FC2ブログ

シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

クロニクル ~カルマ~

クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(5)

海に還る日05

「アメリカの政治的な意図ですか…自国の利益のために科学力や工業力を過剰に使った事が地球環境の悪化を招いたのに、まったく従来の考え方から抜け出せていなかったんですね」
「そうだな…いったん作り上げたシステムが巨大化すると、作った者自身はおろか、すべての人々を飲み込んで暴走し始める。そして、システムの中に取り込まれた人間には誰もその暴走を止められないんだ…文明の悲劇だよ」
「そう言われてみるとそうですよね。誰も文明が作り出した道具や機械を手放そうとはしないし、便利な生活を変えようともしない…博士はそんな人類を物質文明の呪縛から解放しようとされたんでしょうか?」
「ある意味そうだね…でもそれは風車に立ち向かうドン・キ・ホーテのような虚しい試みだった。文明の恩恵に浴している政治家や資産家たちエリートから見れば、彼女は邪魔な存在だったんだ。だから世論を誘導して博士の評判を貶めた『マッドサイエンティスト』『人体改造を目論む女フランケンシュタイン』『遺伝子工学を悪用する魔女』だとね。人々はそんな悪評を信じ込んだ…政治は恐いものだよ」

「ひどいですね~…それまで絶滅の危機に瀕していたたくさんの動物を救ってきた人なのに」
「あぁ、大衆心理を利用した集団パッシングだった…それからというもの、博士や我々は謂われなき誹謗・中傷にさらされた。それどころか、生命を守り、自然環境を守り、人権や平和を守る活動をしている人たちまでもが怪しまれたり、脅迫されたりするようになっていった…そして、博士は不遇の内に世を去ってしまった」
「悔しかったでしょうね…地球環境がどんどん悪化していって世界的に争いが絶えず、人権や平和が脅かされているのに、父や母のように人々のために善い事をしている人たちが、却って白い目で見られて迫害される世の中になりましたもんね」
「まったくだ。しかし、博士は正しかった…アメリカが世界中から莫大な資金を集めて建造した巨大な宇宙船は、人類が移民する惑星にはたどりつけなかった。地球を旅立ってから十数年後に消息を絶ってしまったんだ。なぜだか分かるかい?」
「NASAは、未知の宇宙空間で隕石衝突事故に見舞われたせいだと発表したそうですが」
「違うな…人間自身が原因だ。生身の人間には長期の宇宙の旅は無理なんだよ。遺伝子レベルで人体そのものを作り変えない限りはね。無重力状態の中では人の脳は萎縮してゆく。頭の中に髄液があふれてね…NASAの連中は投薬と運動で緩和できると言ったが、とてもそんな方法では間に合わないんだよ」
「宇宙では脳が縮むって…アルツハイマー病を患ったように廃人になってしまうって事ですか?」
「その通りだ…一口に星との距離を20光年先、30光年先と言うといかにも近いように聞えるが、それは光の速さで飛んでの話だ。だが、そんな速さで飛行できる宇宙船など存在しない。宇宙船の中で暮らしながら子供を産んで育て、何世代も掛けてやっと目的の星にたどりつく旅になるんだ。ほとんどの人は一生を宇宙船の中で過ごすんだよ…しかも、宇宙には地球と同じ環境条件を備えた惑星など一つもない。大気や水の組成、気候や重力が地球とはまるで異なっているんだ。もし無事にたどり着いたとしても、その惑星を人が暮らしてゆける環境にテラフォーミングするには何万年と言う途方もない歳月を要する…どだい無茶な計画なんだよ」
「人類は宇宙では暮らしてゆけない…と言う事でしょうか?たとえ他の惑星に行ったとしても」

~続く~

にほんブログ村 小説ブログへ
クリックをお願いします
 
関連記事
スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png ゴジラの子守歌
もくじ  3kaku_s_L.png 未来戦艦大和
もくじ  3kaku_s_L.png やさしい刑事
もくじ  3kaku_s_L.png まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←女性漫画家の豊作だった秋期アニメ    →クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(4)

~ Comment ~


こんなのはどうでしょう?

宇宙船に乗ったのは、「全て」を了承したメンバーだけだった、と。

壊れた地球で支えられる数の人類だけを残す、それが本当の計画だった。
宇宙船に乗ったのは口減らしで捨てられることを了承した人々。
自分達が出ていくことで僅かでも人類が生き残ることを望んだ人々。

訓練と選別を潜り抜け地球脱出の切符を掴んだメンバーだけが読んだ契約書。
その計画に同意するであろう者が選ばれ、同意しなかったものは始末された…
そして計画に携わった者は自ら命を絶ち真実を隠す。

地球で生きる「捨てられた」と思う者達には語られない御伽噺。

世界のリーダーとして一番汚い仕事を請け負った、と。
そんな話はどうでしょう?

最後は
書類を燃やす大統領に補佐官が銃を突きつけ、補佐官もその後自殺。
という形で。

そのころ宇宙船にのった捨てられた科学者は生まれてきた子供たちにこういう。
「私たちは地球の希望なんだ」
と地球に残る者達が再生する地球を思い描きながら…

アメリカならやるでしょう。
アルマゲドン等の映画を嘘にしないために…
シンゴジラでの「自国でも(核攻撃を)やる」のように。
世界のために死ぬ人間の選別と後始末を
#6702[2017/11/20 21:08]  三番目の猿  URL  [Edit]

仮に地球と同じか近い環境の惑星が存在したとしても
衣食住、地球での生活レベルに到達するまでかなりの時間がかかるし
その間につまらない争いや奪い合いが起きてそうですね。
例え暮らしていける環境を無事手に入れたとしても、性格を改善しないと同じことだよ。
#6703[2017/11/21 09:45]  西條すみれ  URL 

こんにちは〜!いつもありがとうございます。

アフターマンでしたか、随分前に人類滅亡後の地球を仮説した本がありましたよね。
それを思い出しながら読ませていただきました。

人類は滅亡するのではなく、地球を捨てて新世界へと、旅立って行くのでしょうか。
私は、宇宙を想像するだけでも、頭が痛くなってしまうので、月には兎が住み、せいぜい、100年後の地球しかイメージ出来ません。
けれど、少しずつ進化?しながら、人類は生き延びたらいいなって思います。

ちょっと見当違いなコメントですね。(^^;;
#6704[2017/11/21 13:44]  窓  URL  [Edit]

Re: 三番目の猿様COありがとうございます^^

> 壊れた地球で支えられる数の人類だけを残す、それが本当の計画だった。
> 宇宙船に乗ったのは口減らしで捨てられることを了承した人々。
> 自分達が出ていくことで僅かでも人類が生き残ることを望んだ人々。

ははは…姥捨て山説だと、白石隆浩やISは口減らしの為に善い仕事をした事になります。
ヒトラーは地球環境を守る為に民族を選別して浄化し、人工削減を行った英雄ですね(笑)
正直、70億の過剰な人口は地球の負担になります…地球にとっては30~40億がちょうどいい。
しかし人間は、逆に金も人も増やして市場や国家を拡大させてゆく本能的指向性を持ちます。
人口減少に伴う国家や資本主義経済の崩壊を、政界や財界のお偉方が認めるはずがないです。
言われる様に、高度医療で老人が増え、資源を食いつくし、環境悪化で食糧生産が限界に来たら、嫌でもお互いに潰し合いをする事になり、大国は核兵器で強制的に人口削減するかも知れない。
けれども強制的な人口削減では、かろうじて生き残った者も、放射能に汚染された地球で病む事になり、最終的には種としての人類の滅亡は免れないでしょう。
すぐに来るだろう地球百億人時代…飢えて死ぬにせよ、核兵器で死ぬにせよ、人類滅亡と言う形で終わらせない為に、国家や人種・民族の枠組みを超えた方策を考える必要があります。
#6705[2017/11/21 18:40]  sado jo  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 仮に地球と同じか近い環境の惑星が存在したとしても
> 衣食住、地球での生活レベルに到達するまでかなりの時間がかかる

「地球によく似た水のある惑星発見!」と言うニュースが時折流れたりします。
確かに水はあるでしょうが、水の成分がまったく違う…硫酸が溶けていたり、塩酸が強かったりしてとても人が飲める水ではありません…毒にしかならない(笑)
第一、重力や磁気が異なる。恒星が発する放射線をマトモに浴びる。気温や気候も全然違う。土壌が違うので人間に必要な農作物は育たない…しかも何光年以上のも彼方でしかない。
科学者が言う「生命が存在するかも知れない」はバクテリアレベルの話で、人間の様な複雑な生命体の存在を言ってる訳ではないのです…ちなみに微生物の大半は酸素呼吸をしません。
少なくとも、人間を含む哺乳類…或いは酸素呼吸をし、アミノ酸を必要とする生命体が生存できるのは地球しかありません。広義に言うなら地球の生命体は全て同類なのです。
それでも、お互いに争い合った挙句、生命丸ごと地球を滅ぼしますか?(笑)
#6706[2017/11/21 19:16]  sado jo  URL 

Re: 窓様COありがとうございます^^

> アフターマンでしたか、随分前に人類滅亡後の地球を仮説した本がありましたよね。
> それを思い出しながら読ませていただきました。

「アフターマン」ですか?…いいぇ、見当違いなコメントじゃありませんよ^^
結論から言うと、数百万~数千万年後には放っておいても人類は確実に滅亡します。
今とは全く異なる地球環境になりますから…太陽放射線、大気成分、気候や気温、地磁気、地軸、土壌がまったく違って来ますから、人間はとても生きていられません。
でもそれだけ長い期間があれば、恐竜が変化する環境に適応して鳥になった様に、人間も別の生物に進化して存続してゆく可能性は大いにあります。
悲しいのは自ら地球環境を破壊した挙句、同族争いをやって短期間の間に滅ぶ事です。
最近、攻撃的で野蛮な人が増えたのは、DNAがその危機を感じているからだと思います。
仮に、環境に適応して進化するにしても「タイムマシン」のモーロックみたいに、知性を失った野獣極まりない生物になるのなら、完全に滅んだ方がマシです(笑)
人としての姿形はなくなっても「スターウォーズ」のヨーダの様な知性的な生物に進化して欲しいですね…それでこそ、かっての人類の後継者だと言えます。
#6707[2017/11/21 20:35]  sado jo  URL 

>いったん作り上げたシステムが巨大化すると、作った者自身はおろか、すべての人々を飲み込んで暴走し始める。そして、システムの中に取り込まれた人間には誰もその暴走を止められないんだ

これは会社や国も該当する気がします(汗)

で、その暴走に危機を感じた人たちが止めようとする
しかし、システムの中に取り込まれた連中は、そのシステムと同化してるから、止められる=命を奪われる、と錯覚して、手段を選ばず排除しようとする

そんな感じかと(汗)

そういえば、東京も一気に冬の気温になりましたね
部屋の温度の下がり方が、やはり変わってきましたよ(汗)

これで断熱材がなかったらと思うと、恐ろしいですな(汗)

日本海側ではもう雪が降ってる場所がありますし、北欧3国やドイツの南側でも雪が降ってる場所がありますからね

どこもかしこもすっかり冬ですね、ホント
#6708[2017/11/22 17:51]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> これは会社や国も該当する気がします(汗)
>で、その暴走に危機を感じた人たちが止めようとする
> しかし、システムの中に取り込まれた連中は、そのシステムと同化してるから、止められる=命を奪われる、と錯覚して、手段を選ばず排除しようとする

今、世界を脅かしている「極右勢力」「ポピュリスト」「テロ過激派」を見ますとね。
全員に後ろめたさを感じます…してる事が正しくないのは知ってるが、それしか方法がない。
彼らとてバカではない…常識的な知識は持ってます。だから正論を言われると逆上して怒る。
世界が認めないから余計に意地になって反発する…機能不全に陥ってるシステムに縋り付いて、それでも何とか我が身を守りたい一心…その危機感があるから殊更に攻撃的・暴力的になる。
皮肉にも対極で対立する者同士は同類で、所詮システムと言う鉢の中の金魚なんですね(笑)
太陽の活動にも異変が起きてるし、地球と言う金魚鉢も、自分達が築いたシステムのせいで壊れ掛けてるのに、今更政治に頼るとは><…政治じゃなくて文明システム自体の問題なんですがね。
#6709[2017/11/22 20:39]  sado jo  URL 

こんばんは。

環境保護関連の活動家や抗議行動の参加者達が、殺害されていることに驚きを隠せません。

文明という呪縛から逃げられないでいる世界。
天候の変化で、温暖化が進んでいるということが、容易に気づきます。

一番怖いのは、災害等ではなく「人間」なのかもしれません。
#6710[2017/11/22 23:05]  ・・冴恵・・  URL 

Re: 冴恵様COありがとうございます^^

> 天候の変化で、温暖化が進んでいるということが、容易に気づきます。
> 一番怖いのは、災害等ではなく「人間」なのかもしれません。

人種・民族差別は悪であり、人権侵害は悪であり、戦争や核兵器は悪である。
そして、環境破壊もまた悪である…今これらが世界の常識になったのは、いい意味で人類が野蛮人から脱し、善い方向に進歩してきた誇るべき証拠です。
ところが、依然として野蛮人の殻を被った連中がいて、下らん大義名分を振りかざし、己のエゴで人類が積み重ねてきた成果を台無しにしようとしている。
おっしゃる通り、一番怖いのは災害ではなく人間そのもの…己の利益の為なら手段を選ばず他者を踏みにじり、自然を破壊する人の心の内に潜むエゴイズムですね。
#6711[2017/11/23 13:55]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←女性漫画家の豊作だった秋期アニメ    →クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(4)