのクローン」は、どちらかと言うと外国風ですが、イシグロさんの「私を離さないで」は、極めて日本風な綴り方で、切々と心情を訴える書き方になってます。
日本にいて外国に憧れている私と、外国にいて故国を想うイシグロさんの作風の違いです^^
#6582[2017/10/07 22:59]  sado jo  URL 

イシグロさんは死生観で作品を書かれたものではないと思いますね。
彼の根底に流れているものは平和希求が土台だと思います。
したがって村上春樹氏とも友人関係でいられるのだし、長崎で生まれたことも大きな意味を持っており、そこに死生観など入りようもないと思います。
彼は記者会見で日本に国家主義が台頭している現状を憂う発言をしていました。
完全な平和希求主義だからこそこのような発言が出てきたと思いますね。
#6583[2017/10/08 16:52]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

誤解されては困りますが、日本人の伝統的な死生観・生命観と言うのは次の如くです。
「この世は無常であり、人生は束の間である。だからお互いの命を大事にしよう」と言う仏教の不殺生の教えから来ています…現実に昔の日本人は生物を憐れみ、肉食を禁じていました。
原爆投下後の長崎で生まれたイシグロさんが日本人の死生観を引き継いだのは当然の事。
犠牲になった日本人も、原爆を落としたアメリカ人も同じ命です。だから憎まなかった。
すぐに復讐に走る西洋人と、日本人の間には大きな死生観・生命観の違いがあるのです。
命を優しい目で見る日本人の独自の感性は決して失ってはならず、これをイシグロさんや村上春樹さんの様に、平和の為に使う日本人は、世界の未来を照らす重要な役割を担ってると思います。
併せて、核兵器廃絶国際団体=ICANがノーベル平和賞を受賞した事を喜びたいですね^^
#6584[2017/10/08 17:56]  sado jo  URL 

こんにちは~♪
いつもありがとうございます(*^^)
今日は秋らしいお天気になりました。
今週もよろしくお願いしますネ(^_-)-☆
#6585[2017/10/09 16:06]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

久し振りに秋らしい日本晴れになりましたが、政治はどんよりと曇ってますね><
党首討論を聞きましたが、そもそも懸案山積みの今、何の為に衆議院を解散したのか?
何を目指してるのか?国民生活に大事な法案を放り出してなぜ今改憲しなきゃならのか?
はぐらかすばっかりで、全然討論になっていないから、国民はさっぱり分からんです(怒)
#6586[2017/10/09 18:31]  sado jo  URL 

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#6587[2017/10/11 16:10]     

死を前提に生を逆算して考える

言われてみれば、自分も同じ感覚がありますね
きっと知らず知らずに、小説に反映されてるでしょうね

そして、生きているということは、数多くの屍の上に立っているということでもある

こうも思ってます

なお、次回作はこの辺りに焦点を当てる感じになりそうです

ええ、相変わらずメディアが求めるような、安っぽい希望やら前向きなメッセージを発しない内容になりそうですが、自分の意に沿わないことをやるのは会社でやる仕事だけで十分なので、そういうのは自分以外のヤツに頼んでくれっていう感じではあります
#6594[2017/10/13 18:39]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> 死を前提に生を逆算して考える
> 言われてみれば、自分も同じ感覚がありますね
> そして、生きているということは、数多くの屍の上に立っているということでもある

人生は死が前提にあり、我々は多くの命を奪って、屍を積み上げながら生きている。
blackoutさんも日本人ですね~…その達観した虚無感がよく小説に現れてると思います^^
今時の日本人は何かつまづくとギヤァギヤァ喚くばかりで、因果の報いを知りませんがね。
命の法理からみれば、悪い事をして生きてるんだから運が悪くて当たり前でしょう(笑)
たまたま何かが上手く行ったら、どこかで贖罪を果たしていたと言う事でラッキーです♪
次回作、ぜひがんばって下さい…自分も早く身体を治して小説を書きたいです(苦笑)
#6596[2017/10/13 22:29]  sado jo  URL 














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